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5本を使い回す、〈マサヒロマルヤマ〉のメガネ。写真と文:安藤夏樹 (編集者) #2

  • 2026.5.13

「キャラが薄いですね」とよく言われる。
なんてことはもちろんない。そういう失礼な知り合いはいないし、そもそもそれなりに覚えられやすい顔をしている。中学生のころには、なぜか職員室で、突然同級生の女子に「ぶさいく」と言われ心の底から落ち込んだ。二十歳の頃、その女子と再会したとき、勇気を出してその話をしたら、彼女は「絶対に言ってない」と笑顔で言い張った。思春期の女子って気まぐれだ。その言葉を引きずった僕の青春時代をどうしてくれるのか。その一言はその後の人生に少なからず影響を与えた。

なかでも、その象徴的存在がメガネだ。ブサイクと言われた時は、人生で最初に買ったメガネをしていた。地元の量販店で買ったもの。確か〈レノマ〉のだったと思う。そのメガネがもっと似合っていたなら、そんなことは言われなかったはず。そう信じた僕は、それ以降、さまざまなメガネと付き合った。大学生になって〈アラン ミクリ〉のメガネをしたら彼女ができた。〈999.9〉のメガネをしていた時は“おしゃれびと”を気取っていた。そして現在愛用しているのが〈マサヒロマルヤマ〉。まだ会社員だったころ、初めてこのブランドのメガネをして出社したとき、何年も一緒に働いている隣の席の女性に「メガネかけるようにしたんですね」と言われた。もちろんそれまでもずっとメガネ顔だった。この人はどこまで僕に関心がないんだ、と心の底から驚いたけど、それでもやっと顔を認識してもらえたことに安堵した。今では5本の〈マサヒロマルヤマ〉が家にある。

このブランドのメガネは左右で違うデザインだったり、ツルが下から出ていたりと、物としてだけ見ると悪目立ちしそうだけれど、そんなことはけっしてない。それでも適度に主張があって、海外の取材などに行くとよく褒められる。僕はメガネの色にはこだわりがあって白や赤は絶対に選ばない。理由は「信用できなそう」だから。色以外で主張できるメガネはそれほど多くないけれど、〈マサヒロマルヤマ〉のメガネはまさにそんな1本だと思う。雑誌「ブルータス」のウェブサイトで出演した時計特集の動画を観た人から、時計以上にメガネの問い合わせが多かったのには少し驚いたけど。

出演した雑誌「ブルータス」の動画でも話題を呼んだメガネは、いま最もよくする1本。
サングラスのフレームもマサヒロ・マルヤマ。左右非対称が特徴的。

編集者 安藤夏樹

出典 andpremium.jp

〈プレコグ・スタヂオ〉代表。日経BPにてラグジュアリー誌編集長を務めた後、2016年に独立。企業のオウンドメディアや広告の制作に加え、独自に出版事業も行う。主な出版物に『熊彫図鑑』(東京903会)、『たしかに熊だが』(著・いなもあきこ)、『サカマキマンガ』(著・坂巻弓華)など。北海道の木彫り熊の魅力を伝える〈東京903会〉を主催。ギャラリー活動も行っており、2026年1月には伊勢丹新宿店1階ザ・ステージにてイベント「プレコグのおもちゃ箱」を開催した。様々なものを買い散らしており、「散財王に俺はなる!」がキャッチフレーズだが、いまだ道半ば。

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