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「とてつもなく変でおもしろい映画になっています」佐藤二朗の“原寸大右手”もお披露目された『名無し』完成披露試写会

  • 2026.4.28

俳優・脚本家・映画監督としても活躍する鬼才、佐藤二朗が初の漫画原作を手掛け、脚本・主演も務める映画『名無し』(5月22日公開)。その完成披露試写会が4月27日にイイノホールにて開催された。佐藤二朗、丸山隆平、佐々木蔵之介らキャスト陣と城定秀夫監督が登壇し、撮影時のエピソードや、映画にちなんだトークを繰り広げた。

【写真を見る】佐藤二朗の手をかたどって制作された「“名無し”の原寸大右手」をお披露目!

佐藤二朗と丸山隆平は息の合った掛け合いを展開
佐藤二朗と丸山隆平は息の合った掛け合いを展開

佐藤二朗が映画にすべく執筆するが、その過激なテーマと特殊な世界観ゆえにお蔵入り寸前となっていたオリジナル脚本が編集者の目に留まり、永田諒の作画によって漫画化した「名無し」。数奇な運命を背負い“名前のない怪物”と化した男の希望と絶望、そして狂気を描破するこのサイコバイオレンスは好評を博し、“映像化不可能”の烙印を覆し、昨年10月、瞬く間に映画化が決定した。

自ら生み出したキャラクター“名無し”こと山田太郎を演じるのは、『爆弾』(25)で冴えない中年男の皮を被った知能犯・スズキタゴサク役を怪演し、第49回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞の受賞をはじめ、様々な映画賞を席巻している佐藤二朗。本作では、得体の知れない人間を演じさせたら右に出る者はいない唯一無二の個性と、セリフを徹底的に排除し、これまでのパブリックイメージを真っ向から覆す“静”の狂気を体現している。

共演には、近年俳優としての評価を高め続ける丸山隆平、タレントの枠を超え女優、プロデューサー、実業家としても活躍するMEGUMI、同じ演劇畑出身の佐藤の熱望に応えて駆けつけた佐々木蔵之介らが名を連ね、『悪い夏』(25)、『嗤う蟲』(25)などで知られる当代屈指の映画職人・城定秀夫監督が、劇中に仕掛けられた謎とタブーに潜む深い闇をえぐり出す。

佐藤二朗と佐々木蔵之介によるやり取りも笑いを誘う
佐藤二朗と佐々木蔵之介によるやり取りも笑いを誘う

そんな“名もなき怪物”の魂の叫びが日本を震撼させること間違いなしの『名無し』だが、ひと足早く本作を観た感想を聞かれた佐藤は、5年かけて練り上げた企画であり、お蔵入り寸前から公開にこぎつけたことは感慨深いと話し、試写直後の城定監督とのやり取りを明かした。「試写で観て、本当にすばらしいと思って。城定監督に、本編の山田太郎だったら決してできない右手での握手を求めたんですけど、ふだんなら浮き足立ったことはいっさい言わない監督が珍しく、『ほかにない世界を描いた作品になっています』とおっしゃって。僕自身もそうだよなと思うので、今日こうして、大勢の方に観ていただいて、皆さんがどんな感想をもたれるか楽しみで仕方がないです」。

触れたものを消す力を持つ“名無し”こと山田太郎を演じる佐藤二朗
触れたものを消す力を持つ“名無し”こと山田太郎を演じる佐藤二朗

続いて丸山は、血や暴力描写が好きだが、それ以上に人間ドラマの奥行きこそ本作の魅力だと話す。「実は僕、血が出たり、人がボコボコになる映画が大好物なんですよ。とはいっても、ただ単に暴力描写があるだけじゃなくて。奥行きというか、ちゃんと人間ドラマがあるうえでのそういった作品が好きなんですね。作者の方の内側にある内臓を引きずり出してくるような、血反吐を吐きながら作り出したような、そういったドラマに心を動かされるんです。『名無し』はまさにそういった感じで、なんとも言えない後味というか、余韻のある作品になっていて、そんな作品に出られたことを本当にうれしく思っています。こういったジャンルの映画は苦手だな…という方にも、暴力だけでなく、その先には人間ドラマとしてのおもしろさがありますので、食わず嫌いをせずにぜひ観ていただきたいです」。

