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早生まれだと年収が下がる? データが示す「生まれ月格差」の実態【書評】

  • 2026.6.8
「早生まれ」は損なのか 生まれ月格差の経済学 山口慎太郎/中央公論新社
「早生まれ」は損なのか 生まれ月格差の経済学 山口慎太郎/中央公論新社

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『「早生まれ」は損なのか 生まれ月格差の経済学(中公新書ラクレ)』(山口慎太郎/中央公論新社)は、生まれ月から生じる格差に焦点をあて、さまざまな調査研究を通じて「早生まれは損をする」という言説の真相に迫る一冊だ。

早生まれとは、生まれ月が1〜3月の人を指す。4月で学期を区切る日本の教育現場では、4月生まれがクラスの最年長となる。つまり、その区切りの直前に生まれた人たちは、最大11カ月の後れを取っているにもかかわらず、同学年として扱われる。

学力と身体能力の向上が目覚ましい時期、この遅れは優劣の差につながる。もちろん、早生まれであっても問題を感じずに日々を送れる人もいるだろう。それを踏まえたうえで、早生まれという属性の人たちが全体としてどのような傾向を示すのか、本書はデータに基づいて解説していく。

生まれ月による格差を社会問題として捉え直す

1章は、早生まれの問題を軽んじている現代社会への警句から始まる。早期に成功体験を得られたかどうかは、その後の人生観や考え方に大きな影響を与える。たかだか小学校低学年の間生きづらいだけだろう、というわけにはいかない。

早生まれが損をする構造は「社会制度が生み出した不公平」だと著者は述べており、子どもたちが自身の能力に対する自信を失うことや、人生の選択肢が狭まることを、社会全体の課題として提起している。この視点が斬新であるとともに、次章以降続くデータ分析や考察にも厚みを与えている。

人生を左右する「不公平」をなくすために

生まれ月による影響は、学力や身体能力にとどまらない。例えば、人間関係。月齢別で比較したとき、早生まれの子どもたちのほうが、教師や友人との関係を低く評価しているという調査結果がある。勉強や運動は努力によって差を補えるが、周囲の人への不満は学校生活全体の質に関わるうえに、自身で解決するのは難しい。

また、キャリアにも影響は及ぶ。本書によると、日本の30代前半を比較すると、早生まれの人は平均より所得が低いという。同様にアメリカでも、日本の早生まれにあたる時期に生まれた人が社長になる比率が低い。「同学年の中で年下である」という属性はリーダーになる機会の損失につながり、その後のキャリアでも評価されづらくなる傾向があるのだ。

本書には、これらの問題を解決するためのアイデアも載っている。海外における教育制度の工夫やカリキュラム設計の事例を挙げつつ、日本の教育現場でも生まれ月を考慮した公平な評価や機会創出は可能だと著者は述べている。また、子どもたちと向き合う親や教師が、彼らの年齢差を踏まえて対応していくことも重要だ。

全体を通して、子どもたちが生まれ月を問わず、本来の能力を発揮できる社会をめざすスタンスに深く共感できた。早生まれ当事者はもちろん、早生まれの子を持つ親、教育現場に関わる方にぜひ手に取ってほしい一冊である。

文=宿木雪樹

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