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8,000万で木造アパートを建築…完成直後から満室に→しかし5年後、70代オーナーを直撃した“想定外の大誤算”

  • 2026.6.24
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、家計・資産形成・相続など、お金に関するご相談をお受けしている、マネーシップス代表 ファイナンシャルプランナー/IFAの石坂です。

相続税対策として、空き地にアパートを建てる方法があります。土地や建物の評価、借入金の扱いによって、相続税の負担を抑えられる場合があるためです。

しかし、アパートは建てた時点で終わりではありません。入居者が集まらなければ家賃収入は減り、築年数が進めば修繕費もかかります。さらに、借入金が残ったまま相続が発生すれば、子ども世代が返済や管理の判断を引き継ぐことになります。

今回は、相続税を減らす目的で空き地にアパートを建てたものの、数年後に空室や修繕費で家族が悩むことになった事例をもとに、相続税対策と賃貸経営リスクの考え方を見ていきます。

「建てれば安心」のはずが、5年後に収支が悪化

70代のAさんは、郊外に約250平米の空き地を持っていました。毎年の固定資産税を負担するだけの土地だったため、以前から活用方法に悩んでいました。

そんなとき、「空き地のままより、アパートを建てた方が相続税対策になる」と聞きます。Aさんは子どもたちに財産を残したいと考え、建築会社に相談したそうです。

提案されたのは、木造2階建て・全8室のアパートです。建築費は約8,000万円。自己資金1,000万円を入れ、残り7,000万円は借入れでまかなう計画でした。

想定家賃は1室あたり月7万円。満室なら年間家賃は672万円です。管理費や固定資産税、修繕費を差し引いても返済できるという説明を受け、Aさんは建築を決めました。

完成直後は満室だったそうです。しかし、5年ほど経つと近隣に新築アパートが増え、2室が空室に。さらに入居者を確保するため、家賃を7万円から6万3,000円に下げることになりました。

この場合、年間家賃収入は672万円から453万6,000円に下がります(6室入居の場合)。差額は年間218万4,000円です。そこに給湯器交換で1台15万円前後、外壁補修で数百万円単位の費用がかかる可能性もあります。

その後Aさんが亡くなり、アパートと借入金を相続した子どもたちは、さらに悩むことになりました。長男は会社員で賃貸経営の経験がなく、長女は遠方に住んでいます。管理会社に任せてはいたものの、空室対策、修繕判断、売却するかどうかの話し合いが続きました。

税金は減っても、借入金と修繕費は残る

アパート建築が相続税対策になると言われるのは、土地や建物の評価に影響する場合があるためです。借入金が残っていれば、相続税の計算上、債務として差し引けることもあります。

ただし、相続税評価が下がることと、手元のお金が増えることは同じではありません。

たとえば、借入金が相続時に5,500万円残っていた場合、相続税の計算では債務として考慮される可能性があります。しかし、金融機関への返済はその後も続きます。返済条件によっては、月々の返済が30万〜35万円程度になることもあります。

家賃収入が年間672万円あれば余裕があるように見えても、空室や家賃下落で年間約454万円まで下がると、管理費、税金、保険料、修繕費を払った後の余裕はかなり小さくなります。

また、築10年、15年と経つにつれて、屋根、外壁、配管、エアコン、給湯器などの修繕も増えます。相続人が複数いる場合は、誰が管理するのか、家賃収入をどう分けるのか、修繕費を誰が出すのかも問題になります。

さらに、相続発生時の空室状況によっては、当初想定していた評価減が得られない可能性もあります。相続税対策として建てたつもりでも、空室が増えていれば、税金面や収支面で計画とのずれが出ることがあるのです。

相続税対策は「収支」と「引き継ぐ人」まで見る

アパート建築を相続税対策として考える場合、「税金がいくら減るか」だけで判断しないようにしましょう。建てた後に家賃収入で返済できるのか、修繕費を準備できるのか、相続人が管理を引き継げるのかまで確認しておきたいところです。

特に大切なのは、満室時ではなく、少し悪い状況での収支を見ることです。空室が出たり、家賃が下がったりしても返済に無理がないかを確認しておくと、判断しやすくなります。

事前に確認したいポイントは、次のような内容です。

  • 空室が2〜3室出た場合の収支
  • 家賃が10%下がった場合の返済余力
  • 10年後、15年後の大規模修繕費
  • 毎月の返済額と家賃収入の差
  • 相続人のうち誰が管理判断をするのか
  • 売却したいときに買い手がつきやすい立地か
  • 借入金を相続人が負担できるか

親世代は「家族のために土地を活用したい」と考えていても、子ども世代は「賃貸経営までは難しい」と感じていることがあります。建てる前に、相続人の意向も確認しておくことが大切です。

相続対策の目的は、税金を減らすことだけではありません。アパート建築を検討するなら、相続税の効果だけでなく、空室、修繕費、借入金返済、相続人の負担まで含めて判断したいところです。


執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、マネーシップス代表。累計1,200件以上の相談対応に加え、金融記事の制作・校正・監修の対応を行っています。専門は「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」。資産運用やライフプラン設計では、分散投資の考え方と人の心理を踏まえた行動設計をもとにサポートしています。
保有資格:証券外務員一種、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、金融リテラシー検定

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