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会社を経営する80代父→「長男に株式をすべて譲る」と遺言書を残すが…父の死後、長男を襲った“悲惨な結末”【銀行員は見た】

  • 2026.6.20
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは!銀行員のYamaです。

もう7年ほど前のことですが、いまだに時々思い出す案件があります。最初に相談を受けたのは、実際に契約を結ぶ2年ほど前でした。

本人は一人で来店し、「跡を継ぐのは長男だから、それで決まっている」と、すでに結論を出した様子で話し始めました。次男や長女の名前が話に出ることはほとんどなく、こちらから聞いても「あの子たちは家を出ているから」と短く返されるだけでした。

今思えば、あのときもう少し突っ込んで聞いておくべきだったのかもしれません。

遺言信託の契約

担当していたのは、印刷会社を経営する80代の男性でした。

社員は20人ほど、奥様はすでに亡くなっていて、子は長男・次男・長女の三人でした。会社を一緒に切り盛りしてきた長男に、「自宅と会社の株式をすべて譲る」という内容で遺言信託を結んでいました。

契約を結んだ日、本人は応接室で「これでもう何の心配もない」と何度も繰り返していたのを覚えています。長男にも「兄弟には話してあるから大丈夫だ」と伝えていたそうです。

相続発生、そして対立

ところが本人が亡くなり、実際に相続の手続きが始まると、これまでほとんど実家に顔を出さなかった次男と長女が、「自分たちの遺留分が侵害されている」と異議を申し立ててきました。

最初の話し合いの場で、次男が放った「父からは何も説明を受けていない」という一言に、長男は何も言い返せず、ただ黙っていました。空気が完全に固まったのを、今でも覚えています。

なぜ遺言通りに進められなかったのか

遺言の内容自体に問題はありませんでした。信託契約も、法律的にはきちんと結ばれていました。

それでも、銀行としてできることは「遺言通りに進める」ことではなく、相続人同士の話し合いの場を重ねて設け、遺留分にあたる金額をどう現金で清算するかを調整することでした。

話し合いは3回、4回と続きました。次男と長女は会社や自宅そのものには興味がなく、ただ「金額として公平に扱われたい」というのが本音だったように思います。

最終的に長男は会社の株を一部担保に借入をして現金を用意し、自宅と株式そのものは手放さずに済みました。ただ、想定外の現金繰りに、半年近く走り回ることになりました。

最終的な書類に3人がそれぞれ署名した日、応接室に三兄弟が集まったのは、思えばそれが最後だったかもしれません。手続き上は丸く収まった形でしたが、世間話をする人は誰もいませんでした。

長男だけが帰り際、私に小さく「これでもう、正月に集まることもないでしょうね」とつぶやきました。その一言が、今でも耳に残っています。

遺留分という制度、そして今思うこと

遺言信託というサービスは、遺言を「預かって実行する」仕組みであって、内容そのものの正しさまでは保証してくれません。法定相続人には遺留分という最低限の取り分が法律で決まっていて、このケースのように配偶者がおらず子が三人の場合、それぞれの遺留分は遺産全体の6分の1にあたります。

ここを無視した遺言は、たとえ正式な手続きを踏んでいても、いざというときに思うようには動かせなくなります。似たような相談は、この案件以外にも何度か受けたことがあります。

あのとき、もう少し早く本人と次男・長女との間を取り持っていれば、結果は違っていたのかもしれません。今でも、たまにそう思います。


執筆者:Yama

銀行員生活13年。法人・個人ともに経験しております。

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