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『バトル・ロワイアル』も「イカゲーム」もここから始まった?『ロングウォーク』が描くデスゲームの原型とは

  • 2026.6.28

世界的大ヒットを記録したドラマ「イカゲーム」をはじめ、時代劇というユニークな設定の「イクサガミ」や「今際の国のアリス」、『ランニング・マン』(25)…と映画にドラマに話題作が絶えないデスゲームのジャンル。その最新作となる『ロングウォーク』が6月26日より公開中だ。

【写真を見る】『バトル・ロワイアル』や「イカゲーム」などデスゲームものの系譜を振り返る(『ロングウォーク』)

【写真を見る】『バトル・ロワイアル』や「イカゲーム」などデスゲームものの系譜を振り返る(『ロングウォーク』) [c]2026 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.
【写真を見る】『バトル・ロワイアル』や「イカゲーム」などデスゲームものの系譜を振り返る(『ロングウォーク』) [c]2026 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

スティーヴン・キングがリチャード・バックマン名義で学生時代に執筆した原作「死のロングウォーク」は、『バトル・ロワイアル』(00)の下敷きとなったように“デスゲームもの”における重要な1作。源流とも言える小説の映画化を機に、ここでは過去の作品から『ロングウォーク』まで、デスゲームものの特徴を改めてひも解いていきたい。

残酷な死のレースを描く『ロングウォーク』

キングの原点的小説を映画化した『ロングウォーク』は、“最後の1人になるまで歩き続ける”というシンプルだが残酷な死のゲームに参加した若者たちのサバイバルを、友情を交えながら描く。

サバイバルを通じた若者たちの友情も描かれていく(『ロングウォーク』) [c]2026 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.
サバイバルを通じた若者たちの友情も描かれていく(『ロングウォーク』) [c]2026 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

戦争によって国家が分断された近未来のアメリカでは、最後の1人になるまでただひたすらに歩き続けることで、破格の賞金とどんな願いも一つ叶えられる権利を獲得できる「ロングウォーク」が、国を挙げて実施されていた。この祭典に挑むのは、様々な背景を抱える50名の若者たち。彼らは休息も睡眠も許されず、止まれば即死という状況で、1人また1人と殺されていくなか、地獄の一本道を歩き続けていく…。

死の祭典を仕切っているのが、軍の少佐だ(『ロングウォーク』) [c]2026 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.
死の祭典を仕切っているのが、軍の少佐だ(『ロングウォーク』) [c]2026 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

国が主催する“死の見世物”という側面

参加者同士の派手な殺し合いを描く作品ではない『ロングウォーク』だが、不景気な国を盛り上げるための見世物として国家主導で実施されているというディストピアな背景は、まさにデスゲームもののど真ん中。

ディストピアな世の中をブラックなジョークで揶揄したロジャー・コーマンによる『デス・レース2000年』 [c]Everett Collection/AFLO
ディストピアな世の中をブラックなジョークで揶揄したロジャー・コーマンによる『デス・レース2000年』 [c]Everett Collection/AFLO

ディストピアな未来はデスゲームものの大きな特徴で、独裁国家となった近未来のアメリカを舞台に、走行中に人間を殺していくことでポイントが加算される死のレースとそれに熱狂する国民の姿を描いた『デス・レース2000年』(75)、大企業郡が支配する近未来で行われる“殺人もあり”という暴力的な競技を題材とした『ローラーボール』(75)など、繰り返し描かれてきた。

『ローラーボール』ではいくつかの大企業によって統治された未来像が描かれた [c]Everett Collection/AFLO
『ローラーボール』ではいくつかの大企業によって統治された未来像が描かれた [c]Everett Collection/AFLO

そもそも『グラディエーター』(00)などでも描かれたように、古代ローマ時代、緊縮財政政策において市民を懐柔するための娯楽としてコロッセウムで行われた剣闘士競技など、人類の歴史においても古くから人の命は国家に利用され、大衆はエンタメとして消費してきた。

『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』のように古代ローマでは剣闘士による命懸けの戦いが娯楽とされていた [c] Paramount Pictures / Courtesy Everett Collection
『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』のように古代ローマでは剣闘士による命懸けの戦いが娯楽とされていた [c] Paramount Pictures / Courtesy Everett Collection

「死のロングウォーク」を経て、1982年にキングがバックマン名義で世に送りだした「バトルランナー」もまた、巨大な管理国家となった近未来のアメリカが舞台。街に失業者があふれるなか、処刑人であるハンターたちから命を狙われ続ける貧乏人の逃走劇をテレビ中継する人気番組「ランニング・マン」に出ることになった主人公が、権力に挑んでいくという内容だ。

『バトルランナー』は小説と内容が大きく異なっているが、グロテスクな社会を描いている [c] TriStar Pictures / courtesy Everett Collection
『バトルランナー』は小説と内容が大きく異なっているが、グロテスクな社会を描いている [c] TriStar Pictures / courtesy Everett Collection

『ロングウォーク』でもまるで駅伝の応援かのように道路脇から観戦し、声援を送る群衆の姿が見られたが、『バトルランナー』(87)、『ランニング・マン』といった映像化作品を見てもわかるように「バトルランナー」は殺人エンタメショーとしての側面が強調されている。

キングの小説を再リメイクした『ランニング・マン』 [c] Paramount Pictures / Courtesy Everett Collection
キングの小説を再リメイクした『ランニング・マン』 [c] Paramount Pictures / Courtesy Everett Collection

メディアと国家が癒着関係にあるなか、ド派手な演出で視聴者を虜にする番組。ゲーム参加者のサバイバルだけでなく、それを娯楽として享受する観客の存在を描くことで、よりグロテスクな構造を浮き彫りにしてみせた。

“最後の1人”を競う残酷なサバイバルシステム

ディストピアな世界観に加え、『ロングウォーク』の大きな特徴が、最後まで勝ち残った1人が総取りという残酷なシステム。競争が絶えない社会の風刺という意味でも定番の設定と言える。

中学生同士による殺し合いという刺激的な内容は公開当時大きな話題となった(『バトル・ロワイアル』) [c]Anchor Bay/courtesy Everett Collection
中学生同士による殺し合いという刺激的な内容は公開当時大きな話題となった(『バトル・ロワイアル』) [c]Anchor Bay/courtesy Everett Collection

その代表格が「死のロングウォーク」から影響を受けた小説を深作欣二監督が映画化した『バトル・ロワイアル』だ。経済成長によって失業者が増え、頼りない大人に対し子どもたちが暴走するなか、教育改革法として「BR法」が制定される。この法律は、年に一度、全国の中学3年生のなかから選ばれた一つのクラスが、最後の1人になるまで殺し合いをさせられるという内容で…と、“中学生同士の殺し合い”を描き、大きな波紋を呼んだ。

銃から鍋の蓋まで当たり外れの大きなランダム支給の武器を手に、周囲を蹴落とし、生き残りを目指していく、まさに社会の縮図と言える争いが繰り広げられる。そのなかでは主人公をはじめ団結する者もおり、『ロングウォーク』よろしく、命を懸けた若者たちによる血生臭い青春模様が描かれている。

ユニークな死のゲームに特化した『ソウ』 [c] Lions Gate/courtesy Everett Collection
ユニークな死のゲームに特化した『ソウ』 [c] Lions Gate/courtesy Everett Collection

コンピュータで管理された無人島、3日間というタイムリミット、禁止エリアに入ると爆発する首輪など、『バトル・ロワイアル』では生き残りを左右する様々なルールや設定が盛り込まれ、ゲームとしてもより複雑に。こうしたゲーム性はその後さらに色濃くなり、ユニークかつ残虐な死のゲームそのものが見どころの「ソウ」シリーズなど、人気作が生まれてきた。

デスゲームを生みだす格差社会の構造

『ロングウォーク』のメガホンを握るフランシス・ローレンス監督が手掛けた「ハンガー・ゲーム」シリーズもまた、独立国家となった近未来のアメリカで、若者たちが最後の1人を目指した命懸けのゲームに挑んでいくデスゲーム映画の典型的作品。

デスゲームものでシリーズ化された『ハンガー・ゲーム』 [c]Lionsgate/Courtesy Everett Collection
デスゲームものでシリーズ化された『ハンガー・ゲーム』 [c]Lionsgate/Courtesy Everett Collection

ゲームの背景には、政治の中心キャピトルに住む特権階級が反乱を抑止するため、農業、商業、工業、鉱業など周囲の12地区から集めた12〜18歳までの男女24名を殺し合わせるという目的があるように、今作で際立っているのが、階級社会が生みだす厳しい格差社会の構造だ。

リチャード・コネルの短編を映画化した元祖デスゲームものと言える『猟奇島』 [c]Everett Collection/AFLO
リチャード・コネルの短編を映画化した元祖デスゲームものと言える『猟奇島』 [c]Everett Collection/AFLO

最古のデスゲーム映画の一つ『猟奇島』(32)では“人間狩り”に興じるブルジョアの姿が描かれたように、格差社会はデスゲームものを決定づける大きな特徴。そのリメイク『恐怖の島』(45)、さらに再リメイク『太陽に向かって走れ』(56)、『デス・レース2000年』の続編『デススポーツ』(78)、そして近年の『ザ・ハント』(20)や貧乏人たちが富豪たちの遊びのコマとされた「イカゲーム」など、貧富の格差が生みだすグロテスクな人間の性が描かれてきた。

『ロングウォーク』は6月26日(金)より公開 [c]2026 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.
『ロングウォーク』は6月26日(金)より公開 [c]2026 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

ディストピア国家において若者たちの命をサバイバルゲームとして見世物にし、大衆がそれを消費する――。後続の作品が繰り返し描いてきた構図を、半世紀以上前に提示していた「死のロングウォーク」を映画化した『ロングウォーク』は、最新作にしてデスゲーム映画のある種の“原点”と言えるだけに、このジャンルが好きな人は、ぜひ劇場でチェックしてみてほしい。

文/サンクレイオ翼

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