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50代男性の救急要請。「脱水かもしれない」水を飲ませようとした周囲の人…元救急隊員が明かす“善意が危険になる”場面

  • 2026.6.25
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。ライターのとしです。

体調が悪そうな人を見ると、「水を飲ませた方がいいのでは」と思うことがあります。

特に、ぐったりしている人がいる場面では、周囲の人が心配して水分を取らせようとすることも少なくありません。

ただ、症状によっては、その善意がかえって危険につながる場合もあります。

今回の救急要請は、50代男性の体調不良と吐き気によるものでした。

周囲の人が水を飲ませようとしていた

現場に到着すると、男性は体調不良を訴えており、吐き気もある様子でした。

表情はつらそうで、周囲には心配そうに見守る人たちがいました。

その中で、男性に水を飲ませようとしている人がいたのです。

「脱水かもしれない」
「水分を取った方がいい」

そう考えての行動だったのでしょう。

もちろん、悪気があったわけではありません。

目の前で体調が悪そうな人がいれば、何かしてあげたいと思うのは自然なことです。

ただ、その日は気温や湿度が極端に高い状況ではありませんでした。

体調不良というだけで、すぐに熱中症と決めつけられる場面でもなさそうでした。

嘔気がある時は注意が必要

男性には吐き気がありました。

この状態で水を飲ませると、嘔吐を誘発してしまうことがあります。

気持ち悪い時に無理に水分を入れると、かえって吐いてしまうことがあるためです。

さらに、意識がぼんやりしていたり、受け答えがはっきりしなかったりする時は注意が必要です。

うまく飲み込めず、水が気管に入ってしまうおそれもあります。

いわゆる誤嚥です。

誤嚥すれば、窒息や誤嚥性肺炎につながる可能性も出てきます。

また、嘔吐によって体に力が入り、血圧や脈拍に影響が出ることも考えられます。

持病やその時の体調によっては、別の病態を悪化させたり、誘発したりするおそれもあるでしょう。

「少し水を飲ませるだけ」のつもりでも、状態によっては大きな負担になってしまうのです。

まずは状態を確認する

救急隊は、まず男性の意識状態や受け答えを確認しました。

こちらの問いかけに反応できるか。
自分で座っていられるか。
吐き気はどの程度あるのか。
水分を飲み込める状態なのか。

そうした点を見ながら、どこまで対応できるかを判断していきます。

本人の意識がはっきりしていて、自分で飲みたいと言える状態であれば、少量ずつ確認しながら飲むこともあります。

ただ、吐き気が強い時や、意識がはっきりしない時は別です。

無理に飲ませるよりも、安静にして様子を見る方が安全な場面もあります。

口の中が乾いてつらそうな時でも、無理に飲ませる必要はありません。

唇を少し湿らせる程度にとどめる方がよいこともあります。

水を飲ませることだけが、助けになるとは限らないのです。

善意を安全につなげるために

現場で周囲の人が水を飲ませようとしていたのは、男性を心配していたからだと思います。

その気持ちは、とても大切なものです。

ただ、救急現場では、よかれと思った行動が必ずしも安全とは限りません。

体調不良の原因は、見た目だけでは分からないことも多いです。

熱中症のように見えても、別の病気が隠れている場合もあります。

吐き気がある人に水を飲ませることも、その時の状態によっては負担になるかもしれません。

目の前で人がつらそうにしていると、すぐに何かをしたくなるものです。

しかし、意識がはっきりしない、吐き気が強い、うまく飲み込めそうにない。

そうした時は、無理に飲ませないことも大切な対応になります。

声をかける。
楽な姿勢を取ってもらう。
救急隊が到着するまで見守る。

それだけでも、十分に助けになっていることがあります。

この事案では、水分を取らせることの難しさを改めて感じました。

体調不良の人に水を飲ませる行動は、一見よさそうに見えます。

ただ、嘔気や意識状態によっては、嘔吐や誤嚥、ほかの病態につながるおそれもあります。

善意を安全につなげるためにも、その人の状態を見て、無理をさせないことが大切だと感じた事案でした。



ライター:とし
元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。


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