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2026年7月公開の注目映画|激動の時代を映し出す、新たなまなざし、人々の物語

  • 2026.7.5

映画評論家、エッセイストの秦 早穗子(はたさほこ)さんが担当する『婦人画報』の映画コーナー「世界への窓」。今回は「美しき情熱」をテーマに、2026年7月に公開される注目の新作映画に加え、併せて観たい映画をご紹介します。

今回ご紹介する映画はこちら

『隣人たち』

© 2023 MINSTINCT INC. ALL RIGHTS RESERVED. 配給:ギャガ

2026年7月24日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー

『新凱旋門物語』

photo Julien Panie ©2025 AGAT FILMS, LE PACTE 配給:ミモザフィルムズ

2026年7月17日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

『美しく、黙りなさい』

©Families Seyrig and Roussopoulos Archive / Centre audiovisuel Simone de Beauvoir 配給::ムヴィオラ

2026年7月24日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国ロードショー

『ヌーヴェルヴァーグ』

© 2025 ARP - Detour Development LLC: ©JeanLouisFernandez 配給:AMGエンタテインメント

2026年7月10日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

激動の時代を映し出す、新たなまなざし、人々の物語

『隣人たち』

今月は無理を承知で、紹介作の数を増やした。不安な時代に、さまざまな主題をもつ作品が公開されるから。今年のカンヌ国際映画祭で、女優賞を得た濱口竜介監督の『急に具合が悪くなる』も、映画の枠を超え、21世紀を生きる日仏2人の女の新しい道に感動した。

『隣人たち』は1960年代、アメリカを背景に女の心の底を見詰める。ベルギーのバーバラ・アベルの小説『憎悪の裏側』の2度目の映画化に挑戦するのは『青いパパイヤの香り』の撮影監督ブノワ・ドゥローム。

隣同士に住むセリーヌ(アン・ハサウェイ)とアリス(ジェシカ・チャステイン)は、生活レベルも同じ、ひとり息子も同い年。セリーヌの息子がバルコニーから転落死した日を境に、ふたりの関係は一変。セリーヌは心を閉ざし、なぜかアリスの息子に近づき、アリスはセリーヌの行動に疑いを抱く。親友だった女同士の関係がもろくも崩壊。陽の当たる暮らしに影が差す。60年代の服装から、複雑な女の心が浮上する……。

「新凱旋門物語」

『新凱旋門物語』は革命200年を記念して1989年の完成を目指し、郊外のデファンスにキューブ型の新凱旋門、グランダルシュを建てる大企画などを追う。国際公募に当選したのはデンマークの無名の建築家、ヨハン・オットー・フォン・スプレッケルセン。彼ら夫妻を中心に、ミッテラン大統領、関係者たちを描く。完璧主義のスプレッケルセンは妥協することができず、失意のうちに死んでいく。

歴史的建造物の多いパリに、現代建築を入れ込む大胆な企画は、時折、私も横目で見てきたが、ルーブル美術館のガラスのピラミッドも、アメリカ国籍の中国人イオ・ミン・ペイが建築した。この企画を押したのは、右翼から左翼へと転身したミッテランの決断だった。政権の失墜、予算超過、賛否両論のなかで、大統領自身の歴史観、見識には敬意を表する。日本人として見るべきは、この一点。監督ステファン・ドゥムースティエ。実話である。

「美しく、黙りなさい」

『美しく、黙りなさい』は女優デルフィーヌ・セリッグが1976年に監督したドキュメンタリーで、ようやく日本で公開。23人のハリウッド、パリの女優たちにアンケートする一作は、ジェーン・フォンダ、シャーリー・マクレーンたちが女優という職業、ジェンダーについて語る画期的なもの。

「ヌーヴェルヴァーグ」

リチャード・リンクレイター監督の『ヌーヴェルヴァーグ』は、1959年、ジャン=リュック・ゴダールの傑作『勝手にしやがれ』ができるまでの撮影現場を、まだ生まれていなかったリンクレイターが再現する。夢と情熱がなければ、こうした瑞々しい映画は作れまい。大切なのは、見る側が自分の目をもつこと。この2作は、心ある人に響くだろう。

こちらはおうちで……配信&DVD

『去年マリエンバートで』

Hearst Owned

旧作は、アラン・レネ監督の『去年マリエンバートで』(1961年)を選んだ。

デルフィーヌ・セリッグが主演した問題作。男と女の過去と現在、それぞれの記憶の違い。シャネルの衣装からも、時代を解き明かすことができよう。難解な作品だが、あえて選んでみた。フェミニズム運動とは直接は関係ないが、こうした映画も、女たちに影響を与えたのは事実であろう。

※U-NEXTにて配信中。DVDはレンタル、あるいは通販サイトでご購入ください。

はたさほこ●1931年東京都生まれ。映画評論家、エッセイスト。58年フランスに渡り『勝手にしやがれ』『太陽がいっぱい』などの映画輸入に携わる。映画評論、エッセイ、翻訳を手掛け、シャネルなどのファッションも紹介。現在も映画紹介に努め、執筆活動を行う。

文=秦 早穗子 編集=須田秀子(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年8月号より

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