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満員電車で折りたたみ傘の雫を落としていた私。目の前の男の子を見たら、次の駅で足早に降りるしかなかった

  • 2026.6.7
ハウコレ

イヤホンから流れる音楽だけが、その日の私の味方でした。差していた傘も役に立たないほどの雨で、ようやく乗り込んだ電車は満員。私は折りたたみ傘を肘にかけたまま、つり革につかまっていました。早く帰りたい、頭の中はそれだけだったのです。

自分の世界に閉じこもっていた帰り道

仕事でうまくいかないことが重なり、その日はとにかく、誰とも関わりたくない気分でした。イヤホンの音量を上げて、うつむいたまま、ぼんやりと空を見つめていました。

肘にかけた折りたたみ傘が濡れていることも、そこから雫が落ちていることも、まるで頭にありませんでした。正面に立っていた女性と、ときどき目が合いましたが、疲れていたこともあって、「なんですか」とだけ答えて、単に見られることへの不快感を伝えようとしてしまいました。

そのときの私は、その視線の意味を考えようともしていなかったのです。

ふと顔を上げて見えたもの

車内の空気が変わったように感じて、私はようやく顔を上げました。すると目の前の座席で、小さな男の子が泣いていたのです。お母さんがハンカチで、男の子の濡れた髪をそっと拭いています。

視線をたどって、私はやっと気づきました。私の傘から落ちた雫が、ずっとあの子の頭を濡らしていたのだと。周りの大人たちの目が、いっせいに私へ向けられていました。

逃げるように降りた駅で

申し訳なさと恥ずかしさで、頭の中がいっぱいになりました。傘をたたんでしまえばいいだけのことを、私はずっとしていなかったのです。何か言わなければと思いながら、私は口を開けずにいました。

電車が次の駅に着くと、うつむいたまま、人をかき分けてホームへ降りました。ベンチに腰かけても、さっきの男の子の泣き声が、頭から離れませんでした。

そして...

あの日から、電車に乗る前には必ず傘の雫を払い、袋にしまうようになりました。たったそれだけのことで、誰かを濡らさずにすむのだと、あらためて思い知ったからです。

あのとき謝れなかったことは、今も心残りです。それでも、自分の小さな不注意が誰かを困らせていたのだと気づけたのは、私にとって大切な学びでした。これからは少しだけ顔を上げて、まわりに目を向けられる人でいたいと思います。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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