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武道館を控えた『元トップアイドル(25歳)』数々の初挑戦で証明された“異色の才能”の底力とは

  • 2026.8.8
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映画「ザ・ファブル」初日舞台挨拶 平手友梨奈(C)SANKEI

平手友梨奈が、6月3日にソロ初アルバム『無表情な表情』をリリースした。8月20日には日本武道館での単独公演『アナタタチノカルテ』も控えており、ソロアーティストとしての歩みは大きな節目を迎えようとしている。さらに新曲「Kill or Kiss」はTVアニメ『マリッジトキシン』のオープニング主題歌に起用され、MVではアクションにも挑戦。音楽、映像、身体表現がひとつながりになった現在の平手を示す作品が、ここにそろったと言えるだろう。

本作には、クラウドナイン移籍後に発表された楽曲に加え、初音源化曲や新曲を含む全10曲が収録される。「bleeding love」「ALL I WANT」「イニミニマイニモ」「I’m human」「失敗しないメンヘラの育て方」「Kill or Kiss」など、並んだタイトルからも、平手のソロ表現がひとつの色に収まらないことが伝わってくる。傷つきやすさ、挑発的なムード、孤独、ユーモア、危うさ。そこには、彼女がこれまで大切にしてきた物語性がありながら、より個人の感覚に近い言葉やサウンドへと更新されている印象がある。

平手友梨奈のソロ活動で興味深いのは、楽曲が音源だけで完結しないところだ。彼女の表現は、歌声、ダンス、表情、衣装、映像、カメラとの距離感まで含めて立ち上がる。音源として聴いた時と、MVやライブで見た時とでは、同じ楽曲でも受け取る印象が大きく変わる。歌詞の意味をそのまま届けるのではなく、身体を通すことで別の感情をまとわせていく。その総合的な見せ方こそ、平手のソロ表現の大きな特徴だろう。

「Kill or Kiss」で広がる、平手友梨奈の身体表現

その現在地を強く示しているのが、新曲「Kill or Kiss」だ。同曲はTVアニメ『マリッジトキシン』のオープニング主題歌として制作されたナンバーであり、甘さと毒、恋と危うさが混ざり合う作品世界と平手の表現が自然に重なっている。タイトルにある「Kill」と「Kiss」は、相反する言葉でありながら、平手の表現においてはどちらも近い温度を持つ。愛しさと攻撃性、優しさと緊張感。その両方を同時に見せられるところに、彼女の強みがある。

「Kill or Kiss」のMVでは、平手がアクションにも挑戦している。相手と向き合う時の鋭い目線や、緊張感のある身のこなしは、楽曲の持つ危うさをより強く伝えている。激しく動く場面もあるが、見どころはアクションそのものの派手さだけではない。相手に立ち向かう表情や、一瞬の間の取り方から、追い詰められながらも前に進もうとする感情が見えてくる。ダンスやアクションを通して、楽曲の世界観を身体で見せているところに、平手らしい表現の強さがある。

アルバム全体で見ても、『無表情な表情』は平手のソロ活動を一度整理する作品になっている。これまで発表してきた楽曲をまとめるだけでなく、新たな楽曲も加えることで、過去の延長線上に現在地を置き直している。俳優としての活動、音楽活動、映像作品への出演、ライブパフォーマンス。それぞれ別々に見える動きが、このアルバムを通してひとつの表現へと結びついていく。平手は、歌手、俳優、ダンサー、パフォーマーといった肩書きのどれかひとつで語るよりも、作品ごとに姿を変えながら感情を表現する存在として立っている。

初アルバムから武道館へ、広がっていく平手友梨奈の表現

また、初アルバムという形にも大きな意味がある。シングルや配信曲では、その時々の平手の表情を切り取ることができる。一方でアルバムは、複数の楽曲を通してひとりの表現者の輪郭を見せるものだ。『無表情な表情』には、平手がソロとして何を見せたいのか、どんな感情を扱おうとしているのかが、より立体的に並んでいる。激しさだけではなく、静けさもある。強さだけではなく、弱さもある。きれいに整理された感情ではなく、矛盾したままの感情をそのまま作品にしているところに、今の平手らしさがある。

そして、その先には武道館ライブ『アナタタチノカルテ』が待っている。武道館は、多くのアーティストにとって特別な意味を持つ場所だ。グループ時代から平手を見てきたファンもいれば、ソロ以降の楽曲や映像表現から彼女に惹かれた人もいるだろう。その観客の前で、平手がどのようなステージを見せるのかは、ソロ表現者としての現在地を示す重要な機会になる。彼女の場合、ライブは楽曲の再現ではなく、楽曲をもう一度別の形で立ち上げる場になる。音源では抑えられていた感情が、ステージ上で一気に噴き出すこともある。逆に、激しい楽曲の中に静かな孤独が浮かび上がることもある。アルバムで提示された世界が、武道館でどのように変化するのかは大きな見どころだ。

平手の表現には、常に“見えない感情を見せる”力がある。怒り、悲しみ、諦め、祈り、愛しさ。そうした感情を、彼女ははっきりと説明するのではなく、歌声や身体、表情の隙間から立ち上げていく。だからこそ、見る側はその表現に引き込まれる。答えを渡されるのではなく、自分の中で感情を読み取っていく余白があるのだ。

初アルバム『無表情な表情』は、平手友梨奈がソロ表現者としてどこまで表現の幅を広げてきたのかを示す作品になる。アニメ主題歌「Kill or Kiss」で見せたポップさと危うさ、MVでのアクション、そして武道館ライブへと続く流れは、彼女の活動が音楽だけにとどまらず、映像や身体表現と結びつきながら広がっていることを物語っている。無表情の奥に、いくつもの表情を宿す。平手はその矛盾を抱えたまま、自分だけの表現をさらに更新しようとしている。


※記事は執筆時点の情報です。

ライター:川崎龍也
大学卒業後にフリーランスとして独立。現在はアイドル雑誌を中心に、取材・インタビュー/コラム執筆を主軸に活動している。主な執筆媒体は『BOMB』『MARQUEE』『EX大衆』『音楽ナタリー』『RealSound』など。
X(旧Twitter):@ryuya_s04

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