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「年金が最大84%増えるのに…」利用者は“たったの2%”。賢い人が、あえて“繰下げ受給を避ける”意外なワケ【社労士が解説】

  • 2026.6.20
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

公的年金は原則65歳から受け取るものというイメージを持っている人も多いかもしれません。しかし実際には、受給開始時期を早めたり遅らせたりすることができる仕組みがあります。

そのひとつが「繰下げ受給」です。受給開始を遅らせることで年金額を増やせる制度ですが、実際にどのくらい増えるのか、自分に合った選択なのか迷う人もいるのではないでしょうか。

今回は、年金の繰下げ受給の仕組みやメリット・デメリット、選択する際のポイントについて見ていきましょう。

【本記事は、社労士みなみ・著、『知りたいことがぜんぶわかる! 定年前後のお金の超基本』(Gakken)より一部抜粋して掲載しています。】

繰下げ受給とは?

公的年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、受給を66歳から75歳までの間に遅らせることができます。これを「繰下げ受給」といいます。

繰下げ受給の最大の特徴は、受給開始を遅らせた分だけ受け取る年金額が増えることです。

年金は1か月繰り下げるごとに0.7%増額されます。そのため、1年間繰り下げると8.4%増額となります。

例えば、65歳で受け取る予定だった年金を70歳まで繰り下げた場合、5年間で42%増額されます。さらに75歳まで繰り下げると、84%増額される仕組みです。

増額された年金は一生続く

繰下げ受給の大きな魅力は、一度増額された年金額がその後も生涯続くことです。

例えば、年金受給額が年間150万円の人が70歳まで繰り下げた場合、約42%増額されて年間213万円になります。75歳まで繰り下げれば年間276万円になります。

老後の生活が長くなるほど、この差は大きくなるでしょう。

また、繰下げ受給は66歳から75歳までの間で1カ月単位で受給開始時期を選べます。そのため、とりあえず1年だけ繰り下げてみて、そこから受け取るか、さらに繰り下げるかを決めるといった柔軟な選択も可能です。

繰下げ受給を選ぶ人は少数派

厚生労働省の令和6年度「厚生年金・国民年金事業の概況」によると、年金額が増える制度であるにもかかわらず、実際に繰下げ受給を利用している人は全体の約2%にとどまっています。

背景には、「長生きできるか不安」「今すぐ受給したい」「優遇が減るかもしれない」といった理由があります。

確かに、受給開始を遅らせる間は年金を受け取れません。そのため、健康状態や家計状況によっては繰下げが向かないケースもあります。

すぐに年金収入が必要な人や健康面に不安がある人にとっては、65歳から受給する選択が適している場合もあるでしょう。 

損益分岐点は受給開始年齢プラス11歳

繰下げ受給を検討する際に参考になるのが「損益分岐点」です。

損益分岐点とは、繰下げによって増えた年金額が、受給開始を遅らせた期間の未受給額を上回る年齢のことです。

損益分岐点の目安は、おおむね「受給開始年齢+11歳」です。

例えば66歳から受給を始めた場合は77歳から、70歳から受給を始めた場合は81歳からが目安になります。

厚生労働省の「令和6年簡易生命表」によると、平均寿命は男性が81歳、女性が87歳です。

平均寿命を考えると、多くの人が損益分岐点を超える可能性があります。そのため、健康に不安がなく長生きする可能性が高い人にとっては、繰下げ受給を検討する価値があるといえるでしょう。

早く受け取る「繰上げ受給」という選択肢も

一方で、65歳より前に年金を受け取り始める「繰上げ受給」という制度もあります。

繰上げ受給では、1か月早めるごとに0.4%ずつ年金額が減額されます。60歳から受給した場合、減額率は最大24%です。

減額された年金額は一生続くため、慎重な判断が必要です。

ただし、繰上げ受給を選ぶ人は、誰かの世話になることなく自分の力で生活を送れる期間である「健康寿命」を意識していることも少なくありません。

健康寿命は男性72.5歳、女性75.4歳と、平均寿命より8〜11年ほど短いとされています。そのため、「元気なうちに趣味や旅行を楽しみたいから、早めに年金を受け取りたい」と考え、繰上げ受給を選ぶ人もいます。

また、繰下げ受給は老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に選べますが、繰上げ受給は老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰り上げる必要があるため注意が必要です。

大切なのは自分に合った受給時期を選ぶこと

繰下げ受給は、受給開始を遅らせることで将来受け取る年金額を増やせる制度です。健康状態が良く、当面の生活資金に余裕がある人にとっては、有力な選択肢になるでしょう。

一方で、早めにリタイアしたい人や、今の生活を充実させたい人にとっては、65歳から受給する選択が合っている場合もあります。

年金の受け取り方に正解はありません。大切なのは「どちらが得か」だけで判断するのではなく、自分の健康状態や家計、今後のライフプランに合わせて考えることです。

将来の安心を優先するのか、それとも今の生活を充実させるのか。制度の特徴を理解したうえで、自分に合った受給開始時期を選びましょう。 


【本記事は、社労士みなみ・著、『知りたいことがぜんぶわかる! 定年前後のお金の超基本』(Gakken)より一部抜粋して掲載しています。】

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