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赤ちゃん、大人と同じ美的感覚をもっている可能性【年々研ぎ澄まされていく】

  • 2026.5.5
赤ちゃんは「大人が美しいと感じるもの」を見つめる / Credit:Canva

「きれいだ」と感じる感覚は、いつから生まれるのでしょうか。

それは経験や文化の中で身につくものだと考えられがちです。

しかしフランスのグルノーブル・アルプ大学(UGA)の研究チームによる最新の研究は、この感覚がかなり早い時期から芽生えている可能性を示しました。

生後わずか4か月の赤ちゃんが、大人が「美しい」と評価した動きに、同じように長く注意を向けていたというのです。

この研究は2026年4月22日付で、『Proceedings of the Royal Society B』に掲載されました。

目次

  • 赤ちゃんは「大人が美しいと感じるもの」を見つめる
  • 「美しさ」への反応は、年齢と共に研ぎ澄まされていく

赤ちゃんは「大人が美しいと感じるもの」を見つめる

「美しさ」という感覚は、文化や経験によって形づくられるものだと考えられがちです。

絵画や風景、デザインへの評価には、その人の知識や育った環境が大きく関わるからです。

しかし一方で、これまでの研究では、生まれて間もない赤ちゃんが「大人が好む顔」や「曲線的な形」「対称的な模様」「鮮やかな色」などを長く見つめることが報告されてきました。

このことは、「美的感覚の一部は、文化を学ぶ前から人間に備わっているのではないか」という疑問につながります。

そこで研究チームは、経験や知識の影響をできるだけ減らすために、「動く点のパターン」を使いました。

これは、白い点が画面上でさまざまに動く抽象的な映像です。点が群れのように動いたり、渦のように広がったり、規則的に移動したりします。

顔や風景、動物のような意味のある映像ではないため、赤ちゃんが過去の経験から解釈する余地を小さくできます。

複数の「点の動き」パターンで美的感覚を調べる / Credit:David Méary(UGA)et al., Proceedings of the Royal Society B(2026), CC BY 4.0

実験は2段階で行われました。

まず、別の成人グループに動く点のパターンを2つずつ見せ、「どちらがより美しいか」を選ばせました。

これによって、「この組み合わせでは、どちらの動きがより美しいと選ばれやすいか」という相対的な指標が生まれます。

次に、生後4か月から24か月までの乳児と成人に、同じパターンの組み合わせを5秒間見せました。

もちろん赤ちゃんに「どちらが美しい?」と聞くことはできません。

そこで研究者たちは視線追跡装置を使い、赤ちゃんがどちらの動きをどれだけ長く見ているかを測定しました。

乳児研究では、「どちらを長く見るか」は、その対象にどれだけ注意を向けたかを知る手がかりになります。

その結果、大人が「美しい」と評価した動きほど、赤ちゃんも長く見つめる傾向があると分かりました。

これは、赤ちゃんも大人と同じ美意識を持っている可能性を示しています。

そしてこの感覚は、年齢と共に変化していきました。この詳細について、次項で見ていきましょう。

「美しさ」への反応は、年齢と共に研ぎ澄まされていく

今回の研究で特に面白いのは、赤ちゃんが何を長く見たかだけでなく、視線の変化を時間ごとに細かく調べた点です。

映像が表示された直後、とくに若い乳児では、規則的で単純な動きをするパターンにまず注意が向きやすい傾向が見られました。

これは、視覚的にわかりやすく、処理しやすいものに自然と目が向く反応だと考えられます。

しかし、その後しばらくすると、視線はより複雑で変化に富んだ動きのパターンへ移っていきました。

そして、この段階で長く見られやすかったのは、大人から相対的に「美しい」と選ばれやすかった動きでした。

たとえば、点が鳥や魚の群れのように動くものや、渦のように広がるものなどが、より美しい動きとして評価されていました。

つまり、最初は「わかりやすい動き」に目が向き、その後に「大人が美しいと感じる動き」へ注意が移っていくという、二段階の反応が見られたのです。

さらに、この「美しいと評価された動き」への反応が現れるタイミングは、年齢によって変わっていました。

生後4か月児では約1.8秒後に現れたのに対し、年齢の高い群ほど早く現れ、24か月児では約0.5秒後、成人では約0.4秒後に確認されたのです。

この結果は、美しさに関係する注意の仕組み、あるいはその土台となる視覚的な好みが、かなり早い時期から働いている可能性を示しています。

そして成長とともに、その反応がより素早く現れるようになるのかもしれません。

もちろん、研究者たちはこの結果だけで、「赤ちゃんが大人と全く同じ美的感覚を持っている」と断定しているわけではありません。

赤ちゃんが複雑な動きに引きつけられた理由としては、美しさだけでなく、新しさ、情報量の多さ、興味を引く動きへの反応なども考えられます。

また、成人の美的判断には知識や文化的背景が大きく関わるため、赤ちゃんと成人がまったく同じ意味で「美」を共有しているとは言えません。

それでも今回の研究は、人間の美的感覚の土台になるような視覚的な好みが、生後数か月の時点ですでに働いている可能性を示した点で重要です。

今後は、自然界の動きを表す点のパターンと、そうではない人工的な動きの違いを比べたり、ヒト以外の霊長類にも同じような好みがあるのかを調べたりする研究が予定されています。

私たちが「きれいだ」と感じる感覚は、言葉や知識よりも前に、目が自然と引きつけられるところから始まっているのかもしれません。

参考文献

Babies may share adults’ sense of beauty, and it appears to sharpen with age
https://phys.org/news/2026-05-babies-adults-beauty-sharpen-age.html

元論文

Do infants have a sense of beauty? A study using kinetic dot displays
https://doi.org/10.1098/rspb.2026.0070

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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