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伯母「貸した金を1円も返さないって母さん怒ってた」→母の葬儀の夜にかかってきた電話で、長男の私が言葉を失った理由

  • 2026.6.27

通夜の終わった夜に

母が急に逝った。前日まで電話で笑っていた人が、朝になって動かなくなっていた。長男の私は、ただ段取りに追われるまま通夜を終えた。

その夜、ようやく座り込んだ頃に、携帯が鳴った。出ると、母の姉だった。悔やみの言葉だろうと思って、私は喉の奥が詰まったまま電話に出た。

「あんた、お母さんからお金借りてたでしょう」

最初の一言が、それだった。

「貸した金を1円も返さないって母さん怒ってた」

受話器の向こうで、声がだんだん尖っていく。生前、母が姉に何度もこぼしていたらしい。長男のくせに、貸した金を1円も返さない、と。

「どうして返さなかったの。あの子、あんたのこと最後まで気にしてたのよ」

確かに、私は母から金を借りていた。返せていないのも、本当だ。だから、何も言い返せなかった。火葬場の煙のにおいが、まだ服に残っている気がした。

言えなかった事情

返せなかったのには、理由があった。数年前、住んでいた土地が災害に遭い、勤め先も流された。仕事を失い、その日の暮らしさえ立たなくなった時期が、しばらく続いたのだ。

家のことも、生活の立て直しも、何もかもが後手に回った。

それでも、少しずつでも返そうと思っていた。落ち着いたら、まとまった額ではなくても、毎月いくらかずつ。

そう母にも伝えてあった。母は「無理しなくていいよ」と笑っていた。

その矢先に、母が逝った。

返すあてはできかけていたのに、渡す相手が、もういない。

「事情があったんです」

そう言いかけて、やめた。被災のことも、職を失ったことも、母の姉には何の関係もない話だ。

それに、いま並べれば、ただの言い訳に聞こえるだろう。

「言い訳でしょう、そんなの」

案の定、そう返ってきた。

母を見送ったばかりの夜に、励ます言葉ひとつなく、ただ責められている。悲しみと罪悪感と、行き場のない悔しさが、腹の底でぐるぐる回った。

あの人だって、妹を亡くしたばかりなのだ。やり場のない悲しみを、ぶつけやすい相手にぶつけているだけなのかもしれない。

そう思おうとしても、心は晴れなかった。電話を切ったあと、私はしばらく暗い部屋で受話器を握ったまま動けずにいた。

あれ以来、母の姉とも、その娘である従妹とも、連絡を取っていない。年賀状のやり取りも、いつの間にか途絶えた。葬儀の日にかかってきたあの一本の電話だけが、結局、最後のやり取りになった。

母にちゃんと返したかった。たったそれだけのことが、もうどうやっても叶わない。今もときどき、あの夜の尖った声が、耳の奥で鳴る。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、60代以上・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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