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「新しく、好きな人ができたんだ」と元彼が言った席に、私の好きな飲み物があった

  • 2026.7.4
ハウコレ

氷の入っていないグラスのことばかり、家に帰ってからも考えていました。応援してる、と笑った自分の声が、やけに遠くに聞こえます。どうしてあの一杯だったのでしょう。

カフェのドアを押すと、奥の窓際の席で元彼が手を上げました。半年ぶりに会うのに、待ち合わせより早く来ていたようです。相談があると言われて来たのですが、その用件を、私はまだ知りませんでした。

私の頼み方を、まだ覚えていた人

席につくと、テーブルにはもう飲み物が並んでいました。私の前にあったのは、氷の入っていないジンジャーエールです。「ジンジャーエール、氷なしでよかったよね」と、彼は念を押すように声をかけました。付き合っていたころ、炭酸が薄まるのが嫌でいつもそう頼んでいたのを、覚えていたのです。グラスの底から細かい泡が立ちのぼるのを見て、少しだけ、ここに来てよかったと思いました。

相談の中身は、新しい好きな人でした

近況をひとしきり話したあと、彼はあらたまった声になりました。「新しく、好きな人ができたんだ」。グラスに伸ばしかけた指を、私はそのまま膝の上に戻しました。続けて、「相談に乗ってほしくて」と彼は言いました。さっきまで温かく感じたグラスが、急に他人のもののように見えます。私の好みを覚えていたのは、ただの癖でしょうか。それとも、この話を切り出すための準備だったのでしょうか。

応援してる、と告げて席を立ちました

どんな人なのか、彼は楽しそうに話し始めました。私はおしぼりの角を折りながら、相づちだけを返していました。これ以上ここにいたら、要らないひとことを言ってしまいそうです。コートを手に取り、私は「よかったね。応援してる」と笑いました。彼が何か言いかけたのが見えましたが、私はもう伝票に手を伸ばしていました。

そして...

改札を抜けても、頭にあるのはあのグラスのことだけでした。私の頼み方を覚えていた人が、別の誰かとの恋を私に相談する。その優しさが、いちばんこたえました。応援してる、は嘘ではありません。ただ、もう少しだけ、知らないふりをしていたかったのです。

(20代女性・会社員)

本人記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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