1. トップ
  2. エピソード
  3. 彼女に方言を指摘されて標準語に戻した僕が、ずっと隠していた本当の理由

彼女に方言を指摘されて標準語に戻した僕が、ずっと隠していた本当の理由

  • 2026.6.8
ハウコレ

方言が嫌いだったわけではありません。気を抜くと出てしまうその言葉は、僕にとって弱さの証でした。彼女の前でだけそれがこぼれる意味に、僕はまだ気づいていませんでした。

素が出た、あの一文

彼女とのやりとりは、いつも気負わずにいられて心地よいものでした。あのときも、予定の話で盛り上がって、考えるより先に「ほんま楽しみやな~」と打って送っていました。

すぐに彼女から「今、方言出てたよ笑」と返ってきました。たぶん彼女は、ほほえましく思って言ってくれただけだと思います。それなのに僕は、打ちかけた返信をいったん消して、わざわざ標準語に直してから送り直しました。

「うん、そうだね。楽しみ」。そう打ち直して、何事もなかったように送りました。

言葉を隠してきた理由

地元を離れてから、僕は自分の方言をできるだけ出さないようにしてきました。学生のころ、話し方をからかわれたことが何度かあって、それ以来、人前ではきちんとした標準語で話すのが当たり前になっていたのです。

気を抜いたときだけ、ふいに地元の言葉がこぼれてしまう。彼女の前でそれが出たということは、僕がそれだけ安心していた証だったのだと思います。

でもそのときの僕は、そこまで考えられませんでした。ただ、隠していたものを見られた気がして、とっさに殻に閉じこもってしまったのです。

彼女がくれた一言

よそよそしい返事を続けるうちに、彼女から思いがけないメッセージが届きました。

「あの方言、私は好きだったよ」。その一文を、僕は何度も見つめました。好きだと言ってもらえた言葉を、自分はずっと弱さだと決めつけて隠してきたのです。

本当はすぐにでも素直な言葉を返したかったのに、僕が打てたのは「そう、ありがとう」という短い返事だけでした。彼女を突き放すような自分の返信を見て、これ以上ごまかしてはいけないと思いました。

そして...

迷った末、僕は彼女に一通のメッセージを送りました。

「ほんまは、ずっとこの言葉で話したかってん」。打ち込んだ文面を、何度も消しては書き直しました。それでも、いちばん伝えたかったのはこの言葉でした。彼女の前でだけこぼれる方言は、隠すべき弱さなんかじゃなかったのだと思います。

むしろ、それだけ安心できる相手に出会えた証だったのです。次に会ったときは、飾らない言葉で、ちゃんと話そうと思います。これまで隠してきたぶんも、全部ひっくるめて。

(20代男性・営業職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる