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「家事をしている時、人はみな無表情」日常で感じる、世間のイメージとのズレを漫画に【著者インタビュー】

  • 2026.4.27
 『いってらっしゃいのその後で 転がり続ける毎日編』より
『いってらっしゃいのその後で 転がり続ける毎日編』より

【漫画】本編を読む

「家族が好き。でも私を忘れずにいたい」

子どもを持ち、日々に追われるなかで、ふとそんな気持ちを抱いたことはないだろうか? 漫画家・ツルリンゴスターさんによるエッセイ漫画『いってらっしゃいのその後で』(KADOKAWA)の帯に添えられたこの言葉は、多くの共感を集めている。夫と3人の子どもたちとの暮らしを描きながら、“個”としての自分と向き合う姿や、子どもたちをそれぞれひとりの人間として尊重し、5人でよりよく生きていこうとする日々が丁寧に描かれている。

本作と続編である『いってらっしゃいのその後で 転がり続ける毎日編』(同)について、ツルリンゴスターさんにインタビュー。流れていく日々のなかで大切にしていることや、迷いながら向き合ってきた思いについて話を聞いた。

――本作はこの漫画を読むまでうっすら忘れていた日常の一コマが描かれているのが素敵だなと感じました。どんな時に「これを漫画に描こう」と思いますか?

ツルリンゴスターさん(以下、ツルリンゴスター):私の日常って私だけの特有のものではなくって、読者の方も同じような日々を過ごしていると思うんですよね。そのなかで、我が家独特のやり取りや、「世間の“家族”のイメージはこうだけど、実際はこんな感じだよね」というのが出てきたときに、書き留めたいなと思って漫画にしています。

――料理を作る気が起きないときに、無になってオムライスを作るエピソード『いってらっしゃいのその後で 転がり続ける毎日編』の「オムライス」が印象的でした。

ツルリンゴスター:料理をしているときって“穏やかな笑顔”なイメージがあると思うんです。でも私はこの時、ものすごく無表情で家事をしていて。「そういえば家事をしているときって人間いつも無表情だよな」と思って、それを書いてみようと思いました。

「オムライス」を描いていて思い出したのですが、昔の芸術作品で女性が書かれるときって、微笑んでいることが多いんですよね。針仕事をしている女性とか、フェルメールの『牛乳を注ぐ女』とか。でもそういう作業をしているときの女性って、実際は笑っていないんじゃないかと思うんです。そのように「お母さんはこう」とか「子どもってこういうもの」とか世間的なイメージが私の中にあって、それと違うことが起きると漫画に描きたくなります。描くと共感の声を結構いただけますね。

――ツルリンゴスターさんは創作漫画も描かれていますが、また違う難しさがありますか?

ツルリンゴスター:エッセイは実際起きたことを描いて伝えるというエネルギーがすごく大きいです。その代わり、本当に起きていることだから私以外の人も出てくる、その人たちのプライバシーとか肖像権を考えないといけない。子どももひとりの人間だし、夫もそうですよね。そこを私が勝手に描いて世間に発表することについての難しさがあります。

その点創作漫画はこちらで登場人物を設定できるので自由度がぐっとあがりますが、その分設定自体の難しさがあります。例えば主人公が女性の成長物語で、成長のきっかけとなる人が男性だったとすると、「女性は男性がいないと成長できないのか」と受け取られてしまう可能性もあります。逆に主人公を男性にしてきっかけをくれた人を女性にすると、「女性は男性の成長の餌にされてしまうのか」と捉えられることもあり得ます。もちろんすべての作品がそうとは限りませんが、キャラクターが持っている社会的格差を対等にした上で、その人自体の魅力を伝えるために描き込まないといけないので、それぞれ違った難しさがあるなとすごく感じています。

取材・文=原智香

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