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「急いで売らなくても大丈夫」と実家を放置…数年後に売却を決意した50代男性に突きつけられた“3000万円控除”の厳しい壁

  • 2026.7.3
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。大手不動産会社で10年以上の現場経験を持ち、宅地建物取引士の資格を持つライターのT.Sです。親が亡くなった後、実家を相続する機会は誰にでも訪れる可能性があります。

愛着のある家をどうするか、すぐに決められず、ひとまずそのままにしておく方も多いでしょう。今回は、相続した一戸建ての実家を「そのうち売ればいい」と放置した結果、税金面で思わぬ大打撃を受けてしまったエピソードを紹介します。

「急いで売らなくても大丈夫」と思い込んで放置した数年間

一戸建ての実家を相続したJさん(50代男性)は、親が亡くなった後も実家を急いで売却しませんでした。

「不動産の価値は簡単には下がらないし、時間ができてからゆっくり売ればいいだろう」

Jさんはこのように考えて、実家を数年の間そのまま空き家にしておいたのです。数年が経ち、ようやく売却の手続きを進めようとした際、Jさんはあるお得な税金の制度を知ることになります。

その制度とは「相続した空き家を売ったときの譲渡所得(不動産を売って得た利益)から最大3,000万円を差し引ける特例」です。この特例を使えば、売却時にかかる多額の税金を大幅に減らせるはずでした。

厳しい要件と迫る期限に直面し控除を断念

しかし、Jさんが制度の細かな要件を詳しく調べると、いくつもの高いハードルが立ちふさがりました。まず、対象となるのは1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた一戸建て住宅であり、区分所有建物(分譲マンションなどの共同住宅)は原則として対象外です。

さらに、相続の直前まで被相続人(亡くなった親のこと)が一人で住んでいたことも求められます。

「実家は一戸建てだし、親も一人暮らしだったからクリアできそうだ」

Jさんは胸をなでおろしましたが、特例にはさらに厳しいルールがありました。建物が耐震基準(地震に耐えられる建物の強さの基準)を満たさない場合は、耐震改修をするか取り壊して更地にする必要があります。耐震改修や取り壊しは、売る前に済ませておく必要はありません。買主が引き渡し後に耐震改修や取り壊しを行うと契約で取り決め、翌年2月15日までに完了すれば特例の対象になります。

また、相続が始まってから3年が経過する年の12月31日までに売らなければならない期限も設けられています。Jさんが確認したときにはすでに相続から3年が経過しており、耐震改修も取り壊しもしていませんでした。

「もっと早く制度を知っていれば、すぐに売却に向けて動いたのに」

Jさんは悔やみましたが、期限を過ぎてしまっては特例を使うことはできません。結果として、控除を受けられないまま売却したため、数百万円単位の譲渡所得税を支払うことになりました。

実家を相続した人が心得ておくべき対策

実家を相続したら、将来売る可能性を考えて、早めに空き家特例の要件を確認しましょう。築年数や一戸建てであること、相続後の期間など、確認すべき項目は多岐にわたります。

あわせて、以下の点にも注意が必要です。

  • 売却代金が1億円以下であること
  • 制度自体の期限が2027年(令和9年)12月31日までであること
  • 親が老人ホーム等に入所していた場合も、一定の要件を満たせば対象になること
  • 相続人が3人以上の場合は、控除限度額が一人あたり2,000万円に下がること

実家の取り壊しや耐震改修には、多くの時間と費用がかかります。税制の特例は個別の状況で適用の可否が変わるため、必ず最新の情報を国税庁のサイトなどで確認しましょう。判断に迷う場合は、自分だけで決めず、管轄の税務署や税理士などの専門家に相談して進めることをおすすめします。

参考:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)



ライター:T.S(宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランニング技能士)
大学卒業後、大手不動産会社に入社。10年以上にわたり、都心のタワーマンションから郊外の築古戸建てまで、数多くの現場経験を積む。現在は不動産ライターとして「業界の不都合な真実」や、消費者が陥りやすいマネーの罠について、実体験に基づく記事を執筆している。


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