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「もう限界です」と泣いた新入社員を救ったのは → 無口な先輩の『コンビニ行こう』だった

  • 2026.5.16

これは、私の友人・A子から聞いた話です。時に言葉よりも雄弁に心を動かすものがある――そんな大切なことに気づかされた出来事でした。

画像: 「もう限界です」と泣いた新入社員を救ったのは → 無口な先輩の『コンビニ行こう』だった

突然の「辞めたいんです」

A子がチームリーダーを務める小さな制作会社でのことです。
入社4ヶ月目の新入社員・Bさんが、ある日の終業後にA子のデスクへやってきました。

「あの、少しいいですか」

声が震えていました。場所を移すと、堰を切ったように泣き出したBさん。

「もう……辞めたいんです」

責任感の強いA子は、リーダーとして「彼女を救わなければ」と激しく焦りました。
「頑張れ」は追い詰めてしまうかもしれない。「わかるよ」は安っぽく聞こえるかも。
気の利いた一言が、どうしても出てきませんでした。

静かに立ち上がったCさん

そのとき、斜め後ろのデスクでずっと黙って作業していたCさんが、おもむろに立ち上がりました。50代の男性で、職人気質で無口、若手からは少し距離を置かれがちな存在です。

CさんはBさんの方を向いて、ぽつりと言いました。

「ちょっとコンビニ行くんだけど……行かない?」

Bさんは驚いた顔のまま、こくりとうなずきました。
二人が並んで部屋を出て行く姿を、A子はただ見送るしかありませんでした。

30分後に戻ってきたBさんの顔

30分ほどして戻ってきたBさんの顔は、泣きはらしてはいたものの、どこかすっきりと晴れやかな表情に変わっていました。
翌日も、その次の日も、Bさんはきちんと出社してきました。

後日A子がこっそり「Cさんと何を話したの?」と聞くと、Bさんは照れくさそうに答えました。

「仕事がつらいとか、自分に向いてないかもとか……ただ愚痴を聞いてもらっただけです。でも、あんなにちゃんと聞いてもらったのって初めてで」

Cさん本人に聞くと、「俺も若いころしんどかったから」と一言だけ言って、またパソコンに向かいました。

アドバイスより、そばにいること

A子からその話を聞いて、私はハッとさせられました。

私たちは後輩や大切な人が苦しんでいるとき、「立派なアドバイスをして導かなければ」と自分にプレッシャーをかけてしまいがちです。
でもCさんがしたのは、「ただ一緒に歩き、ただ話を聞く」というシンプルなことでした。
特別なことは、何もしていません。

それでもBさんの心を動かしたのは、その「一緒にいる」という行動。
「何を言うか」よりも「どう寄り添うか」。A子はあの夜、そのことを初めて知ったと言っていました。

【体験者:30代・女性・会社員、回答時期:2026年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。

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