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かつて、ワンピース主題歌を歌った「伝説の元アイドル」“カルト宗教にハマる少女”で映画賞を総なめした女優とは

  • 2026.7.6
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満島ひかり-2006年7月撮影(C)SANKEI

満島ひかりの出発点は、1997年に二本同時に始まっている。沖縄アクターズスクール出身のユニット・FolderにHIKARI名義で加わり、アーティストとして世に出た年。同じ年、映画『モスラ2 海底の大決戦』に子役で出演した年。アーティストと俳優の、ふたつの入口を同時にくぐっている。

そこから10年余で本名の映画女優として戻り、また10年余で日本映画の主演女優賞に届いた。歌から芝居への乗り換え物語では括れない曲線だ。最初から二車線で始まり、作家性のある現場が代わる代わる中心へ呼んできた、満島ひかりという俳優の歩き方である。

二車線で始まる

象徴的なことに、この人の出発点は一本に括れない。1997年デビュー。沖縄アクターズスクール出身の満島ひかりは、7人組ユニットFolderにHIKARI名義で加わり、シングル『パラシューター』で世に出る。同じ年、映画『モスラ2 海底の大決戦』に子役として出演。歌と芝居が、ほぼ同時に始まっていた。

2000年にユニットがFolder5へ改組されると、3rdシングル『Believe』がアニメ『ONE PIECE』のオープニング主題歌に起用され、全国に声が届くアイドルになる。

ここで満島ひかりに渡されていた素材は、ひとつではない。声を張る場所と、画面に立つ身体。両方を抱えた少女が、はじめから二車線の道筋でキャリアを開いている。後で振り返れば、ここで決まっていたのは「いつ芝居へ抜けるか」という移行物語ではなく、姿の違う現場にも同じ顔で立てるという射程の広さだったのだ。

映画の女優として呼び戻される

歌手活動の休止を挟み、満島ひかりは本名で芝居の現場に戻ってくる。2009年の映画『愛のむきだし』。園子温監督。狂信的なカルト宗教に取り込まれた少女を主演で演じた。声を張り、感情の底まで全部出して、画面の温度をひとつも逃さない役だ。報知映画賞新人賞、ヨコハマ映画祭主演女優賞、キネマ旬報助演女優賞。新人賞と主演女優賞と助演女優賞が、ほぼ同時にこの俳優の名前に並んだ。

この受賞群が意味するのは、トロフィーの累積ではない。歌手出身の若い俳優を「映画の女優」として認めた、現場側の判断が一斉に並んだということだ。歌から芝居へ抜けたのではなく、芝居の世界の側がこの俳優を「呼ぶ相手」として認識し直した節目である。ここから満島ひかりの名前は、作家性のある監督たちが物語の中心に据える名前へと変わっていく。

脚本家が当てて書く相手になる

歌から芝居へ、そして民放主演まで届いた到達点が2013年だった。日本テレビ系『Woman』。坂元裕二脚本。交通事故で夫を失い、二人の幼子を一人で育てるシングルマザーを主演で演じた。民放連続ドラマでの初主演にして、その年の演技賞に名前が並んだ。沖縄のアイドルユニットから始まった声が、民放ゴールデンの主演まで届いた瞬間である。

後に同じ坂元裕二・脚本のTBS系『カルテット』にも呼ばれている。脚本家が「この俳優に書く」相手として選び続ける。それは呼ばれる女優から、物語を当てて書かれる女優への移行を意味する。中心への距離が、この一作で目に見えて詰まった。

脇で蓄えた格を主演で受け取る

その間も、満島ひかりは脇でずっと中心の重さを背負い続けている。2010年代の前半から半ばにかけて、『悪人』、『一命』、『北のカナリアたち』、『駆込み女と駆出し男』と、日本アカデミー賞優秀助演女優賞を四度受けている。これだけ短期間に脇で日本アカデミー賞が裏書きされていた俳優というのは、日本映画でも数えるほどしかいない。脇に置いても画面の重心を引き寄せてしまう。だから主演とは別の路線で、現場が手放さなかった。

その積み重ねの先に、2024年の映画『ラストマイル』がある。塚原あゆ子監督・野木亜紀子脚本。物流倉庫の関東センター長を、野木亜紀子が満島ひかりに当てて書いた。第48回日本アカデミー賞優秀主演女優賞。脇で蓄えてきた格を、当て書きの主演で受け取った瞬間である。この主演女優賞が立ち上がるのは、10年余の助演の重みが背後にあるからだ。歌から芝居へ、中心まで届く。その曲線が、この一本で外側からも確定したのだ。

作家性監督が隣に置きたい俳優

2026年8月に公開される映画『時には懺悔を』。中島哲也監督の8年ぶりの監督作で、満島ひかりはふたたび現場の中心近くに呼ばれている。

演じるのは、西島秀俊扮する一匹狼の探偵・佐竹のもとで修行中の助手だ。9年前の新生児誘拐事件を追う物語のなかで、傷を抱えた大人たちの心が静かに揺れていく。今回は主演ではなく、主演の隣で物語を支える配役。役の大小ではない。中島哲也が次の現場で隣に置きたい相手として、この俳優を選んだ、というその一点だ。

歌と芝居の入口に同時に立ち、10年余で映画祭に裏書きされ、さらに10年余で日本映画の主演女優賞まで届いた。並べてみれば一本の曲線に見えるが、その線を引いてきたのは満島ひかり本人の意思だけではない。各時代の作り手がこの俳優を芯に据えて物語を書こうとした、連続した指名の集積でもある。歌から芝居への移行物語ではなく、声と身体の両方を持つ俳優として、中心へ呼ばれ続けてきたのだ。

次にどの作り手が、この人の隣にどんな物語を書くのか。歩いてきた線の延長に、満島ひかりの現在地はまだ静かに伸びている。


※記事は執筆時点の情報です

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