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「3度の共演を経て“交際0日婚”」した人気俳優。12歳差の夫婦生活と、剣豪からコンプラ担当まで広がった役幅

  • 2026.8.2
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時代劇では、鋭い目で相手を見据える剣豪。現代劇では、組織のルールに振り回される会社員。映画では、人間を観察する宇宙人にもなる。山本耕史は、作品ごとにまったく異なる顔を見せてきた俳優だ。2004年放送のNHK大河ドラマ『新選組!』で演じた土方歳三の印象が強い一方、2024年放送のTBS系ドラマ『不適切にもほどがある!』では、コンプライアンスを気にするテレビ局員をコミカルに演じた。

その役幅が広がっていく間に、私生活では3度共演した12歳年下の俳優・堀北真希さんと結婚。「交際0日婚」と呼ばれた夫婦は、二人の子どもを育てながら結婚生活を重ねてきた。家庭を持ったことだけで演技の変化を説明することはできない。ただ山本自身は、結婚後、自分以外の誰かに合わせることが、結果として自分のためにもなると気づいたと語っている。

長く一人で磨いてきた俳優としての技術に、家族と暮らす時間が新たな余裕を加えていった。

舞台で鍛えた“変わる力”

山本は幼いころから芸能活動を始め、1987年、10歳で日本初演のミュージカル『レ・ミゼラブル』に出演した。演じたのは、少年革命家のガブローシュ。大勢の俳優が歌と芝居をつなぐ舞台で、子どものころから作品の一部として生きることを覚えた。

21歳のときにはミュージカル『RENT』へ出演。テレビや映画だけでなく、歌、ダンス、生の芝居を求められる舞台へ立ち続けた経験が、山本の演技の土台になった。

決められた型へ自分を押し込むのではなく、役ごとに声や立ち方、体の使い方を変える。時代劇からコメディーまで違和感なく行き来できるのは、舞台で培った対応力があるからだろう。

土方歳三から、正反対の“盟友”へ

山本の代表作として欠かせないのが、2004年のNHK大河ドラマ『新選組!』だ。

演じた土方歳三は、香取慎吾演じる近藤勇を支え、新選組を守ろうとする「鬼の副長」。冷静さと激しさを併せ持ち、仲間への忠義を最後まで貫く人物だった。反響を受け、2006年には山本を主演に据えたNHK正月時代劇『新選組!! 土方歳三 最期の一日』も放送された。

その後も山本は大河ドラマで、2016年の『真田丸』では石田三成、2022年の『鎌倉殿の13人』では三浦義村を演じている。

特に三浦義村は、土方とは対照的だった。主人公の北条義時に近い位置にいながら、忠義だけでは動かず、常に自分と一族が生き残る道を選ぶ。まっすぐな土方と、危ない橋を渡りながら形勢を読む義村。同じ“主人公の盟友”でも、山本は異なる人間として成立させた。

時代劇が似合う俳優という評価にとどまらず、人物が何を守り、どこに信念を置くのかまで演じ分けられる存在になっていったのである。

2度目は夫婦役だった

山本と堀北の初共演は、2009年放送のフジテレビ系ドラマ『アタシんちの男子』だった。堀北は、借金を抱えたホームレスの女性・峯田千里役。山本は、物語の鍵を握る社長秘書・時田修司を演じた。同じドラマへの出演ではあったが、二人が恋人や夫婦を演じたわけではない。

翌2010年、フジテレビ系スペシャルドラマ『わが家の歴史』で再共演する。堀北が演じた八女波子は、出版社で働くなか、山本演じる一風変わった作家・阿野三成と出会う。二人は恋に落ち、やがて結婚。現実より先に、作品の中で夫婦になった。

堀北は当時の公式インタビューで、阿野の個性的な見た目や振る舞いから、台本を読んだ際に「この人と結婚するんだ!」と驚いたことを明かしている。初共演では同じ作品に出演し、2度目には夫婦役を演じる。それでも、この時点で二人が現実の恋人になることはなかった。

