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父の死後、財産を全て“母名義”に→「相続税はゼロ」と思いきや…3年後、40代息子が見落としていた“1,000万”の落とし穴

  • 2026.6.7
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPとして家計相談やお金に関する情報発信を行っている柴田です。先日、48歳の男性からこんな相談を受けました。

「3年前に父が亡くなったとき、相続税はゼロだったんです。それなのに先日母が亡くなったら、今度はだいたい1,000万円もの相続税を納めることになって……。何かのミスじゃないかと思ってるんですが...」

調べてみると、ミスではありませんでした。むしろ、3年前の「ある判断」が、今回の重い税金を招いていたんです。実はこれ、相続でとても多い「落とし穴」なんです。

「とりあえず全部お母さんへ」が落とし穴

3年前、お父さまが亡くなったとき。

一家は「とりあえず財産は全部お母さん名義にしておこう」と決めました。その結果、相続税はゼロ。家族は「よかった」と胸をなで下ろしたそうです。「自分たちはちゃんと生活できてるし、何かあるかもしれないから高齢の親に渡しておこう」という考えは、一般的な感覚だと思います。

相続税には「配偶者の税額軽減」という強力な制度があります。配偶者の法定相続分相当額か1億6,000万円のうち、どちらか多い金額までは相続税が課税されないという仕組みです。お父さまの財産はこの枠に収まったので、税金はかかりませんでした。ここまでは多くの家庭がやることで、間違いではありません。問題は「その先」を考えていなかったことなのです。

二次相続では「武器」が一気に減る

相続には、一次相続(お父さまが亡くなったとき)と、二次相続(残されたお母さまが亡くなったとき)があります。この二次相続には、気を付けなくてはならない点があるのです。

理由は2つあります。ひとつは、配偶者の税額軽減が使えないことです。お母さまが亡くなったとき、もう配偶者はいませんから、1億6,000万円の非課税枠は使えません。

もうひとつは、基礎控除が減ることです。相続税は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」までは非課税という基礎控除があります。一次相続のときは相続人が3人で4,800万円の基礎控除があっても、二次相続では相続人が1人減って4,200万円に減ります。さらに、生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)も同じように目減りしてしまうのです。

ここに、もう一つの誤算が重なります。一次相続でお母さまに財産を集中させると、それがそっくりそのまま二次相続の課税対象になる点です。しかもお母さまがもともと持っていた財産(固有財産)とも合算されます。結果、課税される額がふくらみ、税率も上がってしまうんですね。

大事なのは「一次と二次の合計」で考えること

ではどうすればよかったのでしょうか。ポイントは、一次相続と二次相続を「合計」で考えることです。一次相続で配偶者の税額軽減を目いっぱい使えば、その場の税金はゼロにできます。でも、それは結果的に「課税の先送り」になることも多いのです。

二次相続まで合計すると、かえって損をするケースが少なくありません。そこで、一次相続の段階で、ある程度はお子さんにも財産を渡しておきます。配偶者に財産を寄せすぎず、二次相続で課税対象がふくらみすぎないよう調整する方法もあります(配偶者の方が若くお金を使う予定がある場合、配偶者に遺産を多く寄せる選択が有効です)。

判断の軸になるのは、以下のように多岐にわたります。

  • 配偶者の年齢や健康状態
  • もともと持っている固有財産の額
  • 自宅に同居している家族がいるか
  • 今後値上がりしそうな不動産があるか

たとえばお母さま自身の財産がすでに多い場合、一次相続で相続する財産をお母さまに寄せすぎないほうが、二次相続での負担を軽くできる可能性があります。逆に固有財産が少なければ、配偶者控除を活かす余地が大きくなります。家庭ごとに「正解」は変わってくるのです。

すでに一次相続を終えていても、できることはある

「うちはもう父の相続を終えてしまった」という方もご安心ください。二次相続に向けて、生前にできる対策があります。たとえば、お母さまからお子さんやお孫さんへ、毎年少しずつ贈与していく方法(暦年贈与)です。

長い時間をかければ、課税対象となる財産を計画的に減らせます。生命保険を活用して非課税枠を使うことも有効です。自宅についても、誰がどう引き継ぐかを早めに決めておくと、後の負担を抑えやすくなります。

なお、自宅には「小規模宅地等の特例」という、土地の評価額を大きく下げられる制度があります。小規模宅地等の特例が使えるかどうかで、納税額が100万円以上変わることも珍しくありません。ただし誰が相続するか、同居していたかなどで使える・使えないが変わるため、事前に税理士に相談するのがおすすめです。

おわりに

「配偶者控除で税金ゼロ」は、確かにその場では正解に見えます。しかし、一次・二次相続をワンセットで考えてはじめて、本当に有利な分け方が見えてきます。

相続税は「誰が、何を相続するか」で、金額が大きく変わる点をしっかり押さえておきましょう。気になる方は、早めに専門家へ相談するのがおすすめです。


出典:

No.4158 配偶者の税額の軽減(国税庁)

No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)(国税庁)

執筆・監修:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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