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メイクして出社する男性新入社員に、元ヴィジュアル系部長の血が騒ぐ! 忘れかけていた「好き」を取り戻す、世代を超えた大人の青春コメディ【書評】

  • 2026.6.11
 ©篠原とも/一迅社
©篠原とも/一迅社

【漫画】本編を読む

『口紅をつけて出社する新入社員が気になる』(篠原とも/一迅社)は、毎日メイクをして出社する男性新入社員と、かつてヴィジュアル系バンドでギターを弾いていた45歳の部長との交流を描いた世代横断型のハートフルコメディ。本作が描くのは好きなものを好きでいることの「尊さ」だ。

主人公・東原隆弘は、毎日きちんとメイクして出社してくる新入男性社員・新発田利央のことが気になって仕方ない。というのも東原は25年前、ヴィジュアル系インディーズバンドのギタリストとして活動していた過去があり、黒いアイメイクや深紅の口紅をしてステージに立っていた自分を新発田の姿に重ねてしまったからだ。しかし、久々に触れた「好き」の感覚にテンションが上がる一方で、話しかけようとしては毎回空回りし、その不器用さがとにかくおかしい。

新発田にとってメイクは、何かを隠したり偽ったりするためのものではなく、ただ自分らしくいるためにしている。その自然体の姿が、過去を「黒歴史」のようにしまい込んでいた東原の心を少しずつ揺り動かしていく。本作はそんな若者が中年男性を変えていく物語であり、もう一度好きなものに向き合うことの尊さを描く物語でもあるのだ。

ヴィジュアル系文化へのまなざしも絶妙で、単なる懐古ネタではなく「あの頃」に救われた人の感情が丁寧に描かれているのもポイントだ。1990~2000年代のヴィジュアル系文化に触れていた世代には強烈に刺さることだろう。もちろんその文化を知らなくても、「好き」を共有したいのにうまく言葉にできない東原の姿には大いに共感できるはずだ。

年齢を重ねると、東原のように好きなものや好きだったものを語ることに「照れ」を覚えてしまうものだ。果たして彼は新発田と「好き」を共有することができるのか。温かく見守りたい作品だ。

文=練馬麟

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