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最終回で際立った“名女優”の怪演「楽しみにしてた」「名残惜しすぎる」話題が絶えなかった“黒幕”の正体【深夜ドラマ】

  • 2026.6.9
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水曜プラチナイト『鬼女の棲む家』(C)中京テレビ

最終回を迎えたドラマ『鬼女の棲む家』。SNS上でも「最後まで楽しみにしてた」「名残惜しすぎる」と、話題のドラマ最終回に対して期待とロスの声が挙がっていた。平凡な主婦・星野明香里(石田ひかり)が、日常の顔のままネット私刑に手を染め、やがて家族の秘密までもが生配信で剥がれていく。そして最後に現れた黒幕・ヒイラギの正体は、かつて明香里に炎上させられた恨みを持つ元女優の小田切美月(小沢真珠)だった。本作が目指した“家族の再建”とは?

※以下本文には放送内容が含まれます。

現代のリアルを目指した最終回

『鬼女の棲む家』は最終回に向けて、少しずつ星野家の崩壊が描かれるドラマだと勘違いしていた。

ネット上で特定の人物を炎上させてストレス発散している主婦・明香里と、妻や家族を裏切ってラウンジ通いしていた夫の透(竹財輝之助)、音楽の世界で成功するため枕営業をした疑惑をかけられた娘の咲良(熊井戸花)、そしていわゆる“寿司ペロ”事件など奇行に走るようになった息子の歩夢(三浦綺羅)。

こういった、幸せそうな家族の裏側がまとめて暴かれる過程そのものは、ドラマ界でもよくある定番の流れかもしれない。しかし、本作の最終回は意外な流れを辿る。

家族それぞれのすべての所業が明るみに出て、なおかつ、そのきっかけとなった謎の人物・ヒイラギの正体が判明したことにより、物語は想定していない軌跡を描き始める。ネット特定班だった明香里を筆頭に、家族それぞれが“いかにほかの家族と向き合っていなかったか”を痛感し、家族関係の再建へと心を配り始めるのだ。

終盤で描かれる“立ち直りの兆し”は、正直言ってご都合主義のようにも見えてしまう。透は新しく警備員の仕事に就き、明香里もパート先へ戻ることができた。部屋に籠もり切りになってしまった咲良も少しずつ回復の準備を始めるとともに、なんと歩夢は自ら進んで学校へ行くようになる。

まるで綺麗事のように、整いすぎている。しかし、学校から帰ってきた歩夢のシャツの背中に残るベッタリとした靴跡が、その見方に待ったをかける。綺麗には始まらない再出発。本人たちの反省と、世間の容赦なさが同居する。誠実に現代のリアルを描こうとした最終回と言えなくもない。

小沢真珠が演じてきた“濃いキャラ”のアップデート

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水曜プラチナイト『鬼女の棲む家』(C)中京テレビ

黒幕・ヒイラギの正体が小田切美月だと明かされる瞬間、わかりやすく空気が濃くなる。演じているのが小沢真珠だからこそ、そこに過度な説明は必要ない。言葉がなくとも、その目力が秀逸に語り出すからだ。ヒイラギはただの復讐者ではなく、ドラマのテーマそのものを引き受けたキャラクターだった。

彼女の強みは、いわゆる映像作品における“画力”の派手さだけではない。一般的に派手すぎるものは、笑いと紙一重になってしまいがちだ。しかし小沢真珠の身体表現は、恐怖やシリアスな雰囲気から付かず離れず、絶妙なラインを保つ。「ハハハ……」と高笑うシーンなども含め、彼女にしか出せない独特の雰囲気を失っていないからこそ、上手い具合に不気味さだけが残るのだ。大袈裟な動きなのに、なぜか茶化しきれない。

小沢真珠が演じてきた“濃い役”の系譜は、ここでアップデートされる。かつての悪女たちが振り回してきたのは、家族や恋愛といった閉じた舞台が多かった。しかし『鬼女の棲む家』の美月がナイフを振り回すに至ったのは、ネット民が蔓延る開いた場で炎上させられたからである。

彼女の凄みは、古典的な悪女の存在感を保ったまま、現代の空気感に接続できる点にある。だからこそ最終回での登場に、話題が絶えないのだろう。

地獄は終わらない?

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水曜プラチナイト『鬼女の棲む家』(C)中京テレビ

ヒイラギ=美月の動機は、過去に明香里に炎上させられたことへの恨みだ。ここが重要で、本作は単なる“いつかは悪人が裁かれる構図”に回収されない。

私刑は正義のふりをするが、いつでも私怨に化ける可能性がある。明香里がネットの世界に逃げ込んだのは、承認欲求を満たすためだけでなく、家族と向き合う労力から逃げるためでもあったのではないか。

最終回では、徹底的にその逃げ道が塞がれた。ネット上で他者を追い詰めた彼女が、最後には家族もろとも炎上させられてしまう。悪意を持った人間は、やがて巡り巡って悪意に晒され、破滅させられる……その連鎖が見える。

透が明香里を庇って刺される展開も、単なる“夫の贖罪”として消費されていないのが良い。刺された瞬間にすべてが美談に終わるのではなく、その後にますます炎上が拡大し、しっかり生活が崩れていくのだ。痛い目を見て終わり、なんかじゃない。彼らはニュースになり、世間の噂になり、監視の目に晒される。最終回では、そんな後味の悪さもしっかりと提示される。

それでも、元の暮らしを目指すようになった星野家。ドラマ的でわかりやすい“向き合い直し”の物語かもしれないが、大切なのは許されるかどうかではなく、明日を生きるかどうか。その最小単位が“家族”なのだと示して本作は終わる。

誰も完全には救われない代わりに、断罪もされない。小沢真珠が担ったのは、その“不穏の核心”を、最後に一点へ収束させる役割だったと言える。ラスボスの正体が明かされたことで、返って“恨みや私刑は終わらない”と分かってしまう。地獄は、いつまでも閉幕しないものなのかもしれない。


中京テレビ・日本テレビ系 水曜プラチナイト『鬼女の棲む家』毎週水曜24時24分~

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_

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