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タワマン奥様「船の上にいるみたいでした」憧れの30階超購入も…50代夫婦が思い知らされた“高層階特有の落とし穴”

  • 2026.6.28
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※ChatGPTにて作成(イメージ)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

住宅購入を検討する際、多くの方が「地震に強い建物」を重視するのではないでしょうか。特にタワーマンションは、免震構造や制震構造を採用した物件も多く、災害にも強い住まいというイメージを持つ方も少なくありません。

実際、私がこれまで不動産売買に携わってきた中でも「木造の戸建てより安心そうだから」「最新の耐震技術が使われているから」という理由でタワーマンションを選ばれた方を何人も見てきました。

しかし、建物が無事であることと、住んでいる人が安心して過ごせることは必ずしも同じではありません。

今日は、眺望と安全性を重視して30階超のタワーマンションを購入した50代ご夫婦が、熊本地震で初めて知った、高層階ならではの現実についてご紹介します。

30階超のタワーマンションで始まった新生活

これは10年前、私が会社員として不動産売買仲介をしていた頃の話です。

Aさんご夫妻は50代の共働き夫婦でした。それまで郊外の戸建て住宅に住んでいましたが、お子さまの独立をきっかけに住み替えを決意します。新たな住まいとして選んだのは、熊本市内にある30階を超えるタワーマンションでした。

高層階からの開放的な眺望に魅力を感じたことに加え、耐震性能の高さも購入を後押しした理由の一つだったそうです。

「これだけ新しい建物なら、地震の時も安心ですね」

内見時、ご主人はそう話していました。

実際、販売担当者から免震構造や制震技術について説明を受けており、ご夫妻は大きな安心感を持って購入を決断します。入居後の暮らしは想像以上に快適でした。

窓からは熊本市街や熊本城を一望でき、夜になれば美しい夜景が広がります。長年憧れていたタワーマンション生活に、ご夫妻は満足していたそうです。

しかし、その安心感が大きく揺らぐ出来事が起こります。入居から間もない頃、熊本地震が発生したのです。

建物は無事だったのに室内は大混乱

大きな揺れを感じた瞬間、ご夫妻は思わず身構えたそうです。その日は夜、自宅のリビングでくつろいでいる時間帯でした。ところが、それまで経験した地震とは感覚がまったく違いました。

左右へ大きくゆっくり揺さぶられるような感覚が続きます。食器棚の扉が次々と開き、中の食器が音を立てて動き始めました。リビングの吊り照明も大きく揺れ続けます。

奥様はのちに「建物が壊れるというより、船の上にいるみたいでした」と振り返っていました。

建物自体に大きな損傷はありませんでした。しかし高層階にいたご夫妻は、想像以上の揺れを長時間体感したのです。揺れが収まった後も異変は続きました。立ち上がるとふらつくような感覚が残り、まるで船酔いをしているような状態になったそうです。

その日はなかなか寝付くことができず、ご夫妻ともにほとんど眠れないまま朝を迎えたといいます。

低層階の知人と話して初めて知った現実

数日後、ご夫妻は同じ市内のマンション低層階に住む知人と話す機会がありました。その時、ご夫妻は驚きます。知人は「もちろん怖かったけど、そこまで揺れ続けた印象はないな」と話したのです。

Aさんご夫妻が体験した揺れ方とは大きな差がありました。そこで初めて、ご夫妻は高層建築物特有の揺れについて調べ始めます。その中で知ったのが「長周期地震動」でした。長周期地震動とは、大規模地震の際に発生する周期の長いゆっくりとした揺れのことです。

高層建築物では建物固有の周期と地震の揺れが重なることで、上層階ほど揺れが大きくなる場合があります。Aさんはのちにこう振り返っていました。

「地震に強い建物だから安心だと思っていました。でも、揺れ方までは考えたことがありませんでした」

建物に大きな被害がなくても、高層階で暮らす人が受ける影響は想像以上だったのです。

防災対策を全面的に見直すことになった

熊本地震以降、ご夫妻の防災に対する考え方は大きく変わりました。それまで「新しいタワーマンションだから大丈夫だろう」と考えていたそうですが、実際に高層階特有の揺れを経験したことで、災害への備え不足を痛感したといいます。

まず取り組んだのは、家具の固定でした。食器棚や収納家具には転倒防止器具を設置し、家電についても滑り止め対策を実施しました。さらに備蓄品も全面的に見直しました。飲料水や非常食に加え、携帯トイレやモバイルバッテリーなどを最低でも1週間分は確保するようになったそうです。

ご夫妻が特に不安を感じたのは、地震そのものよりも、その後の生活でした。タワーマンションでは大規模地震の発生時にエレベーターが停止することがあります。また、停電や断水などのライフライン停止が発生する可能性も。

Aさんは「眺望や資産価値ばかり見ていましたが、災害が起きた後にどう暮らすかまで考えるべきでした」と振り返っていました。

住宅購入では“災害後の生活”まで想像することが大切

タワーマンションは高い耐震性能を備えた物件も多く、実際に大地震でも建物自体に大きな被害が発生しなかった事例は少なくありません。

一方で、高層階では長周期地震動の影響を受けやすく、低層階とは異なる揺れ方を体感する場合があります。そのため、タワーマンションを検討する際は次のような視点も持っておきたいところです。

  • 家具や家電の転倒防止対策を前提に考える
  • 飲料水や非常食を備蓄する
  • 携帯トイレやモバイルバッテリーを準備する
  • エレベーター停止時の生活を想定する
  • 眺望や資産価値だけでなく防災面も確認する

住宅購入では、購入時の満足感だけでなく、災害が発生した後にどのような生活になるのかまで考えておくことが重要です。

Aさんご夫妻も、地震を経験するまでは「建物の安全性」にばかり目を向けていたそうです。しかし実際には、その後の生活への備えが十分ではありませんでした。

特にタワーマンションの高層階を選ぶ場合は、建物が無事かどうかだけでなく「自分たちがその中でどう過ごすのか」という視点も忘れないようにしたいものです。

参考:長周期地震動について(気象庁)



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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