1. トップ
  2. 住まい
  3. 新築時は満車だったはずが3割も空き区画に…150戸の分譲マンションを襲った「機械式駐車場」の盲点

新築時は満車だったはずが3割も空き区画に…150戸の分譲マンションを襲った「機械式駐車場」の盲点

  • 2026.6.26
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。不動産管理会社で10年以上の現場経験を持ち、マンション管理士の資格を持つライターのS.Kです。交通の便が良い地域では、維持費を考えてマイカーを持たない世帯が増えています。

実は分譲マンション内での「車離れ」が、管理組合全体の財政を揺るがす問題につながることがあるのです。今回は、満車だった機械式駐車場が空きだらけになり、修繕計画の危機に直面したマンションの事例を紹介します。

便利すぎる立地が招いた「空きだらけ」の駐車場

築15年・総戸数150戸の分譲マンションに住むAさん(40代男性、会社員)は、管理組合の理事を務めています。Aさんのマンションには、100台規模の機械式駐車場(金属製の装置で立体的に車を格納する設備)がありました。

新築分譲の当初はほぼ満車で、空き待ちのウェイティングリストが必要なほどの状況でした。しかし近年、状況は一変します。もともと最寄り駅から徒歩5分という利便性に加え、近隣で「カーシェア(会員間で車を共同利用するサービス)」が利用できるようになりました。

その結果、車を手放す居住者が相次ぎ、駐車場の空き区画は3割近くまで増えてしまったのです。

静かに削られていく修繕積立金と居住者の対立

管理組合の理事会に出席したAさんは、管理会社の財務資料を見て愕然とします。

「駐車場の使用料収入が、当初の計画より年間で数百万円も下振れしています」

このマンションでは、駐車場収入の一部を「修繕積立金(建物の将来の大規模な修繕に備えて貯めるお金)」に充てていました。駐車場に空きが出ると、管理組合に入る使用料が減り、居住者全員の負担になります。

さらに機械式駐車場は、15年から20年ほどで高額な部品交換や装置全体の「更新(設備の入れ替え)」が必要です。使う人は減っても、保守点検費用や将来の修繕費は減りません。理事会は、減った収入の穴埋め方法を巡って揺れます。まず管理費に上乗せして全戸で負担する案が出ますが、車を持たない居住者が反発しました。

「駐車場を使わない私たちまで、なぜ負担しなければならないのか」

次に駐車場の使用料を引き上げる案が出ると、今度は契約者から反対の声が上がります。

「使用料が上がるなら、外部の安い駐車場に移りたい」

どちらの案も支持を得られず、議論は暗礁に乗り上げてしまいました。

機械式の解体と平面化という選択

議論の末、理事会は「使う人が減ったなら、機械そのものを減らす」という解決策にたどり着きます。空いた機械式装置の一部を撤去し、地下のピット(装置を納める地中のくぼみ)に鋼製の床をかけて平らにする「平面化(地面に直接車を停める方式への改造)」を計画します。

平面化で将来の維持費を抑え、空いたスペースを「EV(電気自動車)」用の充電区画や来客用駐車場に転用する案をまとめました。初期の撤去費用はかかりますが、長期的な維持費を削減でき、修繕計画の安定につながります。対策案は総会で承認され、マンションは財政破綻の危機を回避する道を歩み始めました。

将来の空きリスクに備えるための防衛策

対策として、長期修繕計画に「駐車場の稼働率が下がった場合」のシミュレーションをあらかじめ含めておくと有効です。最悪の事態を想定しておけば、急な管理費の値上げや積立金不足を避けやすくなります。

機械式の更新時期が近いなら、平面化や一部撤去、敷地内へのサブスク型カーシェア誘致など、複数の選択肢を比較しましょう。中古マンションの購入を検討する方は、駐車場の稼働率や機械式の修繕状況を確認するのがおすすめです。

稼働率や修繕の履歴は、購入前の「重要事項説明(不動産購入の前に行う、契約内容や物件の注意点などの説明)」や過去の「総会議事録」で確認できます。駅に近い便利な物件ほど、将来的に車離れが進むリスクが潜んでいる点も購入時の判断材料にしましょう。



ライター:S.K(マンション管理士)
不動産管理会社で10年以上の現場実務に携わり、業界団体の評価制度策定委員会に所属していた経験がある。現在はライターとして、自身の豊富な経験・知見をもとに、一次情報を盛り込んだ不動産記事を多数執筆している。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる