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ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライトら巨匠の傑作!『ブレードランナー』や『007』など映画で楽しむモダニズム建築

  • 2026.4.30

特集上映「ル・コルビュジエとドーシ インドのモダニズム」として5月1日(金)から公開される『ユートピアの力』と『誓い 建築家B・V・ドーシ』。これらはインドの精神性や生活様式と西洋モダニズムが融合した建築物を通じて、その土地や人物に宿る哲学を紐解いていくドキュメンタリーだ。

【写真を見る】映画で楽しめるモダニズム建築の数々(『誓い 建築家B・V・ドーシ』)

【写真を見る】映画で楽しめるモダニズム建築の数々(『誓い 建築家B・V・ドーシ』)
【写真を見る】映画で楽しめるモダニズム建築の数々(『誓い 建築家B・V・ドーシ』)

20世紀初頭に機能主義の建築として成立したモダニズム建築といえば、装飾を極力排した無機質な印象ながら強烈な存在感も放っており、高い人気を誇る。そのなかでも巨匠によるマスターピースは、映画やドラマで使われることもしばしば。そこで今回は、映画に登場するモダニズム建築を集めてみた。

エニス邸(フランク・ロイド・ライト)

『ユートピアの力』の題材であるル・コルビュジエと並び、モダニズム建築の代表格といえばフランク・ロイド・ライト。帝国ホテルや旧山邑家住宅など日本にも作品を残しており、抜群の知名度を誇る。

デッカードの自宅としてエニス邸が使用されている(『ブレードランナー』) [c] Warner Bros./courtesy Everett Collection
デッカードの自宅としてエニス邸が使用されている(『ブレードランナー』) [c] Warner Bros./courtesy Everett Collection

彼の作品としてまず紹介したいのが、幾何学模様が彫られたブロックが積み重ねられた“テキスタイル・ブロック住宅”シリーズの一つ“エニス邸”。近未来感と同時に古代的な雰囲気も感じるユニークなデザインが特徴的なこの家は、『ブレードランナー』(82)で主人公デッカード(ハリソン・フォード)が暮らすアパートとして使用。さらにリドリー・スコット監督は『ブラック・レイン』(89)でも、関西ヤクザ界のドンである菅井(若山富三郎)の豪邸としてエニス邸を使用している。

リドリー・スコット監督のお気に入りとして『ブラック・レイン』でも使用されている [c] Paramount Pictures /Courtesy Everett Collection
リドリー・スコット監督のお気に入りとして『ブラック・レイン』でも使用されている [c] Paramount Pictures /Courtesy Everett Collection
幾何学模様的なブロックを積み重ねたデザインが特徴的(『ロケッティア』) [c]Walt Disney/courtesy Everett Collection
幾何学模様的なブロックを積み重ねたデザインが特徴的(『ロケッティア』) [c]Walt Disney/courtesy Everett Collection

このほかにも、エニス邸登場映画では最古と思しき『フィメール』(39)から、家のいかがわしさがホラーテイストとマッチしたウィリアム・キャッスル監督の『地獄へつゞく部屋』(59)、『イナゴの日』(75)、『ロケッティア』(91)、デイヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』(01)など数々の映画で重宝されてきた。

マリン郡シビックセンター(フランク・ロイド・ライト)

同じくライト建築で映画によく使われているのが、カリフォルニア州の“マリン郡シビックセンター”。郡庁舎、裁判所、図書館、郵便局などが集まった施設は、宇宙船を想起させる見た目をしており、外壁や窓に用いられた円のモチーフから内部までレトロフューチャー的なデザインとなっている。

近未来的な雰囲気が作品にマッチしている(『ガタカ』) [c] Columbia/courtesy Everett Collection
近未来的な雰囲気が作品にマッチしている(『ガタカ』) [c] Columbia/courtesy Everett Collection
円をモチーフにした建物となっている(『ガタカ』) [c] Columbia/courtesy Everett Collection
円をモチーフにした建物となっている(『ガタカ』) [c] Columbia/courtesy Everett Collection

このユニークな建物で撮影されたのが、アンドリュー・ニコル監督による『ガタカ』(97)。イーサン・ホーク演じる主人公たちが働くガタカ社の多くの部分をシビックセンターで撮影したため、SF映画でありながら、大掛かりなセットを組む必要がなかったようだ。

ジョージ・ルーカス作品にも影響を及ぼしている(『THX 1138』) [c]Everett Collection/AFLO
ジョージ・ルーカス作品にも影響を及ぼしている(『THX 1138』) [c]Everett Collection/AFLO

またジョージ・ルーカス監督も『THX 1138』(71)をシビックセンターで撮影。スカイウォーカーランチから20分の場所に位置する身近な存在であり、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(99)に登場するナブーのシード宮殿や『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(18)のドライデン・ヴォス(ポール・ベタニー)のヨットの内装にも影響を与えているとか。

