1. トップ
  2. エンタメ
  3. 嵐のラストライブで“再注目”を集めたドラマ主題歌「いま見ても良い」「違和感がなかった」世代を超え愛された“2010年”放送の作品

嵐のラストライブで“再注目”を集めたドラマ主題歌「いま見ても良い」「違和感がなかった」世代を超え愛された“2010年”放送の作品

  • 2026.6.18

先日の嵐のラストライブ『ARASHI LIVE TOUR 2026「We are ARASHI」』において、大野智の『Monster』の歌唱力があらためて注目を集めている。激しいダンスの中でも揺るがない声、突き抜けるようなソロ、楽曲の世界へ入り込む表現力。その凄みを思い返すと、自然とよみがえるのが、同曲を主題歌とした2010年放送のドラマ『怪物くん』だ。藤子不二雄Ⓐの名作漫画を実写化した本作は、子ども向けのドタバタに見えて、実は人間らしさを学ぶ成長物語でもあった。

※以下本文には放送内容が含まれます。

主題歌が与えたゴシックな奥行き

嵐の楽曲『Monster』は、数あるシングル曲の中でも今なお高い人気を誇る一曲だ。重厚なサウンドと、少しおどろおどろしくホラーチックでありながらも、華やかな曲調。ドラマ『怪物くん』の主題歌でありながら、単なるタイアップ曲にとどまらず、作品そのものの扉を開ける鍵のような存在だった。

歌詞には「12時」「満月」といった怪物モチーフが散りばめられている。一見するとダークなファンタジーソングだが、その中心にあるのは、時空を超えて相手を探し続けるような一途な愛だ。怖さと切なさ、異形と純情。その二面性が、人間界で不器用に心を学んでいく怪物くんの物語と、美しく重なる。

そして、やはり大野智の、不要な力みなくまっすぐ突き抜けていく歌声である。SNS上でも「歌唱力エグい」「いつ聞いても上手い」と評判の歌唱技術はもちろんだが、それ以上に印象的なのは、彼がただ歌うのではなく、楽曲の世界を“生きている”ように見えることだ。

今回ライブで『Monster』が再評価されたのも、年月を経てもその表現が古びていないからだろう。むしろ時間が経ったからこそ、大野の声の安定感や、身体表現と歌唱を両立させる凄みがよりはっきり見える。主題歌がこれほど強い作品だからこそ、『怪物くん』というドラマもまた、単なる懐かしさ以上の存在として思い出されるのだ。

大野智が成立させた“実写版『怪物くん』”

undefined
Google Geminiにて作成(イメージ)

2010年に日本テレビ系で放送されたドラマ『怪物くん』は、藤子不二雄Ⓐの名作漫画を現代風にアレンジした実写作品だ。怪物ランドのプリンス・怪物くん(大野智)は、新大王への即位を目前に控えていた。しかし、性格は超わがままで甘えん坊。見かねた父・怪物大王(鹿賀丈史)によって、人間界へ修行に送り出される。

送られた人間界で、彼はお金の価値も分からず、人間界の常識も知らない。思い通りにならないとすぐに怒りだす。そんな怪物くんが、人間の欲や嘘、嫉妬、優しさに触れながら、少しずつ変わっていく。

この役を実写で成立させるのは、かなり難しかったはずだ。大きな耳、派手な衣装、全身で感情を表す子どもっぽさ。一歩間違えれば、単なるコスプレや誇張表現に見えてしまう。

けれど大野は、怪物くんのわがままを、彼らしい純粋さに昇華させた。怒りっぽくて幼いのに、どこか寂しげで、誰かに愛されることを当然のように求めている。そんな危うさを、表情と身体の動きで作っていた。

普段の大野の持つ落ち着いた印象とのギャップも大きい。だからこそ、怪物くんとしての変顔や大げさなリアクションが、ただのサービスではなく、役への振り切りとして伝わった。彼は“怪物くんを演じている大野智”ではなく、“人間界で暴れている怪物くん”に見えたのだ。

子どもも大人も巻き込んだ、愛される実写化

『怪物くん』がSNS上で「いま見ても良いドラマ」「違和感がなかった」と愛される理由は、魅力的なキャラクターや作り込まれたストーリーもさることながら、物語の入口がとにかく楽しいからでもある。

怪物くんの好物として印象的に描かれたカレーライスは、ドラマ版ならではの象徴的なアイテムだ。美味しさを全身で表現する姿は、子どもたちにも分かりやすく、作品の明るさを決定づけた。放送当時には関連商品も話題となり、ドラマの人気が家庭の食卓にまで広がっていった。

一方で、本作は明るいだけの作品ではない。悪魔界の王子・デモキンを松岡昌宏、その側近・デモリーナを稲森いずみが演じ、怪物くん側のドタバタとは対照的なダークさを担った。悪魔界が人間の欲望を利用しようとする構図があることで、物語は単なる一話完結の教訓劇にとどまらず、怪物くんが何を守るのかという大きなテーマへ広がっていく。

音楽面でも、その二面性は際立っていた。嵐の『Monster』が作品に大人びたファンタジーの奥行きを与えた一方で、大野智が怪物くん名義で歌った『ユカイツーカイ怪物くん』は、作品を一気に子どもたちのものにした。普段の伸びやかな歌声とは違い、やんちゃで尖った声を作り、怪物くんそのものとして歌い上げている。ここにも、大野の表現力の幅が表れていた。

『Monster』の再評価は、『怪物くん』というドラマを見直す絶好のきっかけでもある。あの歌声が作品の世界を引き締め、あの演技が怪物くんに命を吹き込んだ。実写化が難しい名作を、世代を超えて愛されるエンターテインメントに変えた最大の理由は、やはり大野智という表現者の“怪物級”の説得力にあったのではないだろうか。


出典:日本テレビ 土曜ドラマ『怪物くん』公式HPより

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_

の記事をもっとみる