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「あの場所には、来てほしくなかったんだ」俺がそう言った本当の理由

  • 2026.7.5
ハウコレ

賑やかな送別会では、どうしても伝えられないことがありました。二人だけの店に誘う付箋を用意していたのに、肝心のその場では、正反対の一言しか出てこなかったのです。

隣の席が、いちばん落ち着く場所だった

隣の席の彼女とは、入社してすぐの頃から何年も一緒に働いてきました。残業で二人になると、自販機のコーヒーを買って、どうでもいい話で笑い合いました。俺にとって、その時間が職場でいちばん落ち着く場所でした。

転勤が決まったとき、真っ先に頭に浮かんだのも、隣の席のことでした。大勢で「またね」と言って終わりにする見送りが、どうしても嫌でした。だから幹事には早めに頼んでありました。彼女には別の形で見送ってもらうから、送別会の招待は他のみんなと別にすると。

うまく言えなかった一言

机の私物を箱に移していると、彼女のほうから聞いてきました。「みんなで集まるお店、私も行っていい?」その瞬間、口から出たのは「あの場所には、来てほしくない」という、本心とは正反対に響く言葉でした。

本当は「あの場所で、最後の挨拶はしたくない」と言いたかったのに、頭の中で順番が崩れて、拒絶の形だけが先に出てしまったのです。その理由を言おうと口を開きかけたときには、彼女はもう背を向けていました。彼女の肩のこわばりが、俺の言葉がどう届いたかをそのまま映していました。

本当は別の店に誘いたかった

ポケットには、何日も前から一枚の付箋を入れてありました。書いてあるのは、二人で前に話していた小さな定食屋の名前です。送別会のあとで、そこに彼女を誘うつもりでした。大勢で乾杯するより、いつもの自販機の前のような、何でもない時間で見送ってほしかった。それだけを伝えたかったのに、俺は順番を間違えてしまいました。渡すあてをなくした付箋を、俺はずっと持て余していました。

そして...

送別会のあいだ、俺はずっと上の空でした。誰かと乾杯している場合ではなかったのです。送別会が終わって、すぐに彼女にメッセージを送りました。「送別会とは別に、二人で行きたい店があるんだ」。もっと早く、もっとちゃんと言えばよかったと何度も思いました。

しばらくして、画面が短く震えました。「行きたい。お店、教えて」。その短い返事を、俺は何度も指でたどりました。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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