1. トップ
  2. エピソード
  3. 「市民病院には行かないの?」バスを乗り間違えた高齢女性…運転士が行き方を教えると、同乗した女性客の“粋な対応”に「なかなかできることではない」

「市民病院には行かないの?」バスを乗り間違えた高齢女性…運転士が行き方を教えると、同乗した女性客の“粋な対応”に「なかなかできることではない」

  • 2026.6.21
undefined
出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。送迎バスの運行管理やバス運転士の経験を持つVenus☆トラベルです。

今回のお話は、ある自治体が運営する市内循環バスの運行をしていたときに現れた救世主を紹介します。

大型バスでは入れない複雑な狭い路地を、当時は4台のマイクロバスが市民の足となって運行していました。便利な一方、慣れない乗客の乗り間違いも多く、私も何度バスの案内をしたかわかりません。

そんな乗り間違いにまつわる11年ほど前のエピソードをご紹介します。

高齢者は携帯電話を持たず。350を超えるバス停

市内全域をカバーする市内循環バスは、マイクロバスだからこそ走行できる運行ルートとなっていました。4台でさまざまな方向へ運行しており、役所や市民病院、高齢者施設など、主なバス停には数分おきにバスが発着する時間帯もあります。

当時、スマートフォンどころか携帯電話すら持っていない高齢者は多く、慌ててバスに飛び乗る姿も多く見られました。

市内循環バスには、350ヶ所を超えるバス停があります。バスの行き先を確かめずに乗車する人たちを見て、私は「よく覚えているなぁ…」と感心していたものです。

私自身、営業と運転士を兼務していたことで、すべてのバス停名と場所、ある程度の時間は覚えていました。しかし、時間を確認することもなく、勘だけで到着したバスに乗るのは勇気がいります。

一度、なぜ行き先や時間を確認せずバスがわかるのか聞いたことがあります。そのとき、乗客の方は「腹時計…かな」と言って笑っていました。

そんな恐るべき乗客の皆様でも、中にはうっかり乗り間違えてしまう人もいます。

乗り間違えた!目的地まで1時間のドライブ?

私が循環バスの乗務をしていたとき、乗り間違いに気づいた乗客が声をかけてきました。

「これは市民病院には行かないのですか?」

そんな質問に、私は「あ・・・違う方向ですね。」と現実を伝えるしかありません。市民病院を出発した反対ルートのバスのため、運行ルート上、終点で降車してバスを乗り換えてもらう必要がありました。

しかし、そのためには1時間のドライブに付き合ってもらわなければなりません。

長時間の乗車が気の毒だと思い、「4つ先のバス停で降りて、信号を渡ればバス停があります。そのバス停で10分ほど待っていただければ、市民病院行きの循環バスに乗れますよ。」と伝えました。

しかし、猛暑の中、高齢の女性1人で日陰もないバス停で待たせることに心配があったことも事実です。しかし、早く市民病院へ行くならその方法しか思いつきませんでした。

すると、女性は「入院している主人のところへ行くので、そのバス停で降ろしてもらっていいですか?」と言いました。それなら、1時間もバスに乗っているのは酷だろうと思い、快く私は返事をしました。

付き添いを申し出た救世主

バス停に到着すると、1人の乗客が「一緒にバス停まで行きますよ」と女性に声をかけていました。そのとき、私は慌てて付き添いを申し出た女性に伝えました。

「バスはここで待つことができないんですが・・・」

すると女性は「大丈夫です。私は急いでいないので、一緒にバスを乗り換えて、次のバスで帰ります。」と言って降車していきました。降車する女性は、救世主だと感じたことでしょう。

ご主人のお見舞いへ行く女性は、バスの外から私に頭を下げたあと、女性にも頭を下げて一緒に歩いていきました。

バスを運転している以上、責任を持って運行しなければなりません。このときの私には、他に方法がなく、一緒に降車した女性にすべてを任せ、サイドミラーで信号を渡る二人の姿を見送りつつ、バスを発車させました。

自然体で人に優しくできる姿を見習う

自分の予定を後回しにしてまで人を助けることは、なかなかできることではありません。

当時、30代前半だった私は、シングルマザーで余裕のない日々を送っていました。しかし、人に対して自然に優しくできる姿を見て、私もそんな人を目指したいと感じたのを覚えています。

今は子供たちも巣立ち、気持ちに余裕が出ました。そのため、困っている人を見かけたら、今でもふいの当時の女性を思い出し、声をかけてお手伝いするように心掛けています。


ライター:Venus☆トラベル

近畿地方でバスの運転に関わる仕事に携わって約12年、多くの送迎バスを運転しました。幼稚園や自治体、企業や施設など、それぞれの場所で学ぶことが多くありました。その反面、運転士視点で感じた心の声をリアルにお届けします。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名OK】

の記事をもっとみる