3度目は結ばれない恋人。現実では“交際0日婚”へ

3度目の共演は、5年後の2015年に上演された舞台『嵐が丘』だった。

堀北が演じたのはキャサリン。山本は、彼女と激しく引かれ合いながらも結ばれず、愛を復讐心へ変えていくヒースクリフを演じた。1度目は同じドラマの出演者。2度目は夫婦役。そして3度目は、愛し合っても結ばれない男女だった。

舞台での再会をきっかけに山本は本気で向き合い、堀北も共演を通して、その人柄に引かれていったという。二人は同年8月に結婚。当時、山本は38歳、堀北は26歳だった。

この結婚は「交際0日婚」として大きく報じられた。もちろん、知り合って0日で結婚したわけではない。初共演から約6年がたち、その間に3作品で共演している。ただ、山本からの交際の申し出をきっぱり断った堀北に対して、山本が「じゃあ、結婚はどう?」とアプローチしたことではじまったことから、“交際0日”と呼ばれたのである。

3度の共演で、同じ作品の出演者から役の上の夫婦、そして結ばれない恋人へ。役柄では近づいたり離れたりした二人が、現実では最初から結婚を前提に関係を始めた。それは、突然のように見えて、時間をかけて互いを知った末の決断でもあった。

宇宙人から“コンプラ上司”まで

結婚後も、山本の役柄はさらに広がった。2022年公開の映画『シン・ウルトラマン』では、地球人を冷静に観察する外星人・メフィラスを演じた。穏やかな笑顔と丁寧な口調を保ちながら、何を考えているのか分からない。そのつかみどころのなさが、「私の好きな言葉です」というセリフとともに強い印象を残した。

一方、2024年放送のTBS系ドラマ『不適切にもほどがある!』で演じた栗田一也は、現代のテレビ局で働く会社員だ。リスクマネジメント部の部長として、発言や行動が問題にならないよう神経をとがらせる。幕末を生きる剣豪でも、戦国時代の策略家でもない。現代社会のルールに合わせようとするあまり、どこか可笑しく見える人物だった。山本は栗田を、単なる堅物としては演じなかった。組織を守ろうとする真面目さと、状況に振り回される人間くささを同時に見せ、作品の笑いを支えた。

家庭を持って以降、山本は仕事への向き合い方にも余裕が生まれたと語っている。以前は仕事が終われば飲みに出ることも多かったが、現在はなるべく早く家へ帰り、子どもたちと料理をする時間が日課になったという。結婚前は、仕事も生活も自分のために考えていた。ところが家庭を持ち、人に自分を合わせることが、結果として自分を豊かにするのだと知った。

守るものが増えたことで役を狭めるのではなく、自分とは異なる人物を受け入れる幅が広がっていったように見える。

再び舞台で父親を演じる

2026年夏、山本が挑むのは、日米合作のブロードウェイミュージカル『フル・モンティ』だ。演じるジェリーは、製鉄所を解雇され、息子の養育費も払えなくなった父親。親権を失う危機のなか、仲間たちと男性ストリップショーへ挑もうとする。

山本はこの作品を全編英語で演じる。10歳でミュージカルの舞台へ立った俳優が、50歳を前に、これまでの経験がそのまま通用するとは限らない環境へもう一度飛び込むのである。しかも、今回演じるのは、家族とのつながりを取り戻そうともがく父親だ。現実の家庭をそのまま役へ重ねる必要はない。それでも、結婚前には持っていなかった父親としての日常が、役を考えるための新たな視点になっていることは確かだろう。

土方歳三のように信念を貫く男も、三浦義村のように生き残る道を探す男も、栗田一也のように時代のルールへ必死に対応する男も演じてきた。そして今度は、仕事も家族との関係も失いかけた男として舞台に立つ。

3度の共演を経た12歳差婚は、山本耕史の俳優人生を説明する主役ではない。しかし、家へ帰る理由ができ、誰かに自分を合わせることを知った時間は、役柄の中にある弱さや可笑しさを受け止める幅を広げたのかもしれない。

役の中では何度も別人になり、役の外では一つの家庭へ帰る。その往復を重ねながら、山本耕史は今も俳優として変わり続けている。


※記事は執筆時点の情報です

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