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母とペットショップで見た柴犬。「あの子可愛いよね」の一言が彼女を2分間悩ませていた話

  • 2026.5.16
ハウコレ

母と週末に買い物に行くのが昔からの習慣で、その日もいつも通りの土曜日でした。けれど何気なく彼女に送った一通のメッセージが、その後の彼女の2分間を大きく揺らしていたとは、そのときの僕は知る由もなかったのです。

ペットショップで足が止まった

その日、僕は母と二人で、実家近くの駅前ショッピングモールに来ていました。母の冬物のコートを買うのが目的で、午後はそのまま近所のカフェで休もうという、何の変哲もない予定でした。

買い物を終えて1階に降りると、ペットショップの前を通りました。ガラスケースの中で、柴犬の子犬がころんと丸まって眠っているのが目に入ります。ふわふわの背中、小さな前足。彼女が前に「いつか犬を飼いたい」と言っていたのを思い出して、僕はスマホを取り出しました。

「あの子可愛いよね」深く考えずに、ひとことだけ送りました。写真は、そのあとに撮って送るつもりだったのです。

母に話しかけられて、写真を送り損ねた

メッセージを送ったあと、ガラスに近づいて写真を撮ろうとしました。そのときです。

「ねえ、この子と柴犬、どっちが大きくなるのかしらね」

母が、隣のケースの子犬を覗き込みながら話しかけてきました。母は犬好きで、店員さんに性格や育てやすさを尋ね始めます。

写真を撮るのをすっかり忘れていたのです。話が一段落して、ようやくスマホを取り出したとき、メッセージを送ってから2分くらい経っていました。慌てて柴犬の写真を撮り、「犬の話なんだけど。実家の近くのペットショップで柴犬見てきたから、写真送るね」と続けて送信しました。

彼女からはすぐに笑顔のスタンプと、「びっくりした、誰のこと言ってるかと思った」という返信が届いたのです。

「説明不足だった」と謝った夜

そのとき僕は、ただ「ややこしい送り方しちゃったな」とだけ思っていました。彼女が冗談めかして返してくれたから、笑い話で済ませられた気でいたのです。

夜になって、二人でごはんを食べに行きました。注文を終えたところで、彼女がこう切り出しました。

「実はね、今日のあのメッセージのとき、本気で動揺してたんだ」

頭の中であらゆる女性の顔が浮かんで、自分のことを疑った時間だったと、彼女は話してくれました。僕はすぐに「ごめん、説明不足だった」と頭を下げました。彼女は「責めてるわけじゃないよ」と笑ってくれましたが、僕の心には引っかかるものが残ったのです。

そして...

僕は普段から、自分の頭の中だけで完結したまま、文脈を省いてメッセージを送る癖がありました。彼女は察してくれることが多かったので、「伝わるだろう」と甘えていたのです。

けれど、たった一通の言葉足らずなメッセージで、彼女に不安な時間を過ごさせてしまった。「軽い気持ち」だったのは送り手の僕だけで、受け取った側は同じ重さでは受け止められない。当たり前のことに、ようやく気づきました。

翌週から、彼女に送るメッセージの最初に、必ず一言だけ文脈を添えるようにしています。「犬の話なんだけど」「仕事の話なんだけど」と、ひとこと添えるだけで、彼女の表情は本当に違うのです。言葉ひとつの責任を、これから少しずつ覚えていきたいと思っています。

(20代男性・営業職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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