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常連の70代女性「実はね、最近よく転ぶの」おしゃべりな女性の異変…薬剤師が思わず“患者家族に連絡”した、違和感の正体とは…?

  • 2026.6.5
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

カウンター越しの数分間。そのわずかな時間の中で、薬剤師は患者さんの小さな変化を見逃さないように目を凝らしています。

今回は、現場で「いつもと違う」と感じた瞬間と、そこから命や健康を守るためにできることをお伝えします。

薬剤師は"最後の砦"になることがある

診察室では気づかれなかった異変が、薬局の窓口で初めて表に出ることがあります。

短い診察時間では拾いきれない情報…睡眠の質、食欲、ご家族との関係などが、世間話の延長で自然と出てくることも多いのです。

私たちは薬の説明をしながら、声のハリ、目の動き、手の震え、お財布を取り出す仕草まで観察しています。「いつもと違う」を察知するためのアンテナを、常に張り巡らせているのです。

プロの目が捉えた"いつもと違う"瞬間

長年カウンターに立っていると、忘れられない場面がいくつもあります。ここでは特に印象に残っている二つの出来事をお伝えします。

話し方のテンポが変わった、70代の常連さん

毎月、降圧剤を受け取りに来てくださる70代の女性がいらっしゃいました。

いつもおしゃべりが大好きで、お孫さんの話を楽しそうにしてくださる方です。ところがある日、いつもと様子が違いました。言葉がふっと途切れたり、同じ話を繰り返したり、お会計の小銭を数えるのに時間がかかったり。

一つひとつは些細なことですが、積み重なると違和感がありました。

「最近、体調はいかがですか?」とそっと尋ねると、「実はね、最近よく転ぶの。年のせいだと思って黙ってたんだけど」と打ち明けてくださいました。

ご本人は加齢のせいだと思い込まれていましたが、話し方の変化と転倒というキーワードが頭の中でつながり、私はご家族に連絡を取らせていただきました。

後日、検査の結果、軽い脳の異常が見つかったとのこと。早期に発見できたことで、大事に至らずに済みました。

「あのとき声をかけてくれて本当にありがとうございました」と娘さんから直接お礼を言われたときには、薬剤師としてこの仕事を続けてきてよかったと心から思いました。

何気ないため息に隠れていた、心のSOS

40代の女性で、お子さまの花粉症の薬を毎年取りに来られる方がいらっしゃいました。

明るくて快活な印象の方だったのですが、ある春、薬を受け取る際の表情がいつもより硬く、ふと小さなため息をつかれたのです。

「お疲れですか?」と何気なくお声がけしたところ、最初は「大丈夫です」と笑顔を作られました。けれどお会計の際に「最近、夜眠れなくて。朝も起きられないんです」とぽつり。さらに伺うと、食欲もなく、何をしても楽しめない日が続いているとのことでした。

これは単なる疲れではないかもしれない。そう感じた私は、押しつけにならないよう気をつけながら、「もし続くようでしたら、心療内科という選択肢もありますよ」とパンフレットを一枚お渡ししました。

半年ほど経った頃、その女性が「あのとき勧めてくれて助かった。きちんと治療を受けて、ようやく眠れるようになりました」と笑顔で報告に来てくださったのです。

何気ない一言、小さなため息。本人も気づいていないSOSが、そこに潜んでいることがあります。

読者自身や身近な人を守るために

最後に、日常で活かせるちょっとしたヒントをお伝えします。

まず、「かかりつけ薬局」を一つ決めておくこと。同じ薬局に通い続けることで、薬剤師はあなたの普段の様子を把握でき、変化に気づきやすくなります。複数の薬局を使い分けていると情報が分散し、せっかくのサインも見逃されがちです。

そして、「はっきりした症状ではないけれど、なんとなく調子が悪い」

そんな曖昧な感覚こそ、ぜひ口に出してみてください。私たちはその一言から、隠れた不調のヒントを探ることができます。気になることは話してみる。

それが、薬局を最大限に活用するいちばんのコツだと思います。


ライター:下田篤男

京都大学薬学部総合薬学科を卒業後、調剤薬局やドラッグストアグループで薬剤師として勤務してきました。総合病院の門前店舗では管理薬剤師を務め、たくさんの患者さんと向き合う日々の中で、「薬を渡す」だけではない、人と人との関わりの大切さを実感しています。現在は薬剤師として現場に立ちながら、医療記事の執筆・編集や薬局経営コンサルタントとしても活動中。読者の皆さまに、薬局がもっと身近で頼れる場所になるような情報をお届けしていきたいと思っています。


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