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「会社を辞めたら孤独死しかない」。60代独身男性が絶望する「たった一人の老後」

  • 2026.4.23
年間約7万7000件ある「孤独死」のうち、死後8日以上経ってから発見されるのは70代男性が突出して多いという。今は元気に働いていても、家族や知人との付き合いがない60代独身男性たちの心は「たった一人で死ぬ不安」に苛まれている。※サムネイル画像:PIXTA
年間約7万7000件ある「孤独死」のうち、死後8日以上経ってから発見されるのは70代男性が突出して多いという。今は元気に働いていても、家族や知人との付き合いがない60代独身男性たちの心は「たった一人で死ぬ不安」に苛まれている。※サムネイル画像:PIXTA

警察庁の発表によると、全国の警察が2025年の1年間に取り扱った遺体は20万4562体。そのうち、一人暮らしの自宅で亡くなった「孤独死」は7万6941体だった。さらにそのうちの3割以上は死後8日以上を経過して発見されたという。

また、内閣府の資料によるとその内訳は、75~79歳が4329人、70~74歳が4047人と70代が突出しており、男女別では男性が1万7620人と、女性4598人の3.8倍にもなる。

80代を超えると、やはり心配した家族などがヘルパーさんなど公的支援につなげるのだろうが、70代だとまだ一人で暮らしていけると本人も周囲も安心しているのかもしれない。

定年後も働き続ける理由

「つい先月、定年になったんですが、継続して仕事をしていくことにしました」

そう言うのはユウタさん(60歳)だ。30代で1度結婚したが5年もたたずに離婚、子どもはいなかった。それ以来、ずっと独身だ。55歳のとき父が亡くなり、その後は自宅と実家を行き来しながら母の介護も担ってきた。その母も昨年夏に亡くなった。

「一人っ子ですし、両親ともに親戚もあまりいなくて。ふと気づいたら、血のつながった人は誰もいないなという感じ。そんな状態でこのまま定年退職してしまったら、おそらく誰とも話さない日々が続く。それが怖くて仕事を継続することにしたんです」

仕事内容は今までと変わりなく、週5日、めいっぱいの勤務である。収入は6割近くまで減ったが、それでも一人で家にいるよりマシだと思っている。

「同期数人も、家にいるよりは働いている方がいいと残っていますね。僕ら、若い人に負けないくらい働いていますよ。若い社員との関係性も悪くないと思っている。社長があまり年齢にこだわらない人なので精神的には楽です」

会社を辞めたらどうすればいいのか

そんな同期数人とはときおり飲みに行く。だが、いずれも妻帯者で、中にはかなり年下と再婚して付き合いの悪くなった人もいるとユウタさんは笑った。

「一人住まいは僕だけですね。連絡なく会社に来なかったら、すぐに見に行くからと言ってもらっていますが、これが本当に退職してしまってからではそうはいかない。そうしたらどうすればいいんだろうと、時々ものすごく不安に襲われます」

退職したら何かを習いに行けばいいのか、地域活動に加わればいいのか。いろいろ考えてはみても、新しい人間関係には面倒だなと思う気持ちが否めない。新しいことにチャレンジする意欲がなくなるのは老いた証拠だと分かってはいるが、「今まで通り」に固執しがちなのだという。

「一人で死んでいくのは寂しい。その瞬間、自分が何を思うのかと考えると、時々いても立ってもいられなくなる」

ユウタさんはしみじみした口調でそう言った。

同世代の急死にショックを受けて

もともと個人事業主だったヒロタカさんには定年退職がない。68歳になった今も、自分ではまだまだ現役のつもりだが、仕事はどんどん少なくなっている。

30代で結婚したが、50歳のときに妻を病気で亡くした。一人息子を育てるためだけに懸命に働き、大学まで卒業させた。その息子は今、海外で仕事をし、家庭をもっている。年に数回連絡はあるが、もう何年も会っていない。だが、ヒロタカさんはそれでいいと思っていた。

ただ、コロナ禍以降、人と会う機会はめっきり減った。このままではいけないと思い、彼は週3回、近所の工場へアルバイトに出るようになった。

「工場ですからね、あまり人とは話さない。それでもずっと行っていると顔見知りもできるし、話が合う人もできた。その彼も60代、ずっと独身なんだそうです。互いに先が不安だよねとよく話していました。ところが彼がある日、急に工場に来なくなった。責任者に聞いたら、急病で亡くなった、発見されるまで数日かかったというんですよね」

それを聞いてヒロタカさんの不安は倍増したという。つい先日まで一緒に働いていたのに、ふっと笑った彼の顔がどこか寂しそうだったのも頭にこびりついている。

生き方を間違えたのか

「僕もいつそうなるか分からない。今は元気だって明日は分からない。もうそういう年齢なんだとしみじみ思いました。だからといって一人で生活している限り、孤独死は避けられないし、高齢者施設に入るような資産もない。なんだかね、どうやって生きていけばいいか分からないんですよ」

誰かとつながりたいと本気で思っているのか、親しい友達を求めているのか。自分が何を求めて、今後を生きていきたいのかが見えていないとヒロタカさんはつぶやいた。

「若いときは一人が自由でいいなと思っていたけど、この年齢になると孤独のドツボです。だからといって闇雲に誰かと親しくなれるわけでもない。生き方を間違えたかなと思いますが、それも今さらですからね」

かなり古いとはいえ、小さなマンションだけは保有しているので住む場所はある。だからこそ、ここにこもって死んでいくのが目に見えていると彼は言った。

「いずれ誰でも死ぬんだからと腹をくくれるかどうか。そこが一番大事なのかもしれませんね」

週に1度、彼は近所の居酒屋へ足を運ぶ。特に親しくしている人はいないが、顔を合わせてその場で話す人たちはいるという。その程度の付き合いでもいいのかもしれない、僕が生きていることだけは分かってもらっているのだからと、彼は寂しげに言った。

<参考>
・「令和7年中における警察の死体取扱状況について」(警察庁)
・「令和7年中における死体取扱状況(警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者)について」(警察庁)
・「孤立死者数の推計」(内閣府)

文:亀山 早苗(フリーライター)

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