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「今回の夜ドラも最高な予感」「すっごい面白い」初回放送から“熱い支持”、一癖あるけど優しい物語【NHK夜ドラ】

  • 2026.6.8

放送開始直後からSNS上で「すっごい面白い」「今回の夜ドラも最高な予感」と熱い支持を集めるNHK夜ドラ『ミッドナイトタクシー』。29歳の深夜専門タクシードライバー・蘭象子(古川琴音)が、バックミラー越しに乗客たちの人生の“通過点”に立ち会うヒューマンドラマだ。第1週の見どころは、饒舌でも親切でもない象子に対し、なぜ乗客たちは心を開くのか? という不思議さである。

※以下本文には放送内容が含まれます。

象子の“求められた分だけ”の距離感

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夜ドラ『ミッドナイトタクシー』第1週(C)NHK

古川琴音演じる主人公・蘭象子は、お世辞にも愛想が良いとは言えないタクシードライバーだ。決して話し上手ではなく、気さくな性格でもなければ、乗客に対して自発的に世話を焼くこともしない。客からペンを貸してくれと言われれば無言で差し出し、自動販売機を探している様子を察すれば、淡々とその場所だけを教えてやる。
彼女が提供するのはあくまで、求められたことにできる範囲で応える、極めてミニマルなスタンスのみ。

しかし、このちょうどいい優しさこそが、深夜タクシーという密室を世界でもっとも安全な場所へと変えているように見える。私たちは日常のなか、“あなたのためを思って”という過剰でおせっかいな善意や、プライベートへ踏み込みすぎる配慮に、思いのほか疲弊しているのではないだろうか。象子がいる車内には、そうした息苦しい干渉が一切ない。

さらに、この空間の安全性を決定づけているのが、バックミラー越しの視線という身体的なマジック。象子は、決して乗客と正面から向き合わない。鏡というフィルターを一枚挟んだ間接的な眼差しだからこそ、乗客はある種のプレッシャーから解放され、心理的ハードルを下げる。向き合わないからこそ、成立する場がある。

第1週を通じて強く印象づけられるのは、象子が乗客の人生に対する助言者ではないということ。彼女は傷を癒やすセラピストでも、徹底的に話を聞いてやるカウンセラーでも、進むべき道を指し示すナビゲーターでもない。
ただ、乗客たちが胸の奥から言葉を自然と紡ぎ出す、心地よい空気を車内に循環させる存在としてそこにいるのである。

制限があるから言える、愛の本音

第1週で描かれたエピソードのなかでも、本作の土台となっているのが、都会のタワーマンションへと向かう恋人同士の物語だ。彼らは、引いたトランプに書かれた数字のぶんだけで愛を語り合うという、戯れのような会話を繰り広げる。

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夜ドラ『ミッドナイトタクシー』第1週(C)NHK

なぜ彼らは、わざわざこんな回りくどいコミュニケーションを選択しているのか。ただの恋人同士のコミュニケーションと言ってしまえばそれまで。だがそれ以上に、生身の言葉でストレートにぶつかり合うことへの照れや、決定的な本音を回避するための防衛策も見え隠れしているように思える。

しかし、このエピソードの愉快な点は、制限が関係を希薄にするのではなく、むしろ逆説的に二人の関係を煮詰めて濃くしていく仕組みにある。
自由に言葉を使えないからこそ、選び抜かれた一文字一文字の価値が跳ね上がる。照れ隠しのお遊びだったはずの枠組みは、いつしか文字数の壁を突き破り、彼らの本能的な欲望や、相手への剥き出しの執着をあぶり出していく。

このやり取りを見つめる象子の冷静なスタンスも、また徹底している。彼女は二人の恋愛ゲームをジャッジしないし、粋なセリフで割り込むこともしない。ただ深夜の静寂とともに、彼らを目的地へと運ぶだけ。下手に踏み込まないからこそ、二人の会話は夜の街中に鮮烈に浮かび上がることになる。

30歳の不安と“イチゴ”の比喩

第1週において、誕生日をめぐる二人の女性(さとうほなみ・恒松祐里)の偶然の出会いも無視できない。誕生日当日、それぞれ一人でレストランに出向き、誕生日ケーキを提供されていた二人。一回り年齢の違う二人がたまたま出会い、年齢の認識のズレが発覚した瞬間から、車内の空気は一変する。

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夜ドラ『ミッドナイトタクシー』第1週(C)NHK

42歳の女性(さとうほなみ)が静かに語ったバックストーリーは切実である。30代から今に至るまで、祖父の看護や母親の世話に追われ、自分の時間をすべて他人に捧げてきた人生。彼女はその日々を、人にイチゴをあげ続けてきた人生に例えた。自分にとっての大切な時間や労力を人に譲り続け、手元には何も残らなかった喪失感。
そんな彼女が、もう一人の女性からたまたま誕生日ケーキのイチゴを分けてもらったことで、もう一度自分の人生を取り戻せたような心地になったと微笑む。その姿は、痛烈なまでの美しさを放っていた。

車内で始まった、飴を舐めている間だけ、お互いに嘘を言い合おうというゲーム。ここでも、ちょっとしたお遊びが光る。交わされる嘘は、冷たい欺瞞ではない。彼女たちが本当は送りたかった人生と、胸の奥底に仕舞い込んでいた理想が花開いていく。
嘘という安全網に守られた、生々しい本音。30歳を迎えたばかりの女性(恒松祐里)は、周囲が結婚し家庭を持つなかで、一体どうやって生きていけばいいかわからない孤独を吐露し、42歳の女性に頼む。30代は怖くないって教えてよ、と。

この痛切な対話を、バックミラー越しに聞いている象子。実は彼女自身も、間もなく30歳になる身なのだ。他人の人生の通過点を見送る側だったはずの象子。いつか訪れるかもしれない光を掴むための、切実な未来の予行演習がそこにある。

『ミッドナイトタクシー』の第1週は、深夜の車内という一時的な空間で、乗客たちの不安や迷う気持ち、または一ミリの希望などを、一つひとつ丁寧に拾い上げるような優しさに満ちている。象子の行きつけの喫茶店・つかれしらずにある不思議なメニューたちのように、一癖あるけれど愛おしい物語が始まった。


NHK 夜ドラ『ミッドナイトタクシー』毎週月~木 よる10時45分~11時00分
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_

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