ソロモン・R・グッゲンハイム美術館(フランク・ロイド・ライト)

おまけにもう一つ、ライトの代表作として挙げたいのが、ニューヨーク・マンハッタンに位置する“ソロモン・R・グッゲンハイム美術館”だ。

建物全体が螺旋となっている構造が特徴的で一度目にしたら忘れられないようなインパクト抜群の建物は、ウォルター・マッソー主演の『サボテンの花』(69)、ロバート・レッドフォード主演の『コンドル』(75)など古くから数々の作品の舞台となってきた。

グッゲンハイム美術館のレプリカを作り撮影された(『ザ・バンク 堕ちた巨像』) [c]Columbia Pictures/courtesy Everett Collection
グッゲンハイム美術館のレプリカを作り撮影された(『ザ・バンク 堕ちた巨像』) [c]Columbia Pictures/courtesy Everett Collection

なかでも、螺旋構造を生かしているのがクライヴ・オーウェン主演のサスペンス『ザ・バンク 堕ちた巨像』(09)の美術館での銃撃戦で、対面や上下など螺旋構造のあらゆるところから銃弾が飛び交うショットは緊迫感抜群。なおこのシーンは巨大なレプリカセットを作って撮影されたという。

また『メン・イン・ブラック』(97)では、エドワーズ刑事(ウィル・スミス)がエイリアンと初めてエンカウントする一幕で登場。エイリアンが壁をよじ登るのに対し、それを追うエドワーズが内部の螺旋通路を爆走するという、建物を存分に生かした見応えのあるシーンとなっていた。

シーツ=ゴールドステイン邸(ジョン・ロートナー)

ライトの影響を受けたモダニズム建築家がジョン・ロートナー。彼が手掛けた個性的な住宅のなかでも、幾何学模様のようなテーブルとソファ、全面ガラス張りのリビングが印象的な“シーツ=ゴールドステイン邸”は、映画やMVなどで繰り返し使用されてきた。

『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』(03)では、アレックス(ルーシー・リュー)の父親(ジョン・クリーズ)の家として登場するほか、コーエン兄弟の『ビッグ・リボウスキ』(98)では騒動の糸を引くポルノ界の大物トリホーン(ベン・ギャザラ)の豪邸として、悪役像を際立てるのに一役買っている。

ちなみに、ロートナーが手掛けた住宅の一つ“エルロッド・ハウス”は、『007/ダイヤモンドは永遠に』(71)で、ボンド(ショーン・コネリー)が敵と格闘を繰り広げる大富豪ウィラード・ホワイト(ジミー・ディーン)宅として使用されるなど、ロートナー建築はその豪華さから悪役の家として登場することが多いようだ。

ノース・クリスティアン・チャーチ(エーロ・サーリネン)

頂点に十字架をこしらえた尖塔が目を引くノース・クリスティアン・チャーチ(『コロンバス』) [c]Superlative Films/courtesy Everett Collection
頂点に十字架をこしらえた尖塔が目を引くノース・クリスティアン・チャーチ(『コロンバス』) [c]Superlative Films/courtesy Everett Collection

巨匠たちが手掛けたモダニズム建築の宝庫として知られるインディアナ州の小さな田舎町コロンバス。この場所を舞台にしたコゴナダ監督の『コロンバス』(17)は、建築学者の父が講演先で倒れたという報せを受けコロンバスに飛んだ主人公のリー(ジョン・チョー)が、街で知り合った女性と建築を巡るという内容で、多くの個性的な建物が登場する。

そのなかでも“ノース・クリスティアン・チャーチ”は、エーロ・サーリネンが手掛けた最後の建築物で、天高くそびえる尖塔に対し低く広がった屋根のコントラストが特徴的だ。

映画では建築物を次々と巡っていく(『コロンバス』) [c]Superlative Films/courtesy Everett Collection
映画では建築物を次々と巡っていく(『コロンバス』) [c]Superlative Films/courtesy Everett Collection

このほかにも、シンプルながら美しい“ミラー・ハウス”や“アーウィン・カンファレンス・センター”、エーロの父親エリエルが手掛けたファースト・クリスチャン協会、エドワード・チャールズ・バセットが設計した“コロンバス・シティ・ホール”、マイケル・ヴァン・ヴァルケンバーグによる“ミル・レース・パーク”の展望タワー…と多くの建築を楽しめる。

シーグラム・ビルディング(ミース・ファン・デル・ローエ)

“近代建築の3大巨匠”として挙げられるミース・ファン・デル・ローエ。“ファンズワース邸”、“トゥーゲントハット邸”などで知られており、代表作“バルセロナ・パビリオン”に焦点を当てて、彼の思想に迫っていくドキュメンタリー『ミース・オン・シーン』(18)なども作られるほどの権威だ。

