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「ハンドルを切るたびに『コツン』って音がして…」ただの音だと油断した数カ月後、現れた“走行への違和感”

  • 2026.7.5
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

駐車場でハンドルを切ったときに聞こえる「コツン」という小さな音。走行には支障がなく、高速道路でも特に違和感がないため、「そのうち点検しよう」と後回しにしてしまう人も少なくありません。しかし、その異音はステアリングや足回りの重要部品が摩耗しているサインかもしれません。

今回は、軽い異音を放置したことで操縦安定性にまで影響が及んだ事例をもとに、見逃しやすい足回りトラブルの危険性について解説します。

駐車場で聞こえた小さな「コツン」が始まりだった

「最近、駐車場でハンドルを切ると『コツン』って音がするんですよね」

点検の際、お客様からそう相談を受けることがあります。詳しく聞いてみると、異音が出るのは駐車場での切り返しや車庫入れのときだけ。速度が低い状態でハンドルを大きく切ると、「コツン」「カクッ」といった小さな音が聞こえるそうです。

「高速道路では何ともないですし、車検も通ったばかりなので大丈夫ですよね?」

このように考える方は少なくありません。実際、初期段階では走行性能に大きな影響が出ないことも多く、普段の運転では気にならないケースもあります。そのため、「まだ走れるから」とそのまま乗り続けてしまうのです。

ところが数カ月後、「最近は交差点を曲がるときにも音がするようになった」という状態へ変化していました。異音の発生頻度が徐々に増え、低速走行中の右左折時にも聞こえるようになっていたのです。このような症状の背景には、ステアリング系統や足回りの部品摩耗が隠れていることがあります。

原因はタイロッドエンドやボールジョイントの摩耗だった

点検を行ったところ、原因はステアリング系統の関節部分に使用されているタイロッドエンドやボールジョイントの摩耗でした。これらの部品はハンドル操作をタイヤへ伝える重要な役割を担っています。金属同士が直接接触しないよう内部にはグリスが充填され、防塵ブーツによって保護されています。

ところが今回の車両では、その防塵ブーツが破れていました。ブーツが破れると雨水や砂埃が内部へ侵入します。同時に潤滑を担うグリスも少しずつ流出してしまいます。すると関節部分の摩耗が急速に進行し、ハンドルを切った際にガタつきや異音が発生するようになるのです。整備士としては、ブーツ破れの段階で発見できれば比較的軽微な修理で済むケースもあります。しかし異音が出るまで放置されると、内部の摩耗が進行し部品交換が必要になることが少なくありません。

今回も当初は異音だけだったものの、時間の経過とともに別の症状が現れていました。「なんとなくハンドルが取られる気がする」「段差を越えたときのショックが大きくなった」という違和感です。これは摩耗によって部品のガタが大きくなり、本来のサスペンションやステアリングの動きが乱れてきたためです。

さらに、タイヤにも偏摩耗が発生していました。ステアリング系統のガタはタイヤの向きにも影響するため、知らないうちにタイヤ寿命を縮めてしまうこともあるのです。

異音だけで済まない場合も。安全性に関わる重要部品

症状がさらに進行すると、高速道路での直進安定性にも影響が現れます。今回のケースでも、「以前より修正舵が増えた気がする」という状態になっていました。車が真っすぐ走りにくくなり、常に微調整しながら運転する必要が出てきたのです。点検結果を説明した際、お客様は驚かれていました。

「ただ音がするだけだと思っていました」

しかし整備士からは、「もう少し進行していたら危険な状態でしたね」と説明することになりました。

ステアリング系統は車の進行方向を決める重要保安部品です。ガタが大きくなるほど操縦安定性は低下し、安全性にも直結します。また修理内容も、摩耗したタイロッドエンドやボールジョイントの交換だけでは終わりません。部品交換後にはホイールアライメント調整が必要になるケースも多く、結果的に修理費用も大きくなります。車種や損傷状況によって費用は異なりますが、早期発見時より負担が増える傾向があります。

もしブーツ破れの段階で発見できていれば、被害を最小限に抑えられた可能性もありました。ハンドルを切ったときだけ聞こえる異音は、決して軽視してよい症状ではありません。

・曲がるときだけ音がする
・低速時だけ音がする

こうした症状も立派な異常のサインです。車検のときだけでなく、定期点検で防塵ブーツの破れや足回りのガタを確認することが予防につながります。

小さな「コツン」という音の裏に、大きなトラブルが隠れていることもあります。異音に気付いたら早めに点検を受けることが、安全で快適なカーライフを守る第一歩といえるでしょう。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り約8年間整備に従事し、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。 年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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