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2000年代の"昭和の名作小説ドラマ化”を継承…【2010年代日曜劇場】を席巻した、“有名小説家”原作ドラマ

  • 2026.7.25
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竹内涼真 (C)SANKEI

大ヒットドラマ『VIVANT』の続編が7月26日から放送される日曜劇場(TBS系日曜夜9時枠)は、数々の話題作を世に送り出してきた老舗のドラマ枠である。
2017年に日曜劇場で放送された『陸王』も、老舗の足袋屋の社長が、足袋型ランニングシューズの開発に挑む姿を描き、大きな反響を呼んだ。

※以下本文には放送内容が含まれます。

老舗の足袋屋「こはぜ屋」の4代目社長・宮沢紘一(役所広司)は、業績不振で経営に悩んでいたところ、メインバンクの担当者・坂本太郎(風間俊介)から新規事業の参入を提案される。
そして、娘の茜(上白石萌音)のスニーカーを買いに行ったことをきっかけにランニングシューズに興味を持った紘一は、ランニング用の足袋を開発できないかと考える。
紘一は坂本に紹介されたランニングインストラクターの資格を持つスポーツショップ経営者の有村融(光石研)に相談する。有村は、現在はランニングブームだが足を怪我する人が増えている。理由は現在流行している分厚いソール(靴底)のシューズによる踵から着地するヒール着地のせいで、その衝撃で足を痛めてしまうからだと指摘する。有村は、人間本来の走り方は足の真ん中で足裏全体を使って着地するミッドフット着地走法で、この走り方だと衝撃を吸収できてエネルギー効率も良くて怪我をしにくい。そして、ソールの薄い足袋はミッドフット着地走法に適している旨を口にする。
その後、紘一は有村に誘われて愛知県豊橋市で行われる国際マラソン選手権に息子の大地(山﨑賢人)と共に観に行く。 そこで紘一は、実業団ランナー茂木裕人(竹内涼真)の走る姿に圧倒される。しかし茂木はゴール直前に足を痛めて途中棄権となる。茂木の姿を見た紘一は改めて、ランナーが怪我をしない足袋型のランニングシューズを作ろうと決意する。

老舗足袋屋の再生を描いたビジネスドラマ

本作は池井戸潤の同名小説を連続ドラマ化したものだ。タイトルの『陸王』とは紘一が開発するマラソン用の足袋型の名前で、父親が開発したが事業としては失敗したマラソン用の足袋の名前を引き継いだものとなっている。
物語は、『陸王』の開発を進める中で「こはぜ屋」が、米国の一大スポーツメーカー・アトランティス日本支社や、融資と引き換えに社員のリストラを迫る銀行と衝突する姿が描かれる。 また、『陸王』に使用する繭を特殊加工した「シルクレイ」の特許を持つ倒産した「飯山産業」の元社長・飯山晴之(寺尾聰)や、「シルクレイ」の特許を取得するために「こはぜ屋」を買収しようとする世界的アウトドア用品メーカー「フェリックス」の代表取締役・御園丈治(松岡修造)との条件交渉も描かれ、ビジネスの世界で行われる闘いや交渉が多角的に展開されていた。

同時に描かれるのが、実業団の陸上部の選手・茂木裕人のスポーツをめぐるドラマや、就職活動がうまくいかず、進路について悩む紘一の息子・大地たち若者のドラマだ。
特に茂木が出場するマラソン大会の撮影には力が入っていた。大勢の人々でごった返す観客の姿や路面を走る選手たちの臨場感はとても見応えがあり、スケールの大きな映像を追求してきた日曜劇場ならではの派手な見せ場となっていた。

2010年代の日曜劇場を席巻した池井戸潤ドラマ

『陸王』が放送された日曜劇場は、民放でもっとも注目されている老舗のドラマ枠だ。 1956年から始まった日曜劇場は単発ドラマを放送する枠としてスタートした。
現在のような連続ドラマを放送するようになったのは1993年の4月クールに放送された『丘の上の向日葵』からで、90年代はサラリーマンの男性が主人公のホームドラマが多かった。
そして、2000年代に入ると『GOOD LUCK!!』や『オレンジデイズ』といった現代を舞台にした若者向けのドラマがヒットする一方で『華麗なる一族』、『官僚たちの夏』といった昭和の名作小説をドラマ化した骨太で重厚な作品を制作していた。
現在の日曜劇場のスタイルに繋がっているのは後者の骨太な作品だが、2010年にこの流れを受け継いだのが、池井戸潤の経済小説をドラマ化した作品である。

中でも大ヒットしたのがメガバンクのバンカーたちの権力闘争を描いた『半沢直樹』だ。 本作が成功したことで、『ルーズヴェルト・ゲーム』や『下町ロケット』といった池井戸潤の小説が日曜劇場で次々とドラマ化されるようになった。
銀行の融資や技術の特許といった一般人には馴染みのない業界の専門知識の応酬は、一見難解に見えるが、物語は銀行員に苦しめられる町工場の社長の苦悩といった善悪がはっきりとしたわかりやすい物語となっているのが、池井戸潤小説原作のドラマの特徴で、現代を舞台にした時代劇を見ているような面白さがある。

何より本作が多くの視聴者に支持されたのは、バブル崩壊後の平成不況の中で追い詰められる中小企業の労働者たちの気持ちに寄り添って、夢のある物語を提供したからだろう。

『陸王』で言うとそれは、代々受け継がれてきた足袋の技術がランニングシューズとして蘇るという技術転用による新規事業の成功というサクセスストーリーである。

ヒットしたドラマにはその時代に視聴者が求める夢や希望が投影されているものだが『陸王』にはまさに平成後期に人々が求めた夢と希望が詰まっている。だからこそ観ると元気になる。
家族と会社組織の姿を通して、日曜劇場は視聴者の求める夢を描いてきた。それは令和の『VIVANT』においても変わらない。だからこそ日曜劇場は大勢の視聴者に愛されているのだ。


出典:TBS 日曜劇場『陸王』公式HPより

ライター:成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』 (PLANETS)がある。

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