山田太郎の名付け親である照夫を演じる丸山隆平
山田太郎の名付け親である照夫を演じる丸山隆平

一方の佐々木は、本作の鑑賞後、フィクションでありながら生々しい現実味が残る体験をしたと明かす。「僕自身が役者をやっているから、映画を観ても普通に楽しむことがなかなかできなくて。このシーンどうやって撮ってるのかな…とか、ここで長回しをするんだ…とか、あれこれ考えながら観てしまって、なかなか作品の世界に没入できないんですね。でもこの作品は、非常にリアルといいますか。脚本を読んで、明らかにフィクションだとわかっているのに、なにより自分自身も出演しているのに、観終わったあと、生暖かい現実味を帯びた感触がそこにはあって。根源的なところで、刺されたような、殴られたような衝撃があって、それがあるからこそ、ここまでリアルに感じられたんじゃないかなと思っています。僕自身にとっても、いままで観たことのない映画でしたね」。

連続殺人事件の容疑者である山田太郎を追う刑事・国枝を演じる佐々木蔵之介
連続殺人事件の容疑者である山田太郎を追う刑事・国枝を演じる佐々木蔵之介

城定監督は、佐藤の熱意と独創性に惹かれ、本作の監督を引き受けたそうで、完成した作品を観た際には自身でも「ほかにない、変でおもしろい映画になった」と感じたという。「脚本自体もすごくおもしろかったし、なにより二朗さんの熱量がものすごくて。あの熱があったからこそ、こんなに変でおもしろい映画の企画を通すことができたんだろうなと感じています。僕の主導でやっていたら、絶対に通っていないでしょうね。そういった経緯もあって、やっぱり完成したことには喜びしかないですし、現場の雰囲気もすごく楽しかったので、こういった形で皆様にお披露目できることを本当にうれしく思っています。出来栄えに関しても、すごく変でおもしろい映画に仕上がったな…と自負しております」

『悪い夏』『嗤う蟲』など、多数の作品を手掛ける城定秀夫監督
『悪い夏』『嗤う蟲』など、多数の作品を手掛ける城定秀夫監督

こうしたトークに続き、壇上では“名もなき怪物”こと山田太郎の「右手で触れると相手が消える」能力にちなんで、登壇者たちが“消し去ってしまいたいこと”を告白するコーナーが展開。佐藤からは「五十肩の痛み」、丸山からは「自分の弱さ」、佐々木からは「飲みすぎた翌朝に残る血中アルコール濃度」、そして城定監督からは「この能力は意外と使い道が難しいので、法に触れない有効利用を考えるのもおもしろいかもしれないですね。僕だったら無難に、部屋のゴミを消したいです」とのコメントが飛び出した。

さらに壇上では、実際に佐藤の手をかたどって制作された、「“名無し”の原寸大の右手」のお披露目コーナーも展開。実物を目にした佐藤は「収録の合間に30分くらいかけて型を取って作ってもらったものなんですけど、あれだけやっておいて、じつはぜんぜん別の人の右手です…ってことはないよね?」とコメント。間違いなく、佐藤本人の右手を再現したものだと伝えられ、改めて感想を聞かれると、「う~ん、僕の右手ですね…。なんといいますか、それ以外に言いようがないです。あ、でもね、シワから指紋まで、本当に細かく再現されていて。これはなかなかすごいですね」と答え、会場を湧かせた。

【写真を見る】佐藤二朗の手をかたどって制作された「“名無し”の原寸大右手」をお披露目!
【写真を見る】佐藤二朗の手をかたどって制作された「“名無し”の原寸大右手」をお披露目!

そうして最後に、佐藤から締めの挨拶があり、大盛況のうちにステージイベントは終了。「本作の見どころやテーマについて、たくさんの方に聞かれるし、それにお答えするのも僕らの仕事の一部ではあるんですけど、この作品に関して、あまりそれを言葉にしたくなくて。とにかく劇場で観ていただきたいです。監督の言葉をお借りしますが、人間の根源的な部分、下手をすれば人間の存在そのものを根源から揺るがしかねない、とてつもない変な映画になっていると思いますので、今日観てくださった皆様には感想をですね、賛否のどちらでもいいので、SNSなどでどんどん書いて、広めていっていただけると嬉しいです。そして興味を持ってくださった皆様には、ぜひ劇場まで足を運んでいただいて、本作をご覧になっていただけますと幸いです」。

取材・文/ソムタム田井

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