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「お待たせしました」お客様には笑顔のチーフ→部下に作業を丸投げして、休憩室にこもる二面性に気づいた違和感

  • 2026.5.16
「お待たせしました」お客様には笑顔のチーフ→部下に作業を丸投げして、休憩室にこもる二面性に気づいた違和感

忙しい時ほど姿が見えなくなるチーフ

地元のスーパーでパートとして働き始めて、もう十数年になる。

60代になった今も、棚出しからレジのフォロー、在庫確認まで、できる仕事は何でもこなしてきた。

人手不足の日が続いていて、現場が回るかどうかは日々の綱渡りだ。

そんな中で気になり始めたのが、店のチーフの動きだった。

背が高く、一見すると頼りがいのある見た目をしているが、忙しさが頂点に達したころから、妙なパターンが見え始めた。

荷受けが重なり、レジが詰まり、問い合わせが立て続けに入る時間帯。

そういう瞬間に限って、チーフの姿がフロアから消える。

「ちょっと頼んだよ」

そう一言だけ残して、休憩室のドアが静かに閉まる。

残された部下たちは顔を見合わせながら、それぞれの持ち場に散っていく。

私もそのひとりだった。

お客様と女性店員の前では別人になる

だが、休憩室にこもるばかりではない。

チーフが素早く動く場面が、確かにある。

買い物客として来店した顔見知りのお客様に声をかけられた時。

隣の店舗から問い合わせ電話が入った時。

そういう場面では、チーフは誰よりも先に動いた。

「お待たせしました」

声のトーンが、フロアで指示を出す時とはまるで違う。

なめらかで、気持ちいいくらい丁寧だ。

若い女性スタッフの前でもそれは同じだった。

世間話を始め、笑顔を絶やさず、まるで別人のように柔らかくなる。

「さすがチーフですね」と言われるのを待っているような雰囲気さえ漂っていた。

本店への自己紹介や店舗の実績をアピールできる場面では、誰よりも積極的に手を挙げた。

自分の名前が出る場面には必ず顔を出す。それが、このチーフの法則だった。

本性を見抜いた者たちの静かな距離感

しかし長く一緒に働いていれば、本性というものは見えてくる。

特に、働き続けてきた女性スタッフたちはよく分かっていた。

チーフが笑顔で話しかけてきても、適度な距離を保っている。

無愛想にするわけではなく、ただ必要以上に近づかない。

ベテランになるほど、その距離の取り方が自然だった。

「忙しい日ほどいないんだよね、あの人」

ある日、休憩中に誰かがぽつりと言った。

誰も笑わなかった。頷くでもなく、ただ黙って自分のお茶を飲んだ。言葉にしてしまうと、職場の空気が変わってしまうから。

チーフは今日も、顔見知りのお客様に丁寧なあいさつをしている。その声が売り場まで聞こえてくる。私は棚出しの手を止めずに、ただ静かに耳を傾けた。何も言わず、何も変えられず、また今日も現場を回す。それだけだ。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、60代以上・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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