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【プロ野球】バットの「危険スイング」に罰則も「退場だけじゃ甘すぎる」審判を死傷させたら犯罪に?弁護士が解説

  • 2026.5.16
4月16日のヤクルト-DeNA戦で球審の側頭部にバットが直撃し負傷した件を受け、ヘルメットを着用して試合に臨む球審(左)(4月18日、甲子園、時事通信フォト)
4月16日のヤクルト-DeNA戦で球審の側頭部にバットが直撃し負傷した件を受け、ヘルメットを着用して試合に臨む球審(左)(4月18日、甲子園、時事通信フォト)

日本野球機構(NPB)が5月11日、打者がスイングの際にバットを途中で投げ出す行為を「危険スイング」と定め、警告や退場処分の対象とすることを発表しました。バットがすっぽ抜けるケースも含まれ、翌12日の1軍戦、2軍戦から適用されています。

今回の対応は4月16日のヤクルト-DeNA戦で、打者の手から離れたバットが審判の側頭部を直撃し緊急手術を受ける重大事故があったことを受けたもので、SNS上では「退場だけじゃ甘すぎる」「どんなに危険なことかバッターが自覚することが大事」などの声が上がっています。

今回、罰則が設けられたことで、今後、打者が危険スイングにより、近くにいた審判や捕手などを死傷させてしまった場合、刑事責任を問われる可能性はあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士が解説します。

業務上過失致死傷罪に問われる可能性

プロ野球の試合中に打者がバットを投げ出すなどの危険なスイングをしたことで、近くにいた審判や捕手などがけがをしたり、死亡したりしてしまった場合の打者の法的責任について、牧野さんは「刑事責任としては、故意でなくとも、当該の打者が、バットが手から離れることを予見できたのに注意を怠ったという過失が認められる場合、打者のプレーは業務に当たります」と説明。

その上で「この場合、刑法211条の業務上過失致死傷罪(5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)に問われる可能性があります」と教えてくれました。「重大な不注意」により人を死傷させたとして、重過失致死傷罪(刑法211条後段。法定刑は5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)に問われる可能性もあるといいます。

では、万が一打者が故意に危険なスイングをした場合はどうなるのでしょうか。

牧野さんは「もし打者が近くにいた審判や捕手などにバットを当てようと考え、実際にバットが当たってけがをさせたのであれば、刑法204条の傷害罪(15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)、けがをした人が死亡した場合には、刑法205条の傷害致死罪(3年以上の有期拘禁刑、最長20年)に問われる可能性があります」と述べ、「殺意があると認められた場合は殺人罪(死刑または無期もしくは5年以上の拘禁刑)に処される可能性があります」と解説してくれました。

民事責任については、故意、過失を問わず、危険行為によって被害者に治療費や休業損害などの損害を生じさせたことを理由に、民法709条の不法行為に基づく損害賠償責任を問われる可能性があるとのことです。

打者の所属球団やNPBの責任は?

もし審判や捕手などが重傷を負った場合、打者個人だけでなく、打者の所属球団やNPBの責任はどうなるのでしょうか。

牧野さんは「法的責任を問われる可能性はあります」と説明した上で、「所属球団は、当該選手を雇用しているため、選手が業務(試合)中に他人に損害を与えた場合、原則として所属球団は民法715条で定められている使用者責任に基づき、当該選手と連帯して損害賠償責任を負う可能性があります」と話してくれました。

一方、NPBについては当該選手を使用(雇用)しているわけではないため、民法715条の使用者責任は負わないものの、試合の管理者としての責任があるといいます。

牧野さんは「試合の管理者として安全管理(配慮)義務を怠っていた場合には、安全管理(配慮)義務違反に基づいて、民法709条の不法行為に基づく損害賠償責任を問われる可能性があります」と述べました。

最後に、NPBが「危険スイング」をルールとして明文化したことで、今後、裁判などでの過失の判断に影響を与える可能性があるかを聞くと、牧野さんは「内部規程でルールとして明文化して禁止したことにより、裁判で過失が認められ、刑事責任や損害賠償が認定される範囲が明確になったと言えます」と述べ、「NPBが危険スイングを内部規程でルールとして早急に罰則化して禁止したのは、NPB自身が試合の安全対策の不備を指摘されないための防御的措置と言えるでしょう」と、今回の対応を評価しました。

危険スイングのルールが明文化されたことで、今後は「手が滑った」という言い訳では済まず、選手自身が法的リスクを問われるケースが増えるかもしれません。

オトナンサー編集部

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