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乗客「ビニール傘の忘れ物はありますか?」駅員「どれだ…?」“1日に何十本”もある忘れ物の傘…駅員が特定できた“方法”に「探偵になった気分」

  • 2026.6.24
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今回は私が駅員時代、「悪天候時に内心感じていたこと」をご紹介します。

列車内だけでなくコンビニやレストランなど、町のあちこちでつい置き忘れてしまう「傘」についてのお話です。

駅にたまる傘、傘、傘…

2018年頃から毎年のように日本のどこかで豪雨災害が発生するようになってしまい、浸水する恐れのある駅では雨水が駅の中に入ってこないようにする止水板を設置する訓練を行ったり、川の氾濫時にお客さまを誘導する高台までのルートが情報共有されたりしていました。

私は幸いにも、退職するまでにそのような雨による危機的状況に直面したことはありません。その代わり、もっと命にかかわらない程度の部分で「雨は厄介だな」と感じることがいくつかありました。

そのひとつが、雨の日に急増する傘の忘れ物です。

終点駅で勤務していたときのことです。

この駅には清掃担当の係員がいて、駅構内のほか到着した列車の車内清掃と点検を行います。

列車内の忘れ物は途中駅で特別に駅員が捜索したり、お客さまが下車した駅に届け出たりしない限り、すべてこの終点駅で取り降ろされます。

その結果、1日に何十本もの傘が忘れ物の傘入れにぎっちりと詰め込まれる事態になってしまいました。

「ビニール傘を忘れたんですけど」って、どれ?

そんななか、お客さまから忘れ物について電話でお問い合わせがありました。のちにお客さまからの電話は案内センターへ集約されるようになるのですが、当時はまだ各駅で電話対応を行っていたのです。

「傘、そちらに届いていませんか?」

言うまでもなく、たくさん届いています。
「傘ですね。どのような傘でしょうか? 色などの特徴を教えてください」

このとき駅員は「赤色ですか?」などと言ってはいけません。また、電話でなく駅に直接来られた方に複数の似た傘を見せて「どれですか?」と尋ねてもいけません。悪意ある人が別のお客さまになりすましている恐れがあるためです。

「透明なビニール傘で、持ち手は白です」

困りました。その条件に該当する傘はぱっと見ただけで5本、いやそれ以上あります。

「似た見た目の傘が何本かあるのですが、ほかに特徴はありませんか?」

「いえ、無いですね…」

そうですよね…と、どうしようか電話を片手に思考をめぐらせます。

付けていてよかった「忘れ物タグ」

そのとき、駅で保管している傘にはすべて「忘れ物タグ」がついており、それにはどの列車から取り降ろされたものなのか記録されていることに気づきました。

「お客さまが乗っていた列車なんですが、何時ごろにどの駅を発車したか覚えていらっしゃいますか? 到着の時刻でも結構です」

その答えと忘れ物タグの情報を照らし合わせると、なんと1本のビニール傘を特定することに成功しました。

「見つかりました! それでは、お返しする際に必要なのでお客さまのお名前と電話番号をお願いします」

思わずさっきまでより明るい調子になってしまいます。このようなとき、内心はまるで探偵やトレジャーハンターにでもなったような気分です。

両脇に傘の束を抱えて警察署へ

残念ながら傘の多くは、落とし主が見つからないまま警察署へ移管されることになります。遺失物法の規定により、どんなに長くても2週間しか駅では保管できません。

実際には1週間程度で警察署に移管されます。

そこでまた困った事態が起きるのです。雨が続いた週の忘れ物を警察署へ移管するときは、十数本ごとにビニール紐で縛った傘の束を両脇に抱え、えっほえっほと社用車の後部座席に詰め込みます。

そのほかの忘れ物は別の袋にひとまとめにして同じく車に載せ、警察署に着いたらまた傘の束を抱えてえっほえっほと受付窓口まで持って行くのです。

傘以外の忘れ物も鞄やリュックサックなどがあって重いので、傘と同時に持ち運ぶには限度があります。

その結果、載せるときと降ろすときでそれぞれ2往復しなければいけません。そのうえ、忘れ物として登録されている傘の現物がちゃんと存在しているか警察官との二重確認をひとつひとつ行う必要もあります。傘が増えるほど、確認業務が増えるのです。

傘にも個性を!

私もよくコンビニの入り口に傘を置き忘れて帰ってしまうのですが、そのたびに「せめて持ち主を特定できる目印をつけておけば、取り戻せたかもしれないのに」と遅すぎる後悔をしています。

一度だけコンビニで買ったビニール傘を帰宅するより先にどこかへ置き忘れてきたときは、さすがに我が行動を疑いました。

豪雨の頻度と呼応するように、運賃も物価もどんどん上がっているように感じるこの頃、頻繁に傘をなくして新しく買うのは避けたいところかと思います。

忘れ物を預かる立場を経験して、返還しやすい忘れ物には持ち主を特定しやすい特徴があるのではと感じました。市販のビニール傘でもシールひとつ貼るだけで、捜索時の見つかりやすさが大きく変わります。

また、最近は買うより安く傘を借りられるシェアリングサービスも展開されているようです。列車内に傘を忘れてしまい、すぐ次の列車で追うのが難しいときは、一旦シェアリングサービスの傘を利用し、時間ができてから問い合わせてみるのも良いかもしれません。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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