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30年前、武富士のCMを書いた職人がアニメに込めた"洋楽の血" ガンダムの幕開けを毎週告げた"疾走”

  • 2026.6.17
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※ChatGPTにて作成(イメージ)

忘れていた夢が、ふいに動きだす。そんな瞬間が、人生には何度かある。たたんでしまったはずの願いが、何かの拍子に胸の奥でまた脈を打ちはじめる。この曲は、まさにその一瞬を音にした歌だ。物語のはじまりを毎週まっさきに告げ、画面の向こうの少年と、テレビの前のこちら側を、同じ高さまで一気に引き上げていく。

ROMANTIC MODE『DREAMS』(作詞・作曲:RO-M)ーー1996年5月22日発売

テレビ朝日系アニメ『機動新世紀ガンダムX』のオープニング。そしてROMANTIC MODEというユニットにとっての、最初の一曲でもある。

イントロが鳴った瞬間に、もう走り出している。澄んだシンセが切り拓く道の上を、まっすぐなビートが駆けていく。立ち止まっていた者の背中をぐっと押すような、迷いのない前向きさが全篇を貫いている。

走り出すイントロが、空を一気に開ける

この曲の核心は、なんといってもその疾走感にある。たっぷりと取られた前奏が、サビへ向けて少しずつ熱を上げていく。シンセの音は冷たく澄んでいるのに、リズムはどこまでも血が通っていて熱い。冷と熱が同居したまま加速していく感触は、洋楽のダンスミュージックを浴びて育った作り手の手つきそのものだ。

電子の音で組み上げながら、無機質には決して落ちない。ひとつひとつの音が前へ前へと押し出し、聴いている側の体も自然と前のめりになる。アニメの主題歌が、その作品の顔として大切に作り込まれていた時代の、ひとつの充実がここにある。

海を渡って鍛え上げられた声が、旋律を駆ける

その音の上を駆けていくのが、麻倉あきらの声だ。張り上げて押し切るのではなく、芯を通したまま旋律にぴたりと寄り添う。高い音域でも痩せず、まっすぐ前へ伸びていく。前向きな言葉を、湿っぽくも軽すぎもしない絶妙な体温で運んでいく。

この声には、ひとつの覚悟がにじんでいる。彼女は1986年に「斉藤さおり」の名でレコードデビューし、すでに10年のキャリアを重ねていた。そのうえで1995年、単身アメリカへ渡り、声を一から作り直して帰ってくる。歌い手が自分の声をつくり直すというのは、たやすい決断ではない。「忘れかけた夢が今動きだす」という一節がただのきれいごとに聞こえないのは、歌う本人がまさにそれを生きてきたからだろう。

旧知の二人が、ひとつの音に手を組んだ

声を支えるのは、長く一緒に音を鳴らしてきた二人だ。ユニットの中心にいるのが、ジョー・リノイエ。横浜のインターナショナルスクールで育ち、アメリカのバークリー音楽大学で学んだ。洋楽の感覚が骨の髄まで染みついた作り手だ。1995年には武富士のCMで流れた『シンクロナイズド・ラブ』を手がけ、その名を広く知られている。表に顔は出ないが、その音は誰もがどこかで耳にしている。

そしてそのジョーと並んで弦を鳴らすのが、ギターの鈴川真樹だ。二人は1980年代末にバンド・D-Projectで同じ釜の飯を食った旧知の間柄で、その息の合った手つきがこのユニットの土台になっている。近藤真彦『ミッドナイト・シャッフル』でも聴くことができる彼のギターは、まさに音を色に変える腕利きでもある。いまもASKAのサポートメンバーとしてステージに立ち、変わらず第一線で弦を鳴らし続けている。たしかな技を持つ者が、表に名を急がず音そのもので応える。このユニットには、そういう手練れの呼吸が通っている。

おもしろいのは、楽曲のクレジットだ。作詞も作曲も編曲も、誰それの個人名ではなく、すべて「RO-M」というユニット名でまとめられている。だれが何をしたかをあえて溶かし、ひとつの音の塊として差し出す。表に出ることを急がない作り手たちの気配が、この匿名のたたずまいにも漂っている。

動きだした夢の、その先

走り出したきり、この曲は一度も失速しない。最後のサビまで熱を保ったまま駆け抜け、聴き終えると、なぜか自分の足が前を向いている。ガンダムの主題歌という枠を借りながら、ここで歌われているのは、誰の胸にもある「もう一度動きだす夢」のことだ。

きらびやかな話題で売れた曲ではない。それでも、確かな腕を持つ者たちが本気で交わったとき、年を経ても古びない音が生まれる。あのイントロが鳴れば、いまでも胸のどこかが少しだけ前へ傾く。動きだした夢に、もう一度手を伸ばしたくなる。その手ざわりにこそ、この一曲が静かに聴き継がれてきた理由があるように映る。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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