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一緒に傘に入って帰りたかっただけなのに、俺はまた、いちばんそっけない言い方を選んでしまう

  • 2026.7.5
ハウコレ

相合傘で、肩がぶつかるくらいの近さで一緒に帰りたいだけでした。それを素直に伝える言葉が、俺にはいつまでも見つからないのです。送るつもりだった言葉を全部消して、俺は妻に、短い一言だけを送りました。

呼び出すのは、口で言うほどの用じゃない

仕事帰りに駅へ着くと、傘を持たない俺には厳しい降り方でした。雨脚を眺めていたら、付き合いはじめた頃の夏が、ふいによみがえってきました。一人用の折り畳み傘に肩を寄せ合って入り、腕を濡らしながら笑った帰り道。妻に来てもらえば、もう一度二人で一本に入って帰れる。 そう思いついて、俺は「駅まで来られる?」とだけ送りました。理由は書きませんでした。家にいる妻をわざわざ雨の中に呼び出すのに、圧をかけるような言い方になってしまうのが、俺という人間です。

本当は、一緒に帰ろうと打ちたかった

案の定、妻からは「傘、持っていこうか?」と気遣う返事が来ました。入力欄には、二人で一本に入って一緒に帰りたい、と打ち込んでいました。けれどそう続けようとして、こそばゆくなったのです。こんな文面を送って、重いと思われたらどうする。二本持ってきてくれと頼めば濡れずに済むのに、その一言はわざと書きませんでした。残したのは、「傘は一本でいい」という、たった一言だけ。送った直後から、これでは何も伝わらないと分かっていました。

言葉の代わりに、傘を傾けた

先に駅に着いた俺は、改札を出たところで、傘を差した妻が来るのを待ちました。妻が来ると、その傘を受け取って、外へ出るなり二人の上に広げます。「いいから、こっち入って」とだけ言って、俺は傘を妻のほうへ傾けました。自分の肩が雨に出ているくらい、どうということはありません。用意していたはずの説明は、妻の顔を見た拍子にどこかへ行ってしまいました。肩がぶつかるくらいの近さで帰る、それがしたかっただけなのです。隣で妻が小さく笑ったのが、傘の内側から見えました。

そして...

あの短い返事を、妻はきっと冷たいと受け取ったはずです。違うと言えばいいだけなのに、その一言がいちばん難しい。次に雨が降ったら、今度は呼び出す理由くらい、ちゃんと言葉にして送ろうと思います。傘は、やっぱり一本でいい。あの時のように、二人でくっついて帰りたいから。

(30代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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