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別れを告げた彼が最後に手を伸ばしたのは、傷ついた私ではなく落ちかけたコートだった

  • 2026.6.28
ハウコレ

どうして、と繰り返しても、彼は本当の理由を言いませんでした。冷たく突き放されたと思っていた別れに、私の知らない続きがあったのです。

彼の部屋で、別れを切り出された

彼から「今夜、少し話せるかな」とメッセージが届いたのは、その少し前のことでした。いつもなら絵文字のひとつでも添える人が、その一文だけを送ってきました。何かを察しながら部屋へ向かった私に、彼は両手を膝に置いたまま「もう、別れよう」と言いました。聞き間違いだと思いたくて、私は返事をしませんでした。けれど彼の目は、私から逸れなかったのです。

理由を聞いても、はぐらかされた

どうして、と私は繰り返しました。けれど彼は理由を言わず「向こうで、頑張ってきてほしい」とだけ口にしました。来春から別の街で働く話は、私自身まだ迷っていた最中でした。それをこんな場面で持ち出されるなんて、考えてもいませんでした。送り出す口実に別れを使われたようで、問い返す声が頼りなく揺れました。

私のコートを、彼は掛け直した

席を立った彼は、落ちそうになっていた私のコートを整えました。「これ、掛けなおしとくね」と言って。別れを告げたばかりの人が、最後に気にかけたのが私ではなくコートだったこと。その横顔を見ていられず、私はそれを取って、玄関を出ました。

そして...

あの日から一度も着られずにいたコートに、新しい街ではじめて袖を通した日のことです。ポケットの奥で、折りたたまれた紙が指に触れました。「向こうで、無理だけはしないで」。掛け直すふりをして、彼が残していったのだと、ようやく分かりました。気にかけられていなかったのは、私の思い違いだったのです。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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