1. トップ
  2. ヘルスケア
  3. 「口の中がピリピリする」それでも好物の“リンゴ”を食べ続け…→ある日突然、呼吸困難に…50代女性襲った“想定外の悲劇”

「口の中がピリピリする」それでも好物の“リンゴ”を食べ続け…→ある日突然、呼吸困難に…50代女性襲った“想定外の悲劇”

  • 2026.6.18
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさまこんにちは。重症アレルギーをはじめとする救急疾患に日々向き合っている、麻酔科専門医の松岡雄治です。今回は、いつもの果物が突然命を脅かすアレルゲンに変わってしまったケースをご紹介します。

「また口の中がピリピリする…。たまにあるのよね。」
口の違和感を感じながらも、好物のリンゴを我慢せず食べ続けた50代女性のBさん(仮名)。

しかし、ある日、彼女を待っていたのは、突然の呼吸困難と救急搬送という過酷な現実でした。現在は「いつまたアナフィラキシーショックが起きるか」という恐怖に怯えながら、常にエピペン(アナフィラキシー補助治療薬)を持ち歩き、大好きだった外食を心から楽しめない日々を送っています。

なぜ「昨日まで食べられていたもの」が突然、命を脅かす存在に変わってしまったのでしょうか。

昨日までの好物が「敵」に変わる、免疫システムのエラー

なぜ大人になって突然、食物アレルギーを発症するのでしょうか。これは「花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)」と呼ばれ、以下のような免疫のメカニズムで起こります。

【花粉と果物の交差反応フロー】

  • 感作(記憶):白樺などの花粉を吸い込み続けることで、体が花粉のタンパク質を「異物」として記憶し、花粉症を発症します。
  • 交差反応(勘違い):リンゴやモモなどの果物のタンパク質は、白樺の花粉と構造が非常に似ています。そのため、果物を食べると免疫システムが「花粉が侵入した」と勘違いして激しい攻撃を始めます。
  • 症状の進行:多くは口の痒みにとどまる口腔内アレルギーの症状ですが、食べ続けると、まれに血圧低下や呼吸困難など、命に関わる重篤な全身症状(アナフィラキシーショック)を引き起こす危険性があります。

「ちょっと口が痒いだけ」と「危険なアレルギー」の境界線

「子供の頃から食べているリンゴだから、アレルギーになるはずがない」「疲れて口内炎ができていて少し果物がしみるだけだろう」。ちょっとした自分の体の違和感を「たまにあること」とやり過ごしてしまうのは、ごく自然な反応です。まさか好物が原因だとは思わないのも無理はありません。

しかし、このケースを通してお伝えしたい「危険な境界線」があります。実は、白樺などの花粉症を持つ方は、免疫システムのエラーによって、昨日まで食べられたものが突然「アレルゲン」に変わるリスクを常に抱えています。恐ろしいのは、「ちょっと口が痒いだけ」と自己判断し、本当は体が危険を知らせているのに原因の果物を食べ続けてしまうことです。

重症化してアナフィラキシーに至るのは実際にはまれです。また、原因となるタンパク質の多くは熱に弱いため、加熱すれば食べられることも少なくありません。ただし、摂取量や頻度に注意が必要です。重症度によっては加熱しても症状が出る場合もあるため、自己判断せずに必ず医師に確認してください。

【知っておくべき交差反応の組み合わせと合併リスク】

  • 危険な組み合わせ:交差反応は白樺とリンゴだけでなく、「ハンノキ花粉とリンゴ」「ヨモギ花粉とメロン」といった組み合わせでも起こります。
  • アレルギーの連鎖:この症状を持つ方は、喘息(50〜70%)やアトピー性皮膚炎(30〜40%)といった他のアレルギー疾患を高確率で合併しやすい特徴があるため、特に注意が必要です。

重症化する前に、確認すべき3つのサイン

もし白樺などの花粉症をお持ちで、生の果物を食べた際に「いつもと違う」と感じたら、以下の3つのサインをご自身で確認してください。

1. 生のリンゴなどを食べた直後に「口や喉がピリピリ・イガイガする」

果物の成分に免疫システムが過剰に反応している(口腔アレルギー症候群)直接的な初期サインです。

2. 食後に「唇が腫れる、または蕁麻疹が出る」

アレルギー反応が口の中だけでなく、皮膚や粘膜など全身へ進展し始めている証拠です。

3. 「息苦しさや強い腹痛を感じる」

口腔内の症状にとどまらず、アナフィラキシーという極めて重篤な全身症状に進展している危険な状態です。

食後の不調や、長引く咳はお近くの消化器内科クリニックへ

「好物だから」「ちょっと口に違和感があるだけだから」そうやって自分の体のSOSに蓋をしてしまうお気持ちは痛いほどよくわかります。

アレルギーはいつも一定の症状が出るとは限らないことにもその怖さがあります。「リンゴを食べて口が痒くなったら、食べるのをやめてアレルギー科に行く」といった簡単な一歩から始めてみましょう。


出典:

アレルギーの手引き2026(日本アレルギー学会)

食物アレルギー診療ガイドライン2021(一般社団法人日本小児アレルギー学会 )

北海道のシラカバ花粉症とリンゴ果肉過敏症について(The Japanese Society of Allergology)


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

の記事をもっとみる