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「毎年90万円以上増える」年金を“65歳→70歳”に繰り下げ受給。5年後、発覚した“大きな見落とし”に夫婦が絶句したワケ

  • 2026.6.25
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、家計・資産形成・相続など、お金に関するご相談をお受けしている、マネーシップス代表 ファイナンシャルプランナー/IFAの石坂です。

老後の年金は、受け取り始める時期によって金額が変わります。繰下げ受給は、受け取りを遅らせることで、老齢年金の本体部分を増やせる制度です。

ただし、夫婦で生活している場合、本人の年金額だけを見て判断すると、配偶者に関係する年金を見落とすことがあります。特に注意したいのが「加給年金」です。今回は、年金を増やすつもりで繰下げ受給を選んだものの、老後の収入計画がずれてしまった事例を解説します。

「70歳まで待てば42%増える」と考えた夫

今回の会社員として長く働いてきたAさんは、当時65歳を前に年金の受け取り方を考えていました。65歳から受け取る場合の年金見込額は年約218万円。70歳まで5年間繰り下げると、増額率は42%となり、年約310万円になる見込みでした。

Aさんは「毎年90万円以上増えるなら、長生きしても安心だ」と考えます。妻は5歳年下で当時60歳。結婚後は子育てや親の介護で働き方を調整してきたため、妻自身の年金は年76万円ほどになる見込みでした。

夫婦の生活費は月約27万円、年間で約324万円。家賃はかかりませんが、固定資産税が年14万円、火災保険料や車検代、医療費などを含めると、年間支出は約365万円になりました。

Aさんは、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を70歳まで待つことにしたそうです。65歳時点では退職金1,350万円と預貯金700万円ほどがあり、65歳から70歳までは、そのお金を取り崩して生活する計画です。Aさんは「5年間で1,800万円前後取り崩しても、70歳から年金が増えれば大丈夫」と考えていました。妻も当初は、「年金が増えるならその方が良いかもしれない」と受け止めていました。

ところが、実際に生活を始めると、思った以上に預貯金の減りが気になったそうです。物価上昇で食費や光熱費は増え、夫婦で通院する回数も少しずつ増えていきました。年間365万円の支出は大きく崩れなかったものの、収入がほとんどない期間が続くため、通帳残高は毎年確実に減っていきます。

そしてAさんが70歳になり、年金請求を進める段階で、妻が「ところで、加給年金はどうなるのか」と確認しました。そこで初めて、夫婦にとって大きな見落としがあったことに気づいたのです。

見落としていたのは、妻が65歳になるまでの加給年金

加給年金とは、厚生年金に一定期間加入していた人が老齢厚生年金を受け取るとき、条件を満たす配偶者や子がいる場合に上乗せされる年金です。

配偶者が対象になる場合、加給年金額と特別加算を合わせて、年40万円台になるケースもあります。Aさんが65歳のとき妻は60歳だったため、妻が65歳になるまでの5年間、条件を満たせば加給年金の対象になる可能性がありました。

しかし、老齢厚生年金を繰り下げる場合、原則として繰下げ期間中は加給年金は支給されません。また、加給年金額は繰下げによる増額の対象にもなりません。

仮にAさんが65歳から老齢厚生年金を受け取っていれば、加給年金として年40万円台を5年間受け取れた可能性があります。単純計算では約200万円です。

Aさんは70歳以降の年金額が増えることばかり見ていました。しかし、65歳から70歳までに受け取れたかもしれない加給年金を見落としていたのです。妻は「年金を増やすために待ったのに、私に関係する年金がもらえないなんて」と驚きました。

繰下げの損得は、年金額だけでは判断できない

Aさんの場合、5年繰下げで年金は年約218万円から年約310万円に増える見込みでした。差額は年約92万円です。

ただし、65歳から受け取っていれば、5年間の老齢年金は約1,090万円。そこに加給年金が年40万円台加わると、5年間で約200万円、合計では約1,290万円前後になります。

一方、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を70歳まで繰り下げる場合、65歳から70歳までの年金収入は基本的にありません。70歳以降の年金額だけでなく、待っている間に受け取れないお金も見る必要があります。

ポイントは、次の3つです。

  • 繰下げで増えるのは、主に老齢年金そのもの
  • 加給年金は、繰下げによる増額の対象ではない
  • 夫婦に年齢差がある場合、対象期間を見落としやすい

繰下げ受給は「夫婦の年齢表」で考える

年金の繰下げ受給は、長生きに備える選択肢です。ただし、本人の年金額だけで判断すると、世帯全体では思ったほど有利にならないことがあります。

繰下げを考える際は、「何歳から、誰の年金が、いくら入るのか」を年ごとに整理してみてください。配偶者が65歳になるまでの期間、加給年金の有無、繰下げ中に使う預貯金、70歳以降の税金や社会保険料も確認しておきたいところです。

年金は「本人がいくら増えるか」ではなく、「世帯でいつ、いくら入るか」で見ることが大切です。年金事務所やねんきんネットで見込額を確認し、加給年金の対象になるかも事前に確認しておくと、老後資金の誤算を防ぎやすくなります。


執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、マネーシップス代表。累計1,200件以上の相談対応に加え、金融記事の制作・校正・監修の対応を行っています。専門は「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」。資産運用やライフプラン設計では、分散投資の考え方と人の心理を踏まえた行動設計をもとにサポートしています。
保有資格:証券外務員一種、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、金融リテラシー検定

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