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5年前、朝ドラの“若旦那”役で日本中を涙させたトップアイドル。巨匠たちに愛される「驚異の表現者」とは

  • 2026.6.17
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※ChatGPTにて作成(イメージ)

俳優にはいろいろなタイプがいる。明るく愛される人、華で引っ張る人。松村北斗は、そのどれとも少し違う。

この人のまわりには、作家性の強い作り手が集まってくる。新海誠、岩井俊二、坂元裕二。一筋縄ではいかない物語を作る人たちが、こぞって松村を名指しする。派手に感情を爆発させるのではなく、内に抱えて表に出さない。その芝居が、重い物語を託すのにふさわしいと見込まれてきた。選ばれる男、それが松村北斗だ。

抑えた芝居が批評の最前線で認められる

松村の評価は、声を張る役ではなく、感情を抑える役で高まってきた。

2021年から放送されたNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』では、ヒロインの夫・雉真稔を演じ、第111回ザテレビジョンドラマアカデミー賞の助演男優賞を受けた。2024年の映画『夜明けのすべて』では、パニック障害を抱える青年・山添孝俊を演じている。上白石萌音とのW主演で、声高に訴えるのではなく、気配を消すような芝居だった。この役で、キネマ旬報ベスト・テンの主演男優賞という、批評の最前線での評価を得ている。

アイドルが賞を獲った、という話ではない。感情を抑えることで、かえって観る者の心を動かす。その技術を持った俳優が、たまたまアイドルでもあった。そう考えると、いろいろなことが腑に落ちる。

派手に泣いたり叫んだりすれば、芝居は伝わりやすい。けれど松村が選ぶのは、その逆だ。言葉にしない感情を、表情のわずかな揺れだけで届ける。難しいぶん、できる人は限られている。だからこそ、批評の最前線にいる人たちが、彼の名前を真剣に挙げるのだ。

世界観の強い作り手が名指しする

松村の歩みを面白くしているのは、作品を選ぶ「作り手」の顔ぶれだ。

2022年の劇場アニメ『すずめの戸締まり』では、新海誠監督のもとで声優に初挑戦し、宗像草太を演じた。各地の災いの扉を閉じる「閉じ師」の青年だが、物語の序盤で、子ども用の椅子に姿を変えられてしまう。つまり松村は、役の大半を、椅子の声だけで成立させなければならなかった。表情に頼れないぶん、声だけで一人の人間を立ち上げた。

2023年には、岩井俊二監督の映画『キリエのうた』に出演。震災で婚約者を失い、行方の知れなくなったヒロインを長く捜し続ける役を演じた。喪失を抱えたまま、それでも誰かを捜し歩く。その静かな佇まいが、登場人物たちの関係を結んでいく。派手な見せ場のない役を、物語の重心として置けること。岩井監督が託したのは、そういう信頼だった。

そして2025年、松村は新海誠の作品を実写化した映画『秒速5センチメートル』で、単独映画初主演を果たす。時間と距離にすれ違わされ、少しずつ心を閉ざしていく男を演じた。声で草太を演じた人が、今度は実写の主役として新海作品の中心に立った。アニメから実写へ、声から主演へ。一人の作り手のもとで、これだけ段階的に信頼を重ねた俳優は、そう多くない。

世界観の強い監督ほど、配役には神経を使う。自分の作った繊細な世界を、壊さずに生きてくれる人でなければ困るからだ。その物語に「いてほしい人」でなければ、声をかけない。松村は、そういう作り手たちから繰り返し選ばれてきた。

重さや余白を託せる俳優として、信頼がしっかり積み上がっている。作り手が安心して世界を預けられる。それは、芝居の確かさがなければ生まれない関係だ。

託される物語が一段ずつ深くなる

松村が立ち止まらないのは、託される役がどんどん深くなっていくところだ。

塚原あゆ子監督がメガホンをとった2025年の映画『ファーストキス 1ST KISS』は、坂元裕二の脚本だった。会話の機微を緻密に書く脚本家のもとで、松村はまた新しい表情を見せている。台詞の一つひとつに意味が込められた本では、半端な芝居はすぐに見抜かれる。そこに選ばれること自体が、力の証だ。

派手な話題作に飛びつくのではなく、難しい物語を一本ずつ引き受けていく。楽な役ばかりを選んでいたら、ここまで作り手の信頼は集まらなかったはずだ。その地道な積み重ねが、いまの松村北斗を作っている。

脇で支える者が真ん中に立つ

2026年、松村はさらに大きな役を引き受ける。9月公開の映画『白鳥とコウモリ』は、東野圭吾の原作小説の映画化だ。松村は倉木和真を演じ、今田美桜とW主演を務める。重厚なミステリーの中心に立つ役どころである。7月には日本テレビ系ドラマ『告白−25年目の秘密−』で、地上波の連続ドラマ単独初主演も控えている。

作家性の強い作り手たちに選ばれ続けてきた人が、物語の真ん中で大きな役を背負っていく。脇で世界を支える役から、物語そのものを動かす役へ。積み上げた信頼が、より大きな舞台へと松村を連れ出している。次に彼を名指しするのは、どんな作り手だろう。その日を、楽しみに待ちたい。


※記事は執筆時点の情報です

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