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アンゴラの”幽霊ゾウ”の「意外なルーツ」が判明

  • 2026.5.12
10年間以上追われた”幽霊ゾウ”のルーツが判明。イメージ / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

アフリカ・アンゴラ東部の奥地では、”幽霊ゾウ”の噂が存在していました。

夜にしか現れない珍しい巨大ゾウだったため、そのように呼ばれていたのです。

スタンフォード大学の研究チームは今回、その“幽霊ゾウ”の糞からDNAを解析することで、彼らが既知のどのゾウ集団とも異なる独自の遺伝的特徴を持つことを突き止めました。

この研究内容は、2026年5月5日にスタンフォード大学(Stanford University)の『公式ニュース』で紹介されました。

目次

  • 10年以上追われた「幽霊ゾウ」とは?
  • DNAが暴いた「意外なルーツ」とは

10年以上追われた「幽霊ゾウ」とは?

今回の研究の発端となったのは、保全生物学者スティーブ・ボイス氏による長年の探索でした。

舞台となったのは、アンゴラ東部の高地湿地「Lisima Ly Mwono(リシマ・リ・ムウォノ)」です。

この地域は極めてアクセスが困難で、調査隊は川を渡るためにバイクを担いで移動しなければならないほどの秘境でした。

その場所には以前から、「巨大な夜行性ゾウがいる」という話が伝わっていましたが、研究者たちは長年その姿を直接確認できませんでした。

地元住民だけが知る“夜の巨人”。

それが「ghost elephants(幽霊ゾウ)」と呼ばれる理由でした。

それでも2024年、ついにモーションセンサー式カメラがその姿を撮影することに成功します。(画像はこちら

しかし、謎は「本当にいたのか」だけでは終わりませんでした。

次に浮かんだのは、「このゾウたちは、いったいどこから来たのか?」という問いです。

その答えを探るため、ボイス氏はスタンフォード大学のドミトリ・ペトロフ教授らに協力を依頼しました。

ただし、調査には大きな壁がありました。

研究者が野外で直接観察すること自体が、非常に難しかったのです。

捕獲して血液や組織を採取する方法は現実的ではなく、保護の観点からも望ましくありませんでした。

そこで研究チームが利用したのが「糞便DNA解析」です。

彼らはゾウの糞の“外側”に注目しました。

糞の表面には、腸壁から剥がれ落ちた細胞を含む粘液層が付着しています。

この部分には、ゾウ自身のDNAが比較的多く含まれているのです。

研究チームは回収した糞サンプルを「bead basher」と呼ばれる装置に入れました。

これは、サンプル中の細胞を壊してDNAを取り出しやすくする装置です。

その後、抽出されたDNAはシーケンサーによってゲノム全体の解析に成功。

この解析結果は、研究者たちの予想を大きく裏切ることになりました。

DNAが暴いた「意外なルーツ」とは

研究チームは当初、このゾウたちは地理的に近いボツワナ北部・オカバンゴデルタ(Okavango Delta)周辺のゾウ集団に近いだろうと予想していました。

ところが実際には、解析されたDNAは数百マイル南に位置するナミビアのゾウ集団に最も近い特徴を示していたのです。

これは研究者たちにとって予想外の結果でした。

さらに重要だったのは、この“幽霊ゾウ”が、既知のどの解析済みゾウ集団とも異なる独自性を持っていたことです。

つまり彼らは、これまで十分に調べられていなかった独自性の高い集団である可能性があります。

なぜナミビアのゾウに近い遺伝的特徴を持つのかは、今後の大きな謎として残されています。

この発見は保全の観点からも重要です。

この集団がどれほどの規模で、どのように周囲のゾウ集団と関係しているのかを知ることは、保護の方針を考えるうえで大きな手がかりになります。

ちなみに研究者たちは、このゾウたちが1950年代にアンゴラで殺された伝説的巨大ゾウ「Henry(ヘンリー)」の子孫ではないかという仮説にも注目しています。

ヘンリーは、記録上最大の現生陸上哺乳類とされるゾウで、その遺骸は現在スミソニアン国立自然史博物館に収蔵されています。

しかし現時点では、幽霊ゾウとの直接的な遺伝的つながりは確認されていません。

現時点でヘンリーから得られている確かな遺伝情報は、母系をたどるミトコンドリアDNAに限られています。

そして解析結果では、幽霊ゾウとの一致は見られませんでした。

ただし研究者たちは、今後さらにDNAデータが集まれば、この謎にも決着がつく可能性があるとしています。

今回の研究では、糞便DNAから個体識別、性別判定、血縁関係の推定まで可能であることも示されました。

研究チームはこれを利用して、今後は集団規模の推定も進めていく予定です。

人目を逃れてきた”幽霊ゾウ”も、最新のゲノム科学からは完全には姿を隠しきれなかったようです。

参考文献

Stanford science reveals genetically distinct ‘ghost elephants’
https://news.stanford.edu/stories/2026/05/ghost-elephants-dna-research

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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