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タイで2年間ムエタイ修業した“ガチの格闘家”。30キロ増量→ネトフリで世界を震撼させた「叩き上げ俳優」とは

  • 2026.6.9
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2017年8月、映画『HiHG&LOW THE MOVIE1/END OF SKY』スペシャルイベントに出演した一ノ瀬ワタル(C)SANKEI

役のために、人は体をどこまで作り変えられるのか。一ノ瀬ワタルを見ていると、その問いの答えが、どんどん更新されていく気がする。

増量も、減量も、辞さない。役が求めるなら、自分の肉体そのものを別物に変えてしまう。「なりきりの怪物」と呼びたくなるその徹底ぶりの源には、格闘技で鍛え上げた、本物の身体と精神がある。

格闘技という出発点

一ノ瀬の原点は、芝居ではなく、闘いの世界にある。少年時代は柔道に打ち込み、特待生として高校に進んだ。やがてK-1に憧れ、キックボクサーを目指して高校を中退し、単身で上京する。沖縄のジムで内弟子として汗を流し、その後本場タイへ。ムエタイのジムで、2年間の修業を積んだ。

己の体一つで勝負する世界で、一ノ瀬は徹底的に肉体と精神を鍛え上げた。痛みに耐え、限界まで自分を追い込む。その日々が、後の俳優・一ノ瀬ワタルの何よりの武器になる。鍛えた身体は、どんな演技論よりも雄弁に、画面の上で語りはじめる。

遠回りに見えた格闘技の経験が、唯一無二の表現の土台になった。リングで学んだのは、技だけではない。自分を信じて前に出る覚悟である。それが、俳優としての胆力にそのままつながっている。土俵やリングと、撮影現場。場所は違っても、本気でぶつかる姿勢は何ひとつ変わらない。だから一ノ瀬の芝居には、作り物では出せない真実味がある

肉体で魅せる怪演

俳優としての一ノ瀬を世に知らしめたのは、文字どおり体を張った怪演だった。2019年の映画『宮本から君へ』で、一ノ瀬は真淵拓馬を演じた。主人公の前に立ちはだかる、巨漢の怪物のような男だ。この役のために、一ノ瀬はなんと30キロを超える増量に挑んだ。膨れ上がった体躯から放たれる威圧感は、観る者を本気で震え上がらせた。

並の役者なら、特殊メイクや演出でそれらしく見せるところだ。だが一ノ瀬は、自分の体そのものを役に近づけていく。格闘技で培った、自分を作り変える覚悟と根性。それが、忘れがたい怪演を生んだ。

体を張るとは、こういうことなのだと思い知らされる仕事だった。見た目を作り込むだけではない。その体に見合う心まで、一ノ瀬は役に持ち込む。だから巨漢の威圧感が、ただの外見で終わらない。

叩き上げからの主演

体を張り続けた一ノ瀬に、ついに主演の座が巡ってくる。2023年のNetflixドラマ『サンクチュアリ -聖域-』で、一ノ瀬は小瀬清を演じた。荒くれ者の新弟子が、相撲の世界で成り上がっていく物語の主役である。激しいぶつかり合いと、泥にまみれた人間ドラマ。格闘技で這い上がってきた一ノ瀬自身の人生と、役がぴたりと重なった。

脇役で体を張り続け、ようやくつかんだ初主演。叩き上げの俳優が、叩き上げの力士を演じる。その姿には、作り物ではない説得力がみなぎっていた。肉体と人生が一つになった、まさに当たり役である。下積みの時間は、決して無駄ではなかった。むしろ、泥にまみれた日々があったからこそ、成り上がる男の悔しさや喜びを、誰よりもよく知っている。

怖さと優しさを携えて、さらなる飛躍へ

2026年、一ノ瀬は大きく飛躍する。映画『炎上』では、歌舞伎町で若者たちを束ねる「KAMIくん」を演じ、怖さと優しさが同居する怪演を見せる。主演映画『四月の余白』では、元半グレで元受刑者という過去を持ち、全寮制更生施設「みらいの里」を運営する主人公を演じる。そして映画『キングダム 魂の決戦』では、楚の将軍・臨武君として、歴史大作の戦場に立つ。

凄みと包容力。相反する二つを同じ体に宿せるのは、肉体で語ってきた一ノ瀬ならではだ。格闘技という遠回りの出発点が、いまや誰にも真似のできない強みになっている。体一つで世界を渡り歩いてきた男が、スクリーンの真ん中で、また新しい怪物を生み出そうとしている。その肉体から、次はどんな人間が立ち上がるのか。まったく、目が離せない。


※記事は執筆時点の情報です

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