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「父の口座から施設費を払おう」預金1,200万を引き出しに銀行へ→その後、発生した思わぬ事態に50代息子が“青ざめたワケ”

  • 2026.7.16
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさま、こんにちは。元銀行員の金融ライター・池田です。

「老後2,000万円問題」を受けて、現役時代から老後生活を意識した貯蓄計画を立てている人も多いのではないでしょうか。

しかし、“十分な資産があればそれだけで安心”というわけではありません。

高齢になり認知能力が低下すると、口座が凍結されて預金を払い戻せなくなる可能性も。

今回は、認知症の父の口座が凍結状態となってしまった男性の事例を紹介します。

入院をきっかけとして父が認知症に

50代の男性・Aさん(仮名)は、実家を離れて隣県に暮らしています。

Aさんの父は一人暮らしをしていましたが、病気による長期入院をきっかけとして認知症を発症。

しばらくはAさんやAさんの兄弟が実家に通って様子を見ていましたが、今後は介護施設へと移ることになり、手続きを進めていたところでした。

「父の口座から施設費用を払おう」Aさんが銀行へ向かうと…

Aさんの父は、普通預金に1,200万円の貯蓄がありました。

以前から、将来の医療費・介護費はその口座から支払うようにと言われていたそうです。

「父が認知症になり、介護施設に入居することになりました。入居費と当面の利用料を父の口座からおろしたいんですが…」

Aさんがそう伝えると、担当者から驚きの言葉が。

「Aさんのお父さまの口座は、現在払い戻しできない状態です。払い戻しの際は、成年後見人を立てていただくことになります」

「どういうことですか?家族なのにお金を引き出せないなんて…」

Aさんは思わぬ事態に青ざめたといいます。

口座名義人が認知症になると“口座凍結”のリスクも

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

口座名義人の認知能力が低下していると判断された場合、不正な払い戻しを防止して預金を守るため、口座が凍結されることがあります。

Aさんの父は、これまで窓口で会話が噛み合わなかったり、ATMの操作方法や暗証番号がわからなくなったりしていたことで、銀行側も認知能力の低下を把握していたようでした。

実は銀行の実務において、家族が窓口で「本人が認知症になった」「施設費用を下ろしたい」と不用意に告げてしまうことが、口座凍結の直接的な引き金になるケースが非常に多いのです。銀行側は本人の財産を守る(不正流出などのトラブルを防ぐ)という大原則があるため、家族からの申し出によって認知能力の低下を確信した時点で、法律上、口座を凍結せざるを得なくなります。

口座の凍結を解除するには、本人に代わって財産管理などを行う「成年後見人」を立てる必要があります。

しかし、現在の裁判所の実務では、親族が後見人に選ばれる割合は全体の約2割にとどまり、約8割のケースで弁護士や司法書士などの専門家が選任されます。特に今回のように預貯金などの流動資産が一定額以上ある場合は、親族だけでの管理は難しいと判断されやすく、専門家が選ばれる確率が極めて高くなります(その場合、毎月数万円の後見人報酬が終身で発生し続けます)。

成年後見人の選任には通常1〜3ヶ月ほどの時間がかかるため、施設の入居費用はひとまずAさんが自身の貯蓄から立て替えて支払うことにしたそうです。

認知症による口座凍結を防ぐには?

Aさんの父には1,200万円もの貯蓄がありましたが、結果として必要なタイミングで資金を活用することができませんでした。

認知症による口座凍結を防ぐためには、本人がまだ健康で判断能力があるうちに、 以下のような対策を講じておくことが有効です。

  • 取引銀行の「予約型代理人サービス」や「家族登録制度」などを設定しておく
  • 将来、認知能力が低下したときに備え、公証役場で信頼できる人と「任意後見契約」を結ぶ
  • 家族に自分の財産の管理処分権を託す「家族信託」を活用する

任意後見や家族信託は数十万円以上の費用や高度な専門知識が必要になるため、まずは本人が元気なうちに、メインバンクで「家族を代理人として登録する手続き」ができないか確認するのが、最も手軽でコストのかからない確実な対策です。

また、2021年には、全国銀行協会より“口座名義人が認知症を患っている場合でも、医療費・介護費などの支払いに限定して家族による払い戻しを認める”という旨の指針が示されています。

ただし、この指針に基づいた払い戻しは、医療費の領収書や施設の契約書などを窓口に持参し、「医療機関や施設へ銀行から直接振り込む」といった形に限られることが多く、家族が手元に現金を引き出せるわけではありません。また、対応は各銀行の個別の判断に委ねられているため、預金の払い戻しに応じてもらえるケースは非常に限定的であるうえ、厳格な手続きが求められます。

事前に家族と話し合って正しい対策をしておくことが、大切な財産を守る何よりの鍵となります。


参考:

金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方について(一般社団法人全国銀行協会)

監修・執筆:元銀行員・ikebu

元銀行員の金融・法律ライター。一種外務員資格(証券外務員一種)、行政書士資格を保有。大学では法学部・法律学科に在籍し、卒業後は地方銀行に入行。個人リテール業務において、投資信託・生命保険商品の販売を中心とする資産運用のサポートのほか、住宅ローンや相続などの幅広い業務に携わる。法人営業では、事業性融資や法人向けの運用商品販売を担当。現在は金融・法律ジャンルを中心にライターとして活動。銀行員時代の経験や保有資格を活かし、専門的な内容を分かりやすく丁寧に解説することを得意とする。

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