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「一歩踏み外せば谷底」現役郵便局員が描く、山深い集落での“実話”怪談が「深すぎる」と話題【作者に聞く】

  • 2026.4.20
その先に民家があれば郵便局員はどこまでも行く 送達ねこ(@jinjanosandou)
その先に民家があれば郵便局員はどこまでも行く 送達ねこ(@jinjanosandou)

「今日はいいお話を読んだ」「15分くらいの深夜ドラマで観てみたい」――。そんな感想が寄せられ、多くの人の心を揺さぶっている作品がある。現役の郵便局員であり、漫画家としても活動する送達ねこさん(@jinjanosandou)が描く「山に棲む」だ。郵便配達員が実際に体験した実話を元にしたこのエピソードには、「平凡な生き方の中にも等しく“生きる重み”がある」という、深く温かいメッセージが込められている。

山に棲む_P02 送達ねこ(@jinjanosandou)
山に棲む_P02 送達ねこ(@jinjanosandou)
「杖」は足腰のために持って行くのではなかった! 送達ねこ(@jinjanosandou)
「杖」は足腰のために持って行くのではなかった! 送達ねこ(@jinjanosandou)
山に棲む_P04 送達ねこ(@jinjanosandou)
山に棲む_P04 送達ねこ(@jinjanosandou)

一歩踏み外せば谷底。過酷な山道での郵便配達

「一歩踏み外せば谷底」という険しい山道であっても、そこに民家がある限り郵便を届けなければならない。本作は、都会育ちの新米配達員・アラタさんが、ベテランの教育係・江藤さんに連れられて向かった、ある山深い集落での体験談だ。

バイクすら進入禁止の山道。「こっからは歩きだ。上まで杖をついていく」という江藤さんの指示に、若さゆえに杖を断ろうとしたアラタさんだったが、江藤さんは「足腰じゃねえ、蛇を追っ払うんだよ!東京もんは何も知らねえ」と一喝する。そんな道中、アラタさんは着物姿でおかっぱ頭の女の子を目撃する。しかし、直後に江藤さんの身に緊急事態が発生し、事態は思わぬ方向へと動き出す。

「怖い」の正体は理解の欠如。怪談に込められた愛の形

主人公のアラタさんは穏やかな青年だが、物語の序盤、教育係の江藤さんは彼に対してどこか刺々しい態度を見せる。この対人関係の機微について、著者の送達ねこさんは独自の視点を持っている。

送達ねこさんによれば、人が抱く「怖い」という感情の正体は、対象が「わかることができない」ことへの防衛本能だという。幽霊のような超常的な存在に限らず、対人関係においても「よくわからない人だから怖い」と感じ、護身のために攻撃したり避けたりしてしまうことがある。しかし、送達ねこさんは「未知に出合うことは、その人にとって足りない必要なものを補う機会」だと語る。

「怖いと思った相手を理解しようとすることで、劇的に仲良くなったり、最高の相方になったりすることもあります。相手を理解しようとする行為は愛の本質に近い。だから『怖い話』は、案外『愛の物語』になり得るのです」と、作品に込めた哲学を明かしてくれた。

昭和の怪談と「絵の力」が織りなす唯一無二の世界観

物語には、送達ねこさんが祖父や父から受け継いできた「昭和の田舎の怪談」の要素も盛り込まれている。読者からは、内容の深さはもちろんのこと、キャラクター造形への反響も大きい。特に教育係の江藤さんのビジュアルについては「絵が強すぎて話が入ってこない(笑)」という愛あるツッコミが寄せられるほどだ。

現在連載中の「郵便屋が集めた奇談」は、送達ねこさんのもとに寄せられた同僚たちの実体験をベースにしている。一見すると恐ろしい体験の中に、人としての温かみや人生の機微を閉じ込めた本作。読み終わったあと、きっとあなたも「いい話を読んだ」と、静かな感動に包まれるはずだ。

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