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2度の“BS放送”から待望の再放送「やっと地上波放送うれしい」傑作小説の“実写化” 3年前のNHK静かな名作ドラマ

  • 2026.7.29
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中村雅俊(C)SANKEI

浅田次郎の傑作小説を中村雅俊主演でドラマ化したNHKドラマ『おもかげ』が、10月3日から総合テレビで放送される。2023年と2025年にBSで放送されてきた本作が、ついに地上波へ。SNS上でも「やっと地上波放送うれしい」「予告だけでグッとくる」と期待の声が広がっている。集中治療室で眠る男が、謎の女性たちに導かれ、失われた記憶と過去をたどる。生と死のはざまで見えてくるものは何か。

※以下本文には放送内容が含まれます。

BSで愛された名作、ついに地上波へ

『おもかげ』は、浅田次郎の同名小説を原作にしたNHKドラマである。BSですでに放送されていた本作が、NHK総合テレビでも放送されることとなり、待望の再会となる視聴者も多いだろう。

物語の主人公は、商社マンとして65歳で定年を迎えた竹脇正一。送別会の帰りに地下鉄の車内で突然倒れ、病院の集中治療室へ運び込まれる。意識の戻らない正一のそばでは、妻の節子(浅田美代子)、同期の堀田(宅麻伸)、同じ養護施設で育った永山(モロ師岡)らが、それぞれの思いを語っていく。

放送は43分×全3回。1本の長編として一気に味わうのとは違い、週ごとに余韻を残しながら、正一の記憶と過去をたどっていく形になる。SNS上で「やっと地上波放送うれしい」という声が上がるのも、本作がただの再放送ではなく、より多くの視聴者に開かれる“静かな名作との出会い直し”だからだろう。

集中治療室から始まる、生と死の狭間の旅

『おもかげ』の大きな魅力は、現実と幻想が交錯する独特の物語構造にある。集中治療室で眠る正一の身体。その一方で正一本人は、ベッドに横たわる自分を見つめながら、謎の女性たちに導かれ、病院を抜け出して思い出の場所を巡っていく。
これは夢なのか、幻なのか。それとも、命の終わりにだけ許される旅なのか。作品はその答えを急がず、見る者を正一の記憶の奥へと静かに誘っていく。

正一は、孤児という出自から来る孤独を抱えながら、父として、夫として、会社員として懸命に生きてきた男だ。生活のために働き、家族を支え、弱さや寂しさを胸の奥にしまい込んできた。そんな一人の男が、人生の終盤で思いがけず過去と向き合うことになる。
この設定そのものに、すでに胸をつかむ力がある。人は、人生の最後に何を思い出すのか。誰の顔を見たいのか。忘れたつもりでいた痛みやぬくもりは、どんな形で戻ってくるのか。『おもかげ』は、そうした問いを大きな声で叫ぶのではなく、静かに差し出すドラマである。

浅田次郎作品の余韻

本作の中心に立つのは、中村雅俊が演じる竹脇正一である。決して派手ではない。時代にもまれながら働き、家庭を持ち、孤独を抱えながらも生き抜いてきた男。その人生の重みを、中村雅俊がどう体現するのかは大きな見どころだ。
さらに、浅田美代子、宅麻伸、モロ師岡、板橋駿谷、さとうほなみ、余貴美子、三田佳子ら、実力派の俳優陣がそろう。病室で眠る正一に思いを語る人々、そして正一を過去へ導く謎の女性たち。現実の会話と幻想的な旅が交互に重なっていく本作では、一人ひとりの表情や声の余韻が、物語の奥行きを支えることになりそうだ。

浅田次郎作品の魅力は、人生の哀しみを描きながらも、人間を突き放さないところにある。『おもかげ』もまた、死の気配をまといながら、決して暗いだけの物語ではない。失われた記憶、忘れたふりをしてきた痛み、それでもどこかに残っていた愛の痕跡。正一の旅は、見る人それぞれの記憶にもそっと触れてくるはずだ。
集中治療室で眠る男が、謎の女性たちに導かれ、自らの過去をたどる。そこにあるのは、劇的な事件だけではなく、働き、家族を持ち、孤独を抱え、それでも生きてきた一人の男の人生である。『おもかげ』は、秋の夜に、ゆっくり向き合いたいドラマだ。


出典:浅田次郎の傑作小説を中村雅俊主演でドラマ化した「おもかげ」。総合にて放送決定!

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_

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