『ティファニーで朝食を』ではシーグラム・ビルディング前の広場で主人公たちが話し込む場面が登場する [c]Everett Collection/AFLO
『ティファニーで朝食を』ではシーグラム・ビルディング前の広場で主人公たちが話し込む場面が登場する [c]Everett Collection/AFLO

そんな彼の代表作が“シーグラム・ビルディング”。ニューヨークのミッドタウン、52丁目と53丁目のパーク街に立つ高層ビルは、ガラス窓とブロンズの枠が繰り返される合理的なデザインが特徴的で、アメリカ合衆国国家歴史登録財にも指定されている。

ニューヨークの中心地という場所柄もあり、オードリー・ヘプバーンが広場の縁石に腰かける『ティファニーで朝食を』(61)を筆頭に『赤ちゃんはトップレディがお好き』(87)、『大都会の女たち』(59)、『ミザリー』(90)、『3人のゴースト』(88)など多くの作品に登場してきた。

ル・コルビュジエが手掛けたインドの都市とは?

ル・コルビジェが担当することになったチャンディーガルの都市計画に迫る『ユートピアの力』
ル・コルビジェが担当することになったチャンディーガルの都市計画に迫る『ユートピアの力』

そして3大巨匠のもう一人として知られるのが、ル・コルビュジエだ。南米唯一のコルビュジエ建築として知られるブエノスアイレスの“クルチェット邸”で巻き起こる騒動を描いたアルゼンチン映画『ル・コルビュジエの家』(09)は、建築そのものが物語の題材となっている。

さらに『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』(15)では、コルビュジエが嫉妬したといわれるアイリーン・グレイが手掛けたE.1027をめぐる確執が描かれ、彼がE.1027の近くに建てたカプ・マルタンの休暇小屋、通称“キャバノン”も登場する。

キャピトル・コンプレックスをはじめとするモダンな街並みが登場する(『ユートピアの力』)
キャピトル・コンプレックスをはじめとするモダンな街並みが登場する(『ユートピアの力』)

そんなコルビュジエの仕事のなかでも異彩を放っているのが、インド北部の計画都市チャンディーガルだ。

1947年、イギリス領インド帝国はイギリスの支配を脱し、インドとパキスタンとして分離独立。パンジャーブ州は両国に分割され、州都ラホールはパキスタンに帰属。インド側は州都建設を迫られ、初代首相のネルーが望む過去の伝統に縛られない、未来への信条と民主主義を象徴する都市の建設は紆余曲折を経て、コルビュジエに託されることになった。

ドキュメンタリー『ユートピアの力』は、西洋のモダニズムとインドの精神性、風土が融合したこのチャンディーガルという都市にカメラを向け、建築物の歴史を追いながら魅力や課題について浮き彫りにしていく。

インタビューを通じてチャンディーガルの魅力を紐解いていく(『ユートピアの力』)
インタビューを通じてチャンディーガルの魅力を紐解いていく(『ユートピアの力』)

高等裁判所、行政庁舎、オープン・ハンド・モニュメントなどが集まったコルビュジエによる“キャピトル・コンプレックス”を中心に、モダンな建物や街並みが映しだされ、インドのイメージを覆すような風景は新鮮だ。

オープン・ハンド・モニュメントなど個性が光る(『ユートピアの力』)
オープン・ハンド・モニュメントなど個性が光る(『ユートピアの力』)

インド人建築家ドーシが手掛けた作品群

そのコルビュジエに学んだインド人建築家にフォーカスしたのが、特集上映のもう1作『誓い 建築家B・V・ドーシ』。2018年にはインド人初のプリツカー賞に輝いたバルクリシュナ・ヴィタルダス・ドーシが、コルビュジエとの作品や自身が手掛けた建築物を訪れ、哲学や制作の裏側などキャリアを語る。

大学などドーシが手掛けた建物の数々には目を奪われる(『誓い 建築家B・V・ドーシ』)
大学などドーシが手掛けた建物の数々には目を奪われる(『誓い 建築家B・V・ドーシ』)

コルビュジエとの仕事となったアーメダバードの“繊維業会館”をはじめ、“インド学研究所”、“CEPT大学”、“インド経営大学”など、ドーシによる個性豊かなモダニズム建築の数々を拝むことができる建築好きにはたまらない1作だ。

制作の裏側などをドーシ自身が語りながらキャリアを振り返る(『誓い 建築家B・V・ドーシ』)
制作の裏側などをドーシ自身が語りながらキャリアを振り返る(『誓い 建築家B・V・ドーシ』)

丹下健三が手掛けたパークハイアット東京の無機質さ、異国の地でもの寂しさを象徴する『ロスト・イン・トランスレーション』(03)など、見た目のかっこよさはもちろん、哲学が宿っているからこそ、映画の舞台として用いられてきたモダニズム建築。そのマスターピースの魅力を、これらの映画で楽しんでみてほしい。

文/サンクレイオ翼

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