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京都、そして世界を知る、元経営コンサルタントが俯瞰。古都に息づく、質の高い生活をリスペクト

  • 2026.4.30

その動向の一つ一つが、世界から注目を集める都市、京都。ラグジュアリーホテルが相次いで誕生する一方で、京都の文化を支えてきた寺社仏閣やガストロノミーの世界も新たな模索を始めています。2026年春、「その先」の姿を見せ始めた京都から目を離すことができません。

3月22日に開業した最新ホテル「カペラ京都」。館内には、隈 研吾氏が手掛けた唐破風屋根の向こうに広がる中庭を内包し、壮大な空間演出に目を見張ります。 Kunihiro Fukumori

今回は、京都で大学生活を過ごし、現在も東京と京都を行き来する生活を送る元経営コンサルタントの御立尚資さんが考える「京都ツーリズムのこれから」をご紹介します。

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<Profile>
御立尚資(みたちたけし)

1957年生まれ。京都大学文学部卒。ハーバード大学経営大学院MBA。ボストン コンサルティング グループ日本代表を経てグローバル経営チームの一員を長年務める。現在は京都大学で教鞭を執る傍ら、熟成日本酒文化を再興するプロジェクト「熟と燗」の代表取締役を務める。大原美術館理事や西芳寺(苔寺)顧問でもある。

観光のトレンドは身体性のある楽しみ

両足院では、新しい拝観の形として、現代アートの展覧会が積極的に開催されています。 Hearst Owned

そこで暮らす人の生活の質の高さを感じる街。それが京都の街の特徴のひとつです。京都は、主人公が権力者ではなく町衆だった歴史が長く続いた街です。経済を担った町衆が中心だったために、おのずと文化を伴う生活の質が高くなってきました。伝統工芸だけでなく、お料理屋さんや和菓子屋さんも、こうした町衆が贔屓にすることで、質が高くなっていきました。

世界遺産に認定された、西芳寺の美しいこけ庭。 Akira Nakata

今でも身近なパン屋さんや喫茶店。レベルの高いお店が街中に数多くあり、地元の人々が普段使いで楽しんでいます。こうした生活の質の高さを一緒になって体験すること。それが本来の観光のあるべき姿だと思います。そのためには駆け足でなく、ある程度の日数を滞在することが必要となってきます。

古都が発信する美味に世界が注目。まき火で美食の新世界へと導く「ima」。 Kunihiro Fukumori

京都の街の魅力は、適度にコンパクトな都市サイズ故に、自然を身近に感じることができる点にもあります。たとえば京都周辺を巡る京都一周トレイル。なかでも、九条山から大文字の火床のある辺りまで歩く東山コースは爽快そのものです。京都の観光は洛中周辺に集中しがちですが、東山山麓は街中とは空気感も異なり、独特の雰囲気があります。

新スタイルの食養生を提案する「田淵薬膳研究所」。 Katsuo Takashima

このように自然に入り込み、その中で身体性のある楽しみを味わうことが、世界的な観光のトレンドになっています。都市でいえば、中心部から手軽にこうした楽しみにアクセスできるポートランドやメルボルンなどが観光都市として注目を集めています。その意味では京都は自然環境的にも優れた都市です。

革新的な料理に感嘆、ザ・リッツ・カールトン京都「シェフズ・テーブル by Katsuhito Inoue」。 Hearst Owned

街中で京都の人々の生活を体験すること。あるいは自然に触れること。実はどちらも身体で楽しむ時間です。京都はこうした身体性の楽しみのある街、ということを行政も旅行会社も打ち出して、神社仏閣や名所を駆け足で回る旅からそちらへシフトし、それに応じた観光産業を育てていくことが大切なのだと思います。

地域の風土や文化を大切にするホテル

今春、祇園にラグジュアリーホテルが立て続けに開業。近辺に新たな賑わいを生み出しています。「帝国ホテル 京都」。 Hearst Owned

コンサルタンティング会社の経営に携わるなかで、グローバル展開するハイエンドホテルで過ごす機会が何度もありました。こうしたホテルはどれも、その土地の環境や文化を尊重し、数十年といった長期的な視野でのホテルの成り立ちを考えています。また、ウオーキングツアーやその地域の風土に触れる、まさに身体性を重視したアクティビティを実施し、宿泊客が土地に溶け込むサポートをしています。京都にもラグジュアリーホテルが誕生しています。これらのホテルが、京都ツーリズムに正しい方向性を示してくれることを願います。

「カペラ京都」。 Kunihiro Fukumori

初出:リシェスNo.55 2026年3月27日